第3話私が助けられて彼が目を覚ますまで(1)

新作「超人気俳優が女子高校生を好きになるのはダメなことですか?」始めました!

こちらの方もよろしくお願いします


今回の話からは水希視点です。

では、本編をどうぞ!

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(水希視点)


私はあの日、人で溢れかえるホームで電車を待っていました。


電車が通過するというアナウンスが聞こえた直後のことです。


後ろの人に押されるようにして、気づけば私の足はホームになく、線路に放り出されるように落ちていました。




横を見れば、すぐそこまで電車が来ているこ

とに気がついた私はすぐに緊急避難場所があ

るホーム下の溝に入ろうとしましたが、

線路に落ちた衝撃と電車が迫り来る恐怖で上手く身体が動かせませんでした。



あぁ、私は死ぬんだ。と漠然とした恐怖が襲いかかりました。

走馬灯のように、家族や友人の顔が思い浮かんだくらいです。


助からないと思い、せめて恐怖を少しでも和らげるために目をつぶりきたる衝撃に、全身に力を入れて備えをしようとした時、




ふと、自分の身体が浮かんだ感覚がしました。

目を開けると、一人の男性が私の身体を抱き抱えるようにして上げて、溝の方に私を突き飛ばすような形で助けてくれました。


ですが、その時勢いあまり、頭をぶつけた私は意識を失ってしまいました。


薄れゆく意識の中、男性の声で、

「彼女を優先してお願いします!」


という声が聞こえた気がした。



ーーーーーーーーー


病院で目を覚ました私を、事故の後連絡をもらった父と母が迎えてくれました。


私は両親に、

「私を助けてくれた人がいるの!

その人に会って感謝を伝いたい。」

と言うと、

2人はどこか悲しそうな顔で、看護師さんたちに事情を話して、車椅子の私を彼の病室に連れて行ってくれた。



病室の近くに来た時、人が泣いている声が廊下まで聞こえていた。


「……………どうしてなの。

どうして、りゅうせいが……こんな、」


「…………りゅうせい。」


「……………………にぃに。」


3人の声だった。それも心の内を必死に隠すような弱々しい声。


私たちが病室に入った時、父と母は突然

車椅子から手を離すと、


地面に頭をつけて、土下座する形で、

「「この度は申し訳ありません。」」


そう言いました。



それに気づいた彼の家族は、私の姿を見て、

殺気をはらんだ視線をこちらに向ける。


彼の妹が私たちに向かって、

「………………出てけ。ここから今すぐ出ていって!!!」


その声が病室中に響いた。

その声を聞いても、父と母は頭をあげることをしなかった。


すると、彼の母が

「今はお引き取りください。

そちらの謝罪を受け取れるほど、今は心の余裕がありません。」


ゾッとするど冷たくそう言い放った。


父が、また来させていただきます、と言うと私の車椅子を押して、元の部屋に戻った。


病室に戻った私はすぐに父と母に

「…………どういうこと。」


と疑問をぶつけた。


「「ーーー。」」


すると、それまで口を開けなかった父が重たい唇を動かすように、


「水希を助けてくれたのは、九条龍星という男の子で、大学入試に向かう途中だったそうだ。そこで居た彼が水希を助けてくれたんだ…………。」


続きを話そうとした父だったが、その口は止まった。



それとタイミングを同じくするように病室の扉が開けられ、先程彼の病室にいた医者が入ってきた。


「続きは私から言わせていただきます。」


医者の方がそう言うと、父と母は黙って頷く。

「君を助けたりゅうせいくんだけどね、正直生きているだけで奇跡みたいな状況なんだ。」



私はその言葉にただただ黙ることしか出来なかった。


医者は話を続ける。


「結果から言うと、右腕、右足の骨は修復不可能なほどぐちゃぐちゃで、脊髄へのダメージが酷く、今後目を覚ましたとしても歩くことは出来ない可能性が高いだろう。それ以前にさっきも言ったけど、普通なら即死するほどの傷を負っているんだ。今心臓が動いていることすら奇跡に近い。そのため、彼が目を覚ますかどうかは…………私たちにもわからない。」



まるで、自分の無力さを悔いるように医者は話していた。


「………………そんな。

私のせいで………………。」


私はこの時、事の重大さに気がついた。

父と母が深く、深く頭を下げた理由が。

彼の家族が私にあんな視線を向けた理由が。




話を聞いた私はこの時、自分の一生をかけて私を救ってくれた彼を支えていくと決意した。



次の日から私は彼の病室に通うことにした。



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