第4話 そして転生

『種族選びはコレで完了。後は...ああ、アレがあったか。それが終わったら...。』






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(はあ、少し疲れたな...)


 俺は一人休んでいた。何故今こうしているかというと全員が種族を選び終えたら神様から『疲れただろうから一旦小休憩に入って、その間にお互い自己紹介でもして雑談しててね。僕はちょっとこの後の話を整理してくるから。』と言われたので、それぞれ自由に過ごしている最中だからだ。


(誰かに話に行った方が良いかな?でも他に気になる人は居ないし、面倒臭いしなぁ。個人的に【龍化】の少年が気になるけど、結構集まってるし。もうちっと減らないと無理だな...。)


 最初は【龍化】を選んだ少年に色々と話をしに行こうとしたが、かなりの人数に囲まれてたのでやむ無く断念した。そんなわけで一人黄昏ていたら、ふと思い出した事があった。


(そういや、俺の固有スキルの詳細をまだ見てなかったな。今の内に確認しとくか...。)


 俺はずっと頭の中にイメージとして浮かんでいた《表示しますか?< はい いいえ>》の文字を意識して<はい>を押した。そしたら目の前にモニターの様なものがあらわれた。


「おっ、出て来た出て来た。えー、なになに?」


《固有スキル【再生】


 固有スキルである【治癒力強化】、【根性】、【巻き戻し】を統合し、昇華した新たな固有スキル。このスキルは自身の肉体を再生・更新し続ける。》


 思ったよりヤバいのが出て来た。


(何コレ?普通にチートじゃね?デメリットも無さそうだし、来たわコレ!何を更新し続けるのかちょっとよく分からんけども。)


 チートスキルを貰えなかったことで絶望してたけど、そんな事無かったわ。これで危険な異世界生活め生き残る事が出来る!


『はい、ちゅうもーく!そろそろ休憩を終わりにして最後の調整に入るから、全員集まって下さーい!』


 そんな感じで俺はこの時内心浮かれていた。だから気付かなかったのだろう、この固有スキルには最大のデメリットがあったことを。そして後にあんな地獄を体験する羽目になるとは今の俺は知る由もなかったのだった。





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『えー、これから一部の人を除いて赤ちゃんからやり直すか肉体を最盛期に戻して転生するかを決めて、その後どこに転生するかを選んだら転生開始です。その時についでに言語理解のスキルを入れとくから向こうで話すのに支障は無くなると思うよ。いや〜ここまで長かったなぁ、やっと転生まで漕ぎ着けたよ。次はもっと上手く出来るようにしないと…。』


 どうやら転生前の最後の決め事らしい。いよいよ転生まで目前となったからか、浮き足立つ様な雰囲気になってきていた。もちろん俺も楽しみである。


『かくがく希望を言ってね。出来るだけ希望先は叶えるけど限度があるから、そこは後でまとめて応相談だけどね。効率的に回すために三人に増えるけど、気にせず並んでってね。それと最後に一つ忠告しとくけど、もし与えられたチートによって「アレナ」に被害を齎したら僕直直に消しに行くからね。それじゃ、始めようか。』


 神様は柏手を一つとるとそこから宣言通りに三人に増え、皆驚いていたが、やがてそれぞれに別れて並び始めた。


(俺も並ぶか。)


 三つある列のうち真ん中を選んで順番が来るまで待っていようと思ったら、突然後ろから話しかけられた。


「あの...。」


「え?ああ、はい。何か用で.....て、君は【龍化】の人。」


「よく分かりましたね。いや、結構目立っちゃいましたし、そりゃそうか。」


「えっと...。」


 急に話しかけられたからちょっと困惑するんだが、一体なんの用だろう。


「ああ、すみません。ちょっとお聞きしたいことがあって話しかけました。」


「聞きたいこと?」


「はい。さっきあなたが僕の方をチラチラ見てたので、何かな〜と思いまして。」


 一瞬ドキッとしたが、別にやましい事は無いので素直にそのまま答えた。


「そのことですか。確かにあの時はあなたにちょっとした質問をしようとしたんですが、周りに人がいっぱい居たから人が減るタイミングを図っていたんですよ。」



「そうだったんですか。確かにあの人の多さには僕もちょっと困惑しましたね。あ、僕は辻金 龍也つじがね たつやって言います。今は人も居ないですし、質問しますか?」


 唐突だな、てかさっきのを観るに困惑している様子は無かったと思うんだが…


「あー、俺は道影 真斗です。確かに聞きたいことはあるけど、大した事ないもので...。」


「別に大丈夫ですよ。並んで待ってる間の暇潰しになりますし。」


「そうですか?それじゃあ何故【龍化】を選んだんですか?確か、龍になりたいとかなんとか言ってましたけど。」


「ああ、やっぱり【龍化】の事ですか。他の人にも言ったんですが僕は生まれつき病気持ちで、ずっと入院生活だったんですよ。ここにいる時点でお察しだと思いますが、結局そのまま死んじゃいましたけどね。」


「……。」


「それで入院中に暇潰しに小説を読んでいて、その時にたまたまこういう転生もので龍が活躍する物語だったんです。その頃から龍という生き物に憧れまして、もし生まれ変わったら龍になりたい、そうすれば強靭な肉体を持つ事で病気に苦しむことも無くなるはずだと、そう思ったんですよ。」


 軽い気持ちで聞いたけど、結構重たかったわ。


 聞いた瞬間地雷を踏んだと思ったけど本人は気にしてない様だし、それよりも何処かワクワクしている感じがする。


「なるほど、そんな理由が。それは【龍化】を取れておめでとう?と言った方が良いんですかね。」


「あはは…。まあ、僕にとっては嬉しい事だったんでそれで合ってますよ。それじゃあ今度は僕からも質問しても良いでしょうか?」


「俺に?」


 はて?なんか聞かれるようなことあったっけ。


「はい。これは全員に聞いて回ってるのですが、死因についてです。」


 死因…死因かぁ。


「あー、結構恥ずかしい死因だがそれでも聞くか?」


「全然大丈夫です!」


「そうか。それじゃあ……。」


 そんな感じで順番が来るまで雑談に講じていた。





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『次の方どうぞ〜。』


 あれから何分たったか分からないが、どうやら自分の順番が来たようだ。


「っと、来たわ。それじゃそろそろ…。」


「うん、分かった。向こうで会えるのを楽しみにしてるよ。」


「こっちもな。んじゃ、行ってくるわ。」


「行ってらっしゃい。」


「おう。」


 そうお互いに別れを告げ、そのまま神様の所に向かった。


『さて、赤ちゃんからやり直す?それとも最盛期の肉体に戻して転生する?』


「最盛期で頼む。」


『最盛期ね。転生先はなんか希望ある?無かったら適当に決めちゃうけど。』


「ふむ…。」


 俺の固有スキルのことを考えたら人が寄り付かない場所がいいな、色々検証したいし。あとどうせなら綺麗な景色がある所がいいな。


「人が寄り付かない場所で、尚且つ景色が綺麗な場所で。」


『人が寄り付かなくて綺麗な場所ね。………よし設定完了。じゃあ異世界生活頑張ってね〜。』


 その直後目の前が真っ白になって────────





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「ん…。ここは…。」


 目の前が暗い。


 けど何かが這い回っている音が聞こえる。


「何が起きてるんだ…。」


 周りを見てみるとたくさんの山の様な木々が鬱蒼としていて、やたら暗いと思って上を見たら辛うじて上空に月らしきものが見えることからどうやら今は夜みたいだ。


「ここって森?何故こんな場所に…。」


 俺は希望先を人が居なくて景色がいい場所と指定したはずだ。いや、確かによく考えると森は人が居なくて景色も昼ならこの高過ぎる木を見て異世界らしさを感じて感激してただろう。けど、これは…。


 ガサッ


「ヒッ!」


 草陰から物音がして音の方に視線をやると…


 ギチギチ


「…虫?」


 ギチギチ、ギチギチ


「にしてはデカイな…。」


 元いた世界と比べると10倍くらいサイズが違い、およそ1~1.3mくらいある。


 ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ


「もしかしてコレが魔物か?なんでまたこんな初っ端から…。」


 なんてツいてない。


 そう思い、仕方なしに目の前の虫型の魔物?と思しきものを倒そうとしたら───、


 ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ


「…なんか増えてね?」


 ビュッ


「うわっ!なんか腕に着いて…。」


 瞬間


「え…。」


 腕が溶け落ちた。


「いっ、ギャァァァァ!!」


 ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ


「ぐぅ、う。う、腕が、溶けッ、何、これ…。」


 ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ


「あ……ァァァ…あああ……ァ…。」


 ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ、ギチギチ




 俺は、




「う、ウワアアァアァあぁぁぁぁ!!」




 こうして異世界に転生した。

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