同居人

 私は今、これから3年間お世話になるアパートに入居するため、アパートの前に作られた門の前にいる。

 アパートは白い壁がとても綺麗で、清潔感が感じられる。改装されたばかりなのか、新築のような雰囲気もあるが、どことなく懐かしさと温かさが感じられる建物だった。


 寮とアパートに入寮、あるいは入居する期間は決められており、入学式の3日〜7日前とされている。

 理由は単純で、入学式の日と同じ日にしてしまうと大変な混雑が予想されるからである。


 私は余裕を持って入居したかったため、入学式の7日前である今日の午前中に入居することを決め、アパートの前へ来ていた。


 (ふぅ。少し緊張してきた。まずは管理人さんに挨拶をして、部屋がどこか聞いた後、同室の子がまだ来てなければ鍵も貰わないと。)


 私は、緊張しながら歩き出し、管理人室と書かれた場所に向かった。


 コンコンコン。


「すみません。本日からこちらでお世話になる、橘白玖乃です。どなたかいらっしゃいませんか?」


『はいはーい。いますよー!今開けるから少し待ってねー!』


 扉の向こうからそう声を掛けられ、待つこと数分、ドアがゆっくりと開いた。


「お待たせしてごめんね?ここの管理人をしてる、悠木茜ゆうき あかねよ?よろしくね。

 申し訳ないけど、もう一度名前を教えもらえる?」


 管理人を名乗った茜さんは、まだ二十代半ば程に見える、綺麗な人だった。そして、めちゃめちゃ胸がでかかった。

 あれで押しつぶされるようなことがあれば、間違いなく窒息することだろう。


「あ、はい。本日からお世話になる、1年の橘白玖乃です。よろしくお願いします」


「橘白玖乃さんね。今、名簿と部屋の番号を確認するから少し待ってね」


 茜さんはそういうと、もう一度管理人室に入り、名簿を確認しているようだった。




「橘さん、お待たせ。橘さんの部屋は、三階の305号室ね。同じ部屋の子はまだ来ていないから、鍵も渡しておくわ。

 もし外出する場合は、外出届を書いて、管理人室にいる私に鍵と一緒に渡しに来てね?ここまでで何か質問はあるかしら?」


「いえ、大丈夫です」


「それはよかった。それじゃあ、はい。これがお部屋の鍵よ。これからよろしくね、橘さん」


「はい!よろしくお願いします!」


 私は、茜さんから部屋の鍵を受けとくと、階段を上って部屋まで向かった。




(305……305はー、あった。ここだ)

 

 私は、これから自分が使う部屋を見つけたので、鍵を差し込こみ、ドアを開けた。


 ガチャ


(うわぁ。中も綺麗)


部屋の中は、外観と同じで白を基調とした壁で日当たりも良いためか、落ち着いた雰囲気のある部屋だった。


「思っていたよりも結構広いし、これなら二人で暮らしても、割と余裕持って生活できるかも。 あとは物の配置だけど、そっちは午後に買ってきてから決まればいいかな」


私は、この後のことを考えながら、とりあえずお昼でも食べに行こうかと、ドアの方を向いた時--。


コンコンコン


『すみません。同室の方がもう来ていると聞いたんですが、入っても大丈夫ですか?』


--外から、そう呼びかける声が聞こえた。


「あ、はい! 大丈夫です!」


 私がそう答えると、ドアをゆっくりと開きながら中に入ってきたのは--とんでもない美少女だった。

 肩あたりまで伸ばされた綺麗な黒髪。その髪とは反対に白く透き通ったような綺麗な肌。目はとても大きく、鼻は筋が通っており、まだ少女のような雰囲気もありながら、左目の下にある、横に二つ並んだ特徴的な泣きぼくろが、大人のような色気を感じさせる。

 また、身長は私より5センチほど高いようで、大体165センチくらいだろうか。


 そんな、将来は確実に美人になるであろう美少女が、私の同居人のようであった。


「初めまして、鬼灯紫音ほおずき しおんです。よろしくお願いします」


「…え、あ、はい! 橘白玖乃です! よろしくお願いします!」


 いけない。あまりにも美少女だったから見惚れてしまった。

 変に思われてないといいけど。人間、第一印象大事だし!


「ふふ。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。それに、これから一緒に生活するわけだし、紫音でいいですよ?」


「それなら、私のことも白玖乃で大丈夫です。それと、敬語も使わなくていいです」


「…わかった。なら、白玖乃も敬語じゃなくていいよ」


「ありがとう。じゃあ、そうさせてもらうね」


よかった〜。めっちゃいい人そう。優しそうだし話しやすいから、これからの生活が楽しくなりそうだ。


「あ、白玖乃。これからの予定ってなにかある?」


「ちょうど今からお昼食べに行こうと思ってたとこ。その後は、午後からいろいろと買いに行く予定」


「なら、私も一緒にご飯食べに行っていい?」


「いいよ。近くにファミレスがあったはずだから、そこに行こうか」


 こうして私たちは、お昼を食べるために、近くのファミレスへと向かうのであった。






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