第9話 目標への最初の一歩

新作「超人気俳優が女子高校生を好きになるのはダメなことですか?」始めました!

こちらの方もぜひよろしくお願いします。


祝4000PV達成することが出来ました!

読んでくださりありがとうございます。


この物語で少しでも、『障害』というものの見方が変わり、命を尊く思う人が増えることをささやかながら、願わせていただきます。



今回の話は前回の予告でも言ったように、少しつらい内容になりますのでご注意ください。



では、本編をどうぞ!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


水希の両親と挨拶(?)も終わり、再び病室は俺と水希の2人だけになった。


「………なんか台風のような人だったな。」


俺は和樹さんを思い浮かべながら、水希に言う。

水希の方も苦笑しながら、

「そうですね。普段の父はもう少し、冷静であんな感じじゃないんですけどね……。

多分、龍星くんが目を覚ましたことが本当に嬉しかったんだと思いますよ。」



その言葉に俺も少し照れながら、

「それならよかったのかな。」


そんな会話をしていると、、、


病室に、医者と看護師が入ってくる。


「お話の途中ごめんね、少し今から説明したいことがあるんだけど、いいかな?」


水希と俺は黙って頷く。


水希がこちらの顔を伺い、

「私も同席してもよろしいですか?」


と医者に言う。

医者の男性も、もちろん、と言い、とりあえず2人で説明を受けることにした。


「………それで、説明したいことっていうのは君の身体の状態のこととこれからのことについてなんだ。」


そう、医者が言うと、隣にいた看護師の女性が複数枚のレントゲン写真や簡単なレポート形式の書面を机に並べる。


「では、説明を始めさせてもらうよ。

まず、事故で負った外傷についてだが、率直に言えば、よく生きていたと驚くほど、君の身体は重症だった。

まず、右腕、右足だが、病院に搬送された時にはすでに、腐食が進んでおり、切断するしか方法がなかった…………。」


俺はその言葉を聞き、思わず息を呑む。


「………でも、そのおかげで俺は今生きています。だから、別に後悔はありません。」


そう言い切ると、医者は驚いた表情をしつつも頷きながら、話を続ける。


「そう言えるのは本当にすごいことだ。

だが正直、ここまではまだマシなくらいなんだ…………、話を続けるよ。

さっき言ったが、右腕、右足は切断するしか方法がなかった、だが、君の外傷はもっと酷いものだった。



脊椎の中でも下半身を司る神経が集まる部分が粉々になっていたんだよ。

つまり、君はこれから先歩けない可能性がある。」


それを聞き、俺は言葉を失いながらも

「…………俺は……これから先……歩け……ないのか。」


そんな俺に医者は首を横に振る。



「…………普通ならだが。

本来、脊椎が粉々になった瞬間から人間は足を動かすことすら出来ない。いや、正確に言えば動かそうとすらできないんだよ。

だが、あの事故の時、君は、意識を失った水希さんを抱えながら、救助に来た者たちの近くまで、歩いたと聞いた。

それを聞いて、正直、私たちは耳を疑ったよ。」



俺は彼の言っていることが分からず呆然としていると…………


「ここからが、私からの提案だが、龍星くん、まだ試験段階なんだが、日本で新しく作られた、義足を使ってリハビリをしてみないか?」


俺と水希はお互いに顔を見合わせながら、


「………それを使えば、俺はまた歩けるようになるんですか?」


その言葉に医者の顔は暗くなる。


「まだ、試験段階の上に君の症状は、正直言えば最悪の1歩手前で踏みとどまったようなものだ。

はっきり言えば、歩けるようになる可能性は限りなく低いと思う………」


医者からしても、ここまではっきりと言うつもりはなかった。

だが、彼の希望にすがみつくような表情を見て、リハビリを開始し、自分が歩けないことを知った時の絶望を味合わせなくないと感じたのだ。



「……そうですか。

でも、限りなくゼロかもしれないけど、可能性はあるんですよね?」


だが、龍星の瞳には光が灯ったままだった。


医者は

(もしかしたら……危ういかもしれないが)

と思いつつも、龍星の気持ちに応えるべく

「わかった。こちらで手配はしておくよ。


それに伴って今日から軽くリハビリをしていこうと思うんだが、できるかい?」


龍星は力強く頷く。



ーーーーーーーーー


医者と看護師が病室から出て、しばらくすると、理学療法士の女性が入ってくる。


「はじめまして、今回から九条くんのリハビリを担当します、香川です。

よろしくお願いします。」


丁寧なお辞儀をしつつ、俺たちに挨拶をする。


俺と水希も慌てて頭を下げる。



その様子を見て、朗らかな笑みを浮かべ

香川さんは言う。


「では、早速ですが、軽いリハビリを始めますね。まず、これを使います。」


そう言って取り出したのは、子供がお箸の練習をする時に使う輪っかが付けられたお箸だった。


「………えっとこれは?」


俺が戸惑っていると、、、


「まだ、目を覚ましてからそれほど時間は経っていませんので、身体を動かすリハビリは後日します。

最初は、九条くん自身の身体の感覚を取り戻すためのリハビリをしていきます。


そのためには、手の感覚をできるだけ戻すことがそれの近道になりますので、このお箸を使って、こちらの大きさ大小違うものを掴む練習をします。」


そう言って、大きいものは1口サイズのブロックを、小さいものは豆よりも小さいビーズまで多様の物を机に並べる。


俺はさっそく

「わかりました。やります!」

と言って、

お箸を左手で持ち、大きいものを掴もうと手を動かした………


それから1時間が経ち…………










だが、結果は何一つ持ち上げることはできなかった。




指を動かそうとしても細かな痙攣が止まらず上手く箸を動かすことすら出来ない。



横で見守っている水希もそれを見て、唇を震わす。



最後の方は香川さんも


「今日はこのくらいにしておきましょうか。焦らずゆっくりと頑張っていけば、必ずできるようになります。」


と俺を労ってくれた。


水希の方は、何度も何度も失敗する俺の姿から1度も目を背けず、ただひたすら静かに見守っていた。



「明日も、この時間にまた来ますね。」


と言うと香川さんは病室を後にした。



2人だけになった病室は、昨日よりも静寂に支配されていた………



そんな中水希は静かに口を開ける


「龍星くん、お疲れ様です。」



最大限の優しさがこの言葉ひとつに含まれていた。


また、出口も見えない暗闇に覆われそうになっていた俺を、まるで太陽のように道を照らすその言葉に救われる。


「…………ありがとな。

やっぱり簡単にはいかないよな。」


それを聞き、水希は肯定も否定もしない。


「龍星くんは歩く道が今の私が歩きたい道なんです。だから、あなたがどこを目指し、たとえ絶望の淵に立たされるのであっても、私はずっと傍にいますよ。」



それは、比喩などではない。

文字通り、どこまでも着いていくと彼女は宣言しているのだ。



「………そうだよな。水希は俺の傍にいてくれるのなら、俺はお前と幸せなれると思ってんだ。」


「はい、私と龍星くんで幸せになりましょう!」


そこには先程までなかった自信を含んだ2つの笑顔があった。


「私にできることなら、なんでも言ってください。精一杯のサポートをするので。」



「助かるよ。頼らせてもらうな。」


そう言うと、水希は満面の笑みで頷く。



ふと、気になったことがあったので水希に聞いてみた。


「そういえば、水希って今大学生か?」


「……へぇ?!」


水希は急な俺の質問に素っ頓狂な声をあげる。


「どうして、急にそんな質問を?」


どうにか、表情を持ち直して、俺に言う。


「あぁ、だって、事故の時、有名な高校の制服を着てたから……。あれから3年だろ?もう大学生になったのかと……」



「……そういう事ですか。

そういうことなら私、今絶賛高校生ですよ。」


そのカミングアウトに俺は、驚きを隠せずにいた。


「………え?、どういうことだ?」


「えっと、実はですね…………」


水希言わく、


あの後、俺のお見舞いに毎日朝から夜まで通っていたら、気づいた時には出席日数が足りず、留年になりそうになった。

その際、水希が父の和樹に俺のそばに少しでも長く居たいとお願いすると、和樹さんと深雪さんは、そのお願いに快く頷き、通信制でもレポートを提出すれば、学校に行かなくても卒業できる所に転入して、、、

今に至るそうだ……



「というか……水希って俺の2つも年下だったのか…………」


そう、俺は今年20歳で水希は18歳になる年だったのだ。


そんな俺を申し訳なさそうな目でこちらを見ている水希が

「隠していて、ごめんなさい。

昨日のあの場で言えばさらに、龍星くんが無理をするような気がして……」




「別にいいよ。怒っているわけじゃないし。でもそういうことなら、水希は今年受験の年じゃないのか?」


「それについてなんですが、昨日、両親と話しまして、龍星くんさえ良ければ、同じタイミングで受験しようと思いまして……」


「俺と同じタイミングって……

そもそも、大学に入るかどうかも……」


「……はい。龍星くんが大学に行かないなら私も別に行く気はありません。最も元々大学に行って勉強したいことなどありませんでしたので、あまり問題はありませんが。」



「……わかった。もし、俺が受験することにしたら、一緒に頑張ろうか。」



「はい!龍星くんのお役に立てるよう私も精一杯頑張りますね!」



こうして、龍星の復帰に向けて徐々に動き出すのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いかがでしたか?


思ったよりも苦しい展開を抑えて書くことができた気がします。


なんと、水希は18歳でここまでの覚悟を持ちながら龍星の隣にいたとは……


続きが気になる!面白い!と思ってくださった方は、応援、フォロー、☆☆☆などなどよろしくお願いします!


感想などもぜひコメントしてくださいね!


では次回で、ようやく龍星が退院します。


お楽しみに!!

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