お出かけ

庭のように

昨日の出来事で寝付けなかった。気がつくと、うとうとして瞼が閉じていた。そして再び目を覚ました時に驚き光景であった。


同じ部屋にいる碧波が着替えている。これは見なかったことにしよう、一瞬何が起きていたのか分からず寝たフリをしてやり過ごそうとした。


だが思うようにいかないのが現実。お腹が空いたのか鳴ってしまった。これはもう言い逃れ出来ない。


碧波は着替え終わって何も言わずに部屋を出た。目は開けられない、確認できるのは部屋のトビラが音がした時。


その音を確認をして白翔も着替えて部屋を出る。さっきのは夢なのか、現実なのか。


午前9時、碧波と共に朝ごはんを食べているとせっかく来てくれたから遊びに行こう。旭川でもいいし、どこか行きたいところあるかと尋ねられた。


どこに何があるか分からない白翔は何があるか分からないからと行きたいところでいいよと答えた。


白のワンピースを着た碧波は麦わら帽子を被って家を出て近くのバス停から2人で旭山動物園に向かう。


部屋で一緒にいた事はあっても外に出かけるとなるとまた違う緊張感がある。隣の席に座る碧波を直視することが出来ない。


しばらくして近くのバス停に着いて歩いて向かう。入園料を払おうとすると中学生以下は無料と書いてありそのまま入園する。


ふと碧波はこう囁いた。

入園料無料ってビックリしたでしょ?旭川に住む小中学生はここが庭って言うくらいよく来る人が多いの。一緒に回ろう、そう言って手を繋ぐ。


カピバラ、ペンギン、栗鼠りすやウサギを見てかわいいと愛でる碧波。その姿を見て思わず碧波の方がかわいい、大きい声で発してしまう。


顔を赤くした碧波、麦わら帽子を深く被って動物園を出て行った。他にも行きたいところがあるからとバス停から旭川駅に向かう。


白翔からすると行先は告げられてないため、どこに行こうとしているのか全く分からなかった。


遠出

お昼を過ぎていた事もあり、駅ナカにあるコンビニでサンドウィッチとお茶を買って交通系ICカードをかざし、碧波の後を付いていくと札幌・留萌るもい行きと表示されている。


どこに行くのか聞いても全然教えてくれない。そんなに知りたいなら碧波が聞くことに答えてくれたら教えてあげる。


益々意味が分からない。何を聞かれるのか怖くて行先とかどうでもよくなってきた。取り敢えず来た電車に乗り込み車窓を楽しもうと外を眺めている。


ちょんちょん、白翔に1つ聞きたいことがあるんだけどいい?ちゃんと行先は教えてあげるよ、札幌に行こうと思うの。行きたいところ、やりたいことあってさ。


……。そっか、楽しみだね。それより聞きたいことって何?質問によっては答えないよ。それでもいいなら答えるつもりだけど。


「朝だけど、碧波が着替えるところ見たでしょ?怒らないからウソをつかないで正直に答えて。お腹が鳴ったことも知っているし寝てる割には顔が赤くなっていたからさ」


ここまで言われてしまっては言い逃れは出来ない。もうビンタされる覚悟で素直に認める。謝っても許されるとは思っていないが誠心誠意頭を下げる。


だが碧波は怒る様子はない。


そっか、素直に認めてくれてありがとう。きっと目覚めたら着替えてたから寝たフリをしてくれたんだね。


一緒に部屋を出たら気まずいって思ったから少し時間をおいてリビングに来てくれたんでしょ。碧波のことを思ってそうしてくれたんだねと頭を撫でてくれた。


札幌駅に着いて有名な時計台やさっぽろ羊ヶ丘展望台、白い恋人パークで製造ラインや展示を見て帰ろうとしていた。


するとハート型のお菓子作り体験が出来ると書いてある。これも夏休みの思い出になると考えて碧波とともに体験をする。


見ている以上に難しく白翔は悪戦苦闘をしている。横目で碧波の様子を見ると笑顔で楽しんで器用にやっている姿を見て同じモノを作っているのにも関わらずこんなにも出来栄えが違うのかと落胆する。


出来た様子を見てかわいいと喜ぶ碧波、この姿が見られればいびつで落書きのような絵心のない作品でもいいかと感じてしまう。


午後5時、電車に乗って帰ればもう夜になると思って碧波に帰るか聞く。こんなかわいい女の子が夜まで歩いていたら危ないから早めに帰った方がいいよと促す。


ホントに碧波のこと気にかけてくれて嬉しいよ。もう1箇所行きたいところがあるからそこ行ったら帰ろう。それに1人じゃなくて白翔がいるから心配ないよ。


電車やバスを乗り継いで次に向かうのはガラスアクセサリーが体験出来る施設に向かう。


ネックレス、イヤリング、キーホルダー、指輪の中から碧波はネックレス、白翔はキーホルダーを選ぶ。出来上がっていく姿を見てかわいいとテンションを上げている碧波。ホントのデートみたいで楽しい。


早速ネックレスを付けて嬉しそうにする碧波とともに電車で旭川に帰る。外は真っ暗で碧波のお母さんに何時まで遊んでいるのかと怒られても仕方ない。


これはお礼を言わなくてはならないと白翔は思う。


碧波が行こうって誘ってくれたから色々知ることが出来たよ。まるでホントのデートみたいで楽しかったよ。ところで電車代や体験代とかはどうしたの?


貯めていたお金とお小遣いを前借りしてもらったの。碧波も白翔と一緒に旭川や札幌に行けて楽しかったからお礼を言うのはこっちだよ。


家に帰って碧波のお母さんから怒られず杞憂で終わった。貯めたお金を使って出かけたのは嬉しくもあり、申し訳ない気もしていた。

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