第30話 あーもう! 俺氏まじで意味わからんのやけど!

 作業室っぽいところでたくさんの機械類に囲まれていた。

 正確に言うと、たくさんの機械類に囲まれたカゴの中にいた。

 正直めっちゃうるさい。死体のフリしとるけどちょっともう限界。

 あっつ! あっつい!

 工作機械みたいなんでカゴを焼き切ろうとしとるんか、めっちゃ火花が顔にかかる。あっつい!

 これ、火花で髪の毛燃えるんちゃうの? なんやチリチリ焦げ臭い。

 でも状況がようわからん。多分俺らはリシャたんたちが見張っとるやろうからそのうち助けてくれるんやろうけど、ボニたん無茶せんやろうか。

 なんや心配になってきた。

 なんとなく俺が拉致られたんが自分のせいやとかうじうじ悩んどる気がする。


 はぁーやっぱリシャたんたちが見張っとる言うといたほうがよかったんかな。

 でも言うたらまた別のわけわからん方法を考えそうな気がするわ。ボニたんはこうと決めたら動かんからな。国境あたりまできたら捕まるとは思うとったけど、そこで定期的にカレルギアに来るとか適当に話をつけたらええんやないか思うとった。

 リシャたんは隊長さんやからそうそう動けんかもしれんけど、研究しとんのはリシャたんやのうて部下の人や。やからコレドとかマルセスとか、誰かにキウィタス村に出張してもらうんもあるんちゃうかな思うし。首がようけおる言うたら見たい言うてたし。そのくらいリシャたんの隊はゆるい感じやったし。

 はーあーあー。

 ボニたんどうなっとるんやろうな。

 さっきから『スピリッツ・アイ』使おう思てもこのカゴの中やとうまく発動せんのや。なんていうか調べよう思ても、このカゴの外のことはわからん感じ。やからやっぱこのカゴの中は特殊なんかもしれん。


「あれ? 今この首動きました?」

「首が動くわけなかろう」

「そろそろ焼き切れそうです。でもこれ焼き切るんでよかったんですか? 特殊な機甲なんでしょう? 防御機構が組み込まれてるとかないです?」

「そうは言っても開けられないんだから仕方がないだろ。第1師団の技術に敵うわけ無い」

 第1師団?

 第1いうたらこの国の一番上の軍部やないの? 確か第一皇女が師団長いう。

 あれぇ? じゃあリシャたんはこの国のお姫様なんか?

 うそぉ。なんかめっちゃ雑多やぞあそこの隊。でも確かにあの工房は街のどの工房よりも最先端感があって……。まじなん? お姫様なん? えぇ?

 そんなこと思うとったらバチいう音がして外の空気が流れ込む。工房っぽいなんかの油の匂いがする。そしてなんかけたたましい音が鳴り響く。


「なんだ! どういうことだ!」

「嘘だろ? おかしな魔力量を検出しています! 隊長どうしたらいいんですか⁉ これじゃ本当に龍を呼び込んでもおかしくありませんよ!」

「何⁉ ちょっと待て! どういうことだ? カゴからはほとんど魔力が検出されなかったはずだろう⁉」

「いやだからカゴで魔力が漏れるのを防いでいたんでしょう?」

 急に慌ただしくなる作業室。放置される俺氏。

 ええー。なんなんこの反応。

 俺氏の魔力そんなすごいん? でも自分で全然わからんとかホンマに残念すぎるで。

 それでどうしたらええんやろ。とりあえずスピリッツ・アイでもしてみよか。でもマルセスはアレ使うとちょっと魔力が漏れるいうてたしな。うーん。


「あれ? ちょっと待ってください。この魔力反応の大部分の発生地点はここじゃありません」

「何なんだ。どういうことなんだ」

「よくわかりませんが、この反応は客間のほうですね」

「客間? なんでそんなところから?」

 あれ。俺のせいやないん?

 良かったんかなと思うような、なんやら残念なような。

 うん?

 でも客間。

 この国には魔力が漏れるもんとか魔法使いいうんはおらん聞いたわ。そうするとボニたん?

 でもボニたんは魔法使えんいうてたし、魔法使うんみたこともない。

 ホンマに何が起こっとるんやろ。さっぱりわからん。

 でも俺の魔力がそんなでもないなら、使ってもええんかな。


『スピリッツ・アイ』


 その瞬間、頭が真っ白になって目玉の裏がすんごいチカチカした。

 なん、めっちゃ、痛い、痛いなんて、もんや、ない。ぎう。

 偏頭痛いうレベルやない。俺の頭のどっかの血管にめちゃめちゃ圧力がかかって脳みそを頭蓋骨の端っこにぎゅぅって寄せ集めてカチコチにするような、なんか、無理。気持ち悪い。もう、死にそう。鼻血でる。

 その時、ドサっていう音がして頭にごちんとなんか落ちてきたけど、そんなどころやない痛み。

 でもなんか知っとるような声が聞こえたから、頑張って目ぇ開けたらボニたんと目が会った。

「ボニたん?」

 何? 一体何が起きとるん?

 ひときわ激しい痛みが起こって思わずぎゃぁと叫び声が上がった。いや、自分の声やん。あんまりに痛くて体が動かん、いや、体ないけど。

 痛い、痛い、痛い、無理。

 そう思うとったら、すぅと痛みが引いていった。

 ……何? なんなん?

 おそるおそるギュッと瞑っていた目を開けると、そこにはやっぱりボニたんが倒れていた。


「ぼ、ボニたん? どうしたん? 大丈夫?」

「でゅ、ら……」

「ボニたん? どしたん? ホンマに? おおい?」


 なんやろ。誰か助け。

 それで見回したらここ、あれ?

 リシャはんところの応接室やないん?

 真っ暗で誰もおらんけど?

 一体何がおこっとるん? わけわからんわ。

 ひょっとして意識とんどる間に助けてもらったとか?

 けどそれやったらボニたんが床に倒れとるんがおかしいやん?

 それに、大分収まったけど、頭の中はめちゃ痛い。

 肩こりんときみたいに頭の後ろの方にめっちゃ凝っとるところがあって頭が痛くて気持ち悪い。

 いやでもそれよりボニたんやん?


「ねぇ! 誰か! 誰かおらへんの⁉ 助けて? 大変なん!」

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