第9話-① カ・ルマ

この場所は――その昔、ある者に敗れた者が眠る地だと云う…

その『ある者』とは、古代―――この大陸を統治、善政に導いたという『皇』。

そして『敗れた者』とは、やはり当時をして暴虐の限りを尽くしたといわれ、最期まで皇に抵抗したという……いにしえの暴君、通称『魔皇』―――サウロン=カルマ=アドラレメク


そしてその国号は今あると等しく、人間のありとあらゆる『怒り』『怨み』『畏れ』『慾望』『哀しみ』『嫌悪』『憎しみ』『醜悪』『堕落』……などと云った“負”の感情の集合体である『ごう』を意味する『カ・ルマ』だったのです。


しかも彼をしてたらしめた要因に、サウロンが愛用しつ常にたずさえていた愛剣―――その通称を【覇蝕の剣】と呼ばれていた『魔剣オートクレール』と…もうひとつ、『力の指輪マスター・オブ・ザ・リング』と呼ばれた指輪の存在…。

この指輪の黒い伝承として―――時折魔皇の魔力に呼応するかの如く紅く浮かび上がる文字…


         ――― 一つの指輪は総てを統べ ―――


         ――― 一つの指輪は総てを見つけ ―――


         ――― 一つの指輪は総てを捕らえ ―――


           ―――暗闇の中に繋ぎとめる ―――


そう、この禍々しき負の言霊ことだまつづられた黄金の指輪と、敵を斬る度毎たびごとにその切れ味を増していくとされた魔剣と―――この二つが彼のもとにあっただけで当時のカ・ルマの近隣諸国は畏れをなし、同盟・協力をせざるをえなくなったのです。

しかしそれは生命が永らえているだけであって、その身は限りなく奴隷に近しい存在であり…それはいわゆるところの『生き地獄』そのものであった――――

そこへ、七万年前にこの恐怖の魔皇に抗った一勢力―――それこそが『皇』ジョカリーヌと呼ばれた存在だったのです。



彼らは―――自分達が宿敵であったのを知っていたかのように火花を散らしていきました… 一進一退の攻防が続き、血みどろの戦いは数十年を要したとか。

でも、その永きに渡る死闘にもついには幕が――――

それと言うのも魔皇が居城―――別称を【魔皇城】と呼ばれた『コキュートス城』から天空にのぼる一筋の光…それこそが、争乱の世が終結した証だったのです。


それと同時に、それはサウロンが…魔皇が敗北した証―――ジョカリーヌ配下の将『帝国の双璧』と呼ばれた将の一人の槍に掲げられた黄金の指輪が、そのことを物語っていたのでした。


そしてこれが、現在いまに伝え語られている伝承の要約なのです。

では―――この、昔話に出てくる国の名と、現在ある同名の国『カ・ルマ』――――するとなると、やはりここの国主とは…?


「(ビューネイ=サルガタナス;驚くべきことにこの者は人間ではない。 七万年前にも同じ主に付き従っていた『七魔将』の一人。)

大王―――いかがされたので?」


「(アウナス=ベルゼビュート;この者もビューネイしかり、『七魔将』の一人で人間ではない。)

フフフ…ビューネイよ、今大王閣下は考え事をなさっておられるのだ。」


「考え事―――だと?」


「(ベリアル=オードル;同じく『七魔将』の一人)

ククク…これからいかに積年の怨みを晴らそうか、というなぁ。」


「ほう―――フフフ…成る程。」


「(フォルネウス=ダグザ;『七魔将』の一人)

それにしても憎むべきは、あのジョカリーヌとかいう者とその配下の者共よ。」


「(キュクノス=オズモ;『七魔将』の一人)

確か―――あやつらなんといいおったかな。」


「(ザルエラ=タナトス;『七魔将』の一人)

『帝国の双璧』と、『マエストロ』とか抜かすヤツらよ!」


「(ワグナス=アラケス;『七魔将』の一人)

あの…三人か!」


「その通りよ! しかも彼奴等きやつら、我等と同じ人外の者にしてジョカリーヌに加担しただけでなく、我等でさえ葬り去ろうとしたではないか!」

「おおよ!まさに忌々いまいましき存在そのものだ!」


「(サウロン=カルマ=アドラレメク;この世に復活を遂げた畏るべき『魔皇』)

――――ビューネイよ。」


「はっ。」


「静かにさせろ…考え事がまとまらぬではないか。」

「承知しました。 諸卿よ聞いての通りだ、大王閣下はもう少し静かにされる事をお望みである。」

「むむう…そうだな。」

「フッ―――しかしまあ、今はその片割れであった『マエストロ』の魂をこちらが抑えておる。」

「と、なると…。」

「後はその器――――『肉体』と、いうわけですか。」

「(ククク…)そう言う事だ。」


七万年前に一度滅んだはずの彼ら―――その彼らが今になってどうやって復活しえたのか…それは未だ不明のようですが、畏るべき事にはその顔ぶれは全く変わっておらず、しかも前世にて倒された時の怨恨まで抱いていたというのです。


「それで―――その器の候補は?」

「うむ、実はな奇遇なことに同名なのだよ。」

「同名…?」

「そうだ、しかもその者は以前に『皇の御魂』を所有していたというのだ。」

「…と、言う事は故人か。」

「それで、いつ死んだ?」

(ニヤ…)「14年前―――ここより南方の列強、ラー・ジャで…だ、そうだ。」

「(14年前…)そう言えばザルエラよ、その頃丁度あの辺りで『狩り』をしていたそうだな。」

「うんん?ああ…ククク―――そうか、あそこに『皇の御魂』を持っていたヤツがいたか、余りに些末だったので気付かなかったぞ。」

「ククク…貴公は趣好に走ると見境がなくなるからな。」

「ところで、どういう名のヤツだ。」


            ――――その者の名は…


「ジィルガ=式部=シノーラ。」

「フン!かんさわる名だ。」

「ああー--確か『マエストロ』もそう言う名だったな。」


そう…14年前にあったとされる悲劇を起こした張本人たちは、紛れもなく彼らだったのです。

それは―――その当時に『皇の御魂』を持っていた(で、あろうとされていた)【聖女】の死を目の当たりにし…その【護衛役】は、彼女を護るどころか逆にその身を挺して護られてしまったのです。

そのことで【護衛役】は己の不甲斐なさを恥じ―――当時最年少で就いたばかりの老中職を返上、自らを閉門蟄居…竹林の庵に隠棲する身となったわけなのです。(ここで言う【護衛役】とは、『清廉の騎士』―――タケル=典厩=シノーラであり、【聖女】とは『巫女』――――ジィルガ=式部=シノーラの事である。)


そこで―――彼らはこうも言っていたのです。

七万年前、『皇』ジョカリーヌと結託して自分達を滅した存在の中に、この14年前の悲劇の主と同名の者がいる、と。 そしてその者こそ【大魔導師ロード・マンサー】であり、『マエストロ』という呼称までついていたのです。


では、その者の名は―――?(それはまた後ほどで…)


しかも恐るべきは『マエストロ』の魂をこの暗黒の集団が有してしまっている…と、言う事なのです。

一体、ナニを企んでいるのでしょうか……


       * * * * * * * * * *


「ところで――そんな貴重な情報を一体何者から?」

「(フフ…)知りたいか。」

「なんだ、勿体つけずに全部話せ。」

「ふぅむ―――実はな、その者…なんとマエストロの魂を献上して来た奴と同じなのだよ。」


「(ナニ?!)」 「(なんと!)」


「ではこの私から直々じきじきに紹介してやろう…さぁ、入ってくるがいい――――」


そして―――七魔将の中でも一番発言権を持つ者から入室するように促された者とは…この国の総ての官吏がそうであるように、黒き衣でその身をおおい―――

その顔も表情が見え辛くなるように鼻っ柱から下を黒い布で覆い隠した(つまりは目だけ覗いて見えるという感じ)者だったのです。


「まず、官姓名から名乗れ。」

「(……)シホ=アーキ=ガルテナーハ。」


「ほぉう―――女…か。」 「確かに、殊勝な心がけではあるが―――」 「うむ、得心がいかんな。」

「信じる―――も、信じない―――も、お前達次第…それ以上は、語らない。」

「フン、言うな、女。」 「しかし―――お前があの14年前の事を知っている…と、言う事はラー・ジャの者か。」

「そう…とってもらっても、構わない…。」

「フン―――気に入らぬな…今ここでたたっ斬って――――」

「まぁ待ちたまえ。」

「(フ―――)長生きはできないな…お前。」

「ナ…ニぃ?!この下賤な女めが!」


「止めろ…ザルエラ。」

「し―――しかし、大王…」


「フム、しかしこの猛将達が居並ぶ中で眉一つ動かさんとは…肝だけは据わっているようだな。」


「恐悦に存じ上げまする。 大王におかれては益々のご繁栄のあらんことを―――」


この―――ホ=アーキ=ガルテナーハと名乗る者は、年齢は不詳ではあるものの女性ではあるようです。

が…カ・ルマの国王が言い置いたように、七人もの猛将が居並ぶ中であっても一つも臆せず、逆に言いたい事を言い放つ―――とは、かなりの度胸の持ち主のようです。

しかもその出身はラー・ジャで、全身を黒い服で覆いその素性ですら分からない者とは…それはともかくこのシホなる者、カ・ルマ国王―――サウロンの前では実に従順な姿勢を貫いていたようで、大王賛辞の言葉の後さっさと退出してしまったのです。


問題は、その後で―――


「なんなのだ!あの無礼な態度は!」

「まぁそう怒るな、せっかくの情報提供者なのだ。」

「し―――しかし!」

「どう言う…つもりなんだ、ビューネイ。」

「うん?なぁに…別に大した事ではない―――いつものように必要な情報モノだけを取り入れてさえおけば…なぁ? まあ、役に立たなくなればその場で処分すればいい…」

「なるほどなそういう算段であったか。 いや、貴殿も中々に…よなぁ。」


用済みになればすぐさま処分―――とは、まこともってこの者達のそのドス黒い性分が伺えようというところのようです。


         ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一方その頃―――この彼らの会話より少し前、任務のためにと既にこの国に潜んでいるという仲間と合流するために密入国をした者が…それはなんとあの―――


「(ふ・う…カラスの奴は大丈夫なんだろうか、それにしても薄気味悪い処だ――――まだ日中だというのにこんなにも薄暗いんだから…な。)」


どうやら『禽』のリーダー格である『きょう』―――こと、ナオミだったようです。(それにしても既にカ・ルマに潜入しているのが『カラス』…だとは。)


         * * * * * * * * * *


それにしても先程カ・ルマ大王―――サウロンとその七人の側近の前に引き出されながらも、揚々として自宅に戻ってきた者が…それは――――あの黒ずくめの女、シホだったようです。

そして自宅に帰ってくるなり着けていたモノを取ったそのさまは…白銀の長髪に、理知的でもありまた時には何を考えているかさえ分かりかねない灰色の瞳…と、そのどれをとっても一級品の美があの黒き衣の下に隠されていたというのです。


そして今日の汗を一通り流し終わり、浴室から出るとそこには――――!


「(はっ!)誰―――!?」


「いよっ―――お久し。」


「ふぅ…なんだ、誰かと思ったらナオミか。 全くぅ―――大体をとめの部屋に音も立てずに忍びこんで、それで平気な顔~~だ、なんて趣味悪いぞぅ?」

「いやぁ―――悪い悪い。 それよりも、アタシがここに来ている時点で何の用件なのか…は、分かってるんだろう?」

「そりゃ―――まぁね。」


この家―――シホの居住に音もなく侵入していたのはナオミ…ですが『禽』のリーダーであるはずの彼女がここに―――と言う事は、そう…予想の範疇を超えないコトにはシホこそが『禽』の一員である『カラス』…だと言う事なのです。

そしてナオミがどうして今ここに自分がいるのか―――の理由を問うたところ、シホからは意外な返事が…


「確かに―――あんたがここに来た事の意味は分かっている…が、今はダメだ、一緒に行けはしない。」

「(……)ナゼ?」

「今大事な計画を実行中でねぇ…中途半端には終わらせたくはないんだ。」

「だけどしかし―――」

「なぁに―――大丈夫、心配するなって。 私はヤツ等如きに取り込まれたりはしない…だったらそれを逆に利用してやるまでさ、だろ?」

「……。」

「まあ確かに一緒に行けないのは残念だけれど、今まで採取して来た情報モノは持って帰ってもらうよ。 ちょっと待ってて―――」


『一緒には行かれない』―――この言葉を耳にしたナオミは非常に不安に駆られたのです。 なぜなら自分達の仲間の一人が、この…依然ようとして得体の知れない場所に、たった一人で残すと言う事に―――けれどシホは一緒には行かれない代償として自分が今まで収集した情報をナオミに託す様子…


そして―――


「お待たせ―――これがそうよ、よく見て。」

「(こ―――これは!?)これは…本当なのか?」

「ああ―――それだけ集めるのにもえらく苦労したもんよ…その分、カネも時間も費やしたけど、ネ。」

「そうか―――そいつはご苦労だったな。」

「いやぁ―――なぁに…」

「そう言う事だったのなら仕方がない、引き続いて収集してもらおう。」

「(フフ―――ッ…)分かってるさ…お頭。」


この時シホが開示して見せた情報―――それこそが『いにしえの魔皇と七人の魔将の復活』だったのです。


それを見たナオミはつい驚いてしまったのですが…気付きませんでしたか?

ここで明らかにされた大変貴重な情報―――自分が『マエストロの魂を封じた宝珠』と、地元ラー・ジャの【聖女】の名がこの『マエストロ』と同じ名であること…それを、敵方であるはずのカ・ルマに提供した事を――――


でも―――シホから得た情報をたずさえ、ナオミは次の目的地へと翔んで行ったのです。


        * * * * * * * * * *


そしてそんな彼女を見送り――――こんなことをポツリと洩らす黒き女は……


「(ふぅん―――そうか、あの坊やがようやく動き出したか…これは、こっちものんびりとはしてられないようだねぇ――――)」


自分が所属している組織のリーダーをも向こうに回し…これから何かをなそう―――としている彼女は、一体何者なのでしょうか…


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


時に…魔皇城コキュートスの、ある一室にて…

そこは魔皇サウロンの第一の側近であり、他の者達よりも発言権の強かった者―――ビューネイ=グリード=サルガタナスの部屋。


しかし―――実は、ここに未だ予測だにしえないある人物と…この第一の魔将ビューネイとの間で取り交わされた、恐るべき密約が―――…


「(―――んっ?)何者だ。」


その気になるべき『ある人物』とは…『禽』の一員であり全身を黒布で覆ったナゾの美女――――『カラス』ことシホだったのです。

が?しかし―――シホを見たこの魔将の反応は…


「誰かと思いきや……我が創主様ではございませんか。」

「おぉや、思いの外ビックリしないものだねぇ。」

「これは…ご冗談を。」(フフフ…)

「それよりも、部屋の扉には施錠をしておいたほうがいい。 今の私のように難なく入られることもままにある。」

「はっ―――が、しかし…あなた様程の方に普通の錠前では無意味なのでは。」

「だが、他の者共には十分有効な手だ。」

「そうですか…畏まりました、では早急に手を打ちましょう。 ――――で、そのためだけにこの私の部屋に入りなさったので?」

「フフフ…さすがは察しがいいようだ―――上出来だよ、私の可愛い『ホムンクルス』。」


そう―――この時魔将であるはずの男は、シホを見るなり創造主を意味する『創主様』と呼び、シホもまた彼の事を『可愛いホムン・クルス』と、そう呼んだのです。


「これはありがたき倖せ。」

「ところで―――だ…お前、他の六名を上手く手懐けているかい?」

「愚問―――抜かりはありません。」

「そうか、ならいい。 そこで…だ、『デルフィーネ』の復活をほんの少しだが先送りにして欲しい。」

「はぁ…それは一向に構いませんが。」

「そうか…いや実はな、今私が所属しているところの坊やが何やら動き出しているとのコトだ。」

「(ほぅ…)ではいかがいたしましょうか――――」

「いや、それに関してはリアクションは起こさなくてもいい、寧ろあの坊やのやりたいようにさせておけばいい。」

「はっ―――」

「それに…風の噂では14年前に取り沙汰された―――」

「ジィルガ=式部=シノーラの事ですか。」

「ああそうだ、あの…マエストロと同じ名を持った者が『皇の御魂』を引き継いだものとばかり思っていたけど、残念だが見当違いも甚だしかった。」

「何しろ直接、ご自身の目でお伺いしましたからなぁ。」

「うむ―――だが今度は違うぞ…こんな、ドス黒い闇の中にいたとてビンビンに感じてくるだろう…あの子の――――ジョカリーヌの魂の波動を!」

「はい…今度こそ間違いなく本物のようです。」

「フフフ…この時を―――どんなに待ち焦がれたことか。 この魔皇滅亡の地であの子よりも先にヤツが復活してしまったのには冷や汗モノだったが――――お前の咄嗟の機転で第一の魔将をその体内に取り込み、それと同一化して後事を取り仕切ったのは見事なものだったよ。」

「いえ…これはお恥ずかしい限りで―――この凡愚なる我が身をお創り頂いたあなた様へのせめてもの恩義の御標みしるし―――と、そう思いまして。」

「フッ―――その思いだけで十分だよ、私が創造つくった可愛いホムンクルス…『ベェンダー』よ。」


そしてここで明かされた、更なる衝撃の新事実。

そう、それはこの者達が『主従』なのではなく、寧ろそれ以上の関係―――『創造主と創造つくられし者』のだったのです。


それにしても…7万年前には100万の軍に匹敵する“武”を誇る魔将の一人…それもその筆頭をその身体の中に取り込み他の者を意のままに操れるとは…このホムンクルス『ベェンダー』に秘められた潜在能力は他の生物のもののそれとは一線を画しているようです。


「ところで―――創主様…」

「うむ―――お前も分かってのように今世こんよ現人神あらひとがみが真に覚醒しうる時機ときまでその行動は慎め――幸いにしてマエストロの“器”のほうはお前だけが知り置いているコトだ…情報の操作くらいはワケがないだろう。」

「ええ、それはもう…造作も、ないことで――――」(ニヤリ)

「では、頼んだよ…」


「もちろんでございますとも―――我が盟主【リッチー死せる賢者】ガラティア様……」


そう―――この時この者の従者は確かにそう言ったのです―――

リッチー死せる賢者】ガラティア―――と……



この名は…今を遡る事7万年前―――いや、それ以前の、この時代開闢かいびゃくときよりやはり同じ名前が存在しているのですが…まさか同じ存在だと、そう取れなくもないのですが……


でも、結論だけを申し述べると、そのときより存在した者と―――今、この場にて存在しえている者とは、すべかららくその存在性は―――


            ―――同一である―――


のです。



そう、とどのつまり、畏るべき事にはこのシホ=アーキ=ガラティナーハこそは、その名をえ、気の遠くなる時間を永らえてきた文字通りの『死せる賢者』だったのです。


それにしても―――この大陸の北の外れのドルメン遺構に奉られていた、『マエストロの魂』を封じていた宝珠の強奪をし――――『皇の御魂』を受け継ぐ者の出現を心待ちにしていた、この死せる賢者・ガラティアの企みとは…


一体、なんなのでしょうか――――



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