九月(夏休み)

九月一日(水)瓦せんべい

 地理が終わってから、Y先生にカウンセリングのことを話しに行った。宿題と言われていたことはちゃんと話せた。

 六階の一角に社会科の先生の研究室が集まっていて、もうすぐ制覇するので、暇だったし、相談室長の先生に会ってきた。最後に「ちょっと待ってて」と言って奥に入って、先生が持ってきてくれたのが一万円札の瓦せんべいだった。「数Ⅱの先生と一緒に食べな」と二枚くれた。

 数Ⅱは普段通りに終わった。先生とルービックキューブをした。結局、せんべいはその場では食べなかった(私はその日の晩ごはんの前に食べたけど、先生は「お腹いっぱいになりそうじゃん」とか言ってずっと残していた)。あと、筆談ノートがなくなった。明日から三冊目だ。


九月二日(木)三倍

 地理の授業もちゃんと進んでいる。(筆談ノートじゃなくてホワイトボードで話していたから、何を話したか残っていなくて悲しい)

 (多分お昼を食べに)M先生の研究室に行ったら、学会の作業で数Ⅱの先生もいて、昨日の続きでけん玉とルービックキューブをした。そのあと帰るときに、さようならって二人に言えたんだ。年度当初は、合格者招集日に私が自分の名前を言ったのをY先生が聞いていて、一だとすると、今日で三倍になった。二人同時も初めてで、嬉しかった。それをY先生に報告に行って、また言えた。


九月三日(金)土砂降り

 十時から地理だったので、九時半前ぐらいに学校の最寄り駅から歩いていたら、だんだん雨が強くなってきて、学校に着く頃には十メートル先も見えないんじゃないかというほどだった。教科書とかはまあ端だけとかしか濡れてなくて大丈夫だったけど、スケジュール帳が濡れた。あとズボンも。地理のあとM先生のところでお弁当を食べたとき、「身に着けたもの何から何まで濡れました」と書くと、「俺ドライヤー持ってるから濡れたもの出して」と言って、教科書とかを積み重ねて乾かしてくれた。歴史の先生に出したクイズの答え合わせをしに行って帰ってくると、地理の先生が通りかかって「そんなに濡れてたんか!」「地理の教科書とかはどうでもいいけど、次の実験のノートとかは大丈夫か」と心配してくれた。ちょっと濡れていたけど、うなずいておいた。実験は今日で終わった。


九月六日(月)後期どうなるか

 Y先生と、ほぼ〇点だった成績表を親が隠していた話から、後期にちゃんとできていたら進級できるという話になって、「先生の部屋にいることもなくなるんですかね」と書くと、歯磨きしながら熱く語られた(内容は忘れてしまった)。前期も、前期が勝負だって思ってできなくて、後期も一緒になるような気がする。同じことにならないように、自分が頑張るしかない。


九月七日(火)数Ⅱの先生

 数Ⅱの先生。アーチェリー部の顧問をしていて、自分もやってみたくなってもう一人の先生と一緒に、弓を買うことになったそうだ。いきなり言ってくるから、何かと思ったら、その弓が十四万円ぐらいするらしい。持つところと弦をつけるところと…と買っていくと、そんな額になるそうだ。もう一人の先生が奥さんに交渉して、無言の圧力をかけられたところまで聞いた。ここまでで分かっていたのに、更に先生にもいろいろいて面白い。


九月八日(水)地理

 (悲しいことに、地理の最後から二回目の授業の日は午後二時からだったので、お昼も食べてから学校に行ったし、誰とも会話した跡が残っていない。地理の先生とはホワイトボードで話したと思う。)


九月十日(金)地理Finish

 歴史の先生は私のクイ友、クイズ友達で、研究室がM先生の隣なので最近は結構遊びに行っている。今日は地理が午後からで、お昼を食べるためにM先生の方に行ったらいなくて、隣からカップラーメンを食べながら話しかけてくれたので、先生が食べ終わるまで待ってから私もそこで食べさせてもらった。

 そのあと話していると、M先生が戻ってきて、歴史の先生の仕事を邪魔していそうだったから隣に移った。地理に行く前に、ラブレターと言ってM先生に手紙を渡した。会って何か月も経っているのに、初めての手紙だった。

 地理が終わって、終わったとM先生に報告に行ったら初めての先生がいた。他の学科の先生で、新任繋がりでM先生と仲良しなんだそうだ(他の学科ということでH先生とする)。どっちの方が若く見える?って何回もM先生に聞かれたので、何回も「人を見た目や年齢で判断するのはいけないと思います」と書いておいた。「さようなら言ってみる?」と聞かれて言ってみることにして、初めての先生だったけど言えた。これで四倍だ。


九月十四日(火)久しぶりのパニック

 今日は数Ⅱだけ、一時半からあった。なぜか先生が誰もいなかったので、地理の先生のところでお昼を食べた。

 補講が終わってから、前さようならって言えたから言おうとして、体感十分以上経って、その間ずっと立っていたから、頭から血が引いてパニックになった。ようやく動けるようになって、椅子に座って休憩していたら、M先生がエレベーターから降りてきて、たまたま私がいたところを覗いて、来てくれた。M先生は、いつも水の二リットルペットボトルを持っているので、「水いる?」と聞かれた。「水筒あります」と返せるぐらいまで元気が出て、「過去のこと?今のこと?未来のこと?」と聞かれたから、帰れるかどうか心配で「今は将来への不安です」と書いたら、また一緒に駅まで来てくれることになった。そのときに、H先生に電話しだして、H先生も付いてきてくれて、三人で歩いた。

 「一人やと駅まで長く感じるけど、誰かおるとあっという間やな」とか、私の名前の漢字の話とかをしていた。さようならは、電車がもうすぐだったからグータッチで帰った。


九月二十二日(水)いきなり

 学校に行く直前に、暑いなと思って熱を測ったら、三十七度七分あった。これは電車にも乗ったらいけないし、先生にも迷惑だしで、初めて補講を休んだ。あ、ちゃんとメールして。数Ⅱもあと二回になりそうなのに、宿題はあまり終わっていない。地理のせいにしていたが、それもよくない。後期なんか始まってほしくない。


九月二十七日(月)数ⅡFinishとともに

 ペーパールービックキューブという、一枚の紙に切り込みを入れて作ったルービックキューブを持って、歴史の先生のところに遊びに行ったら、「僕ね、赤と緑の区別がつきにくいんですよ」と言われた。遠くから見たら、赤が緑に見えたりとかするらしい。ゲームにも色盲モードとかがあるから、別に深刻な感じには受け止めなかった。突然の告白だったが、そこまでの関係性になったんだなと嬉しくもあった。

 そこにちょうど数Ⅱの先生も来て、補講が始まるまで一緒に遊んだ。歴史の先生が、自分ができなかった色を、数Ⅱの先生が簡単に揃えるのを見て悔しそうにしていた。

 今日で数Ⅱも終わった。みんなに出した宿題の、夏休みに教わったところだけでもしておいてと言われた。「いやー、頑張ったねー!」と言われて、嬉しかったけど同時に夏休みも終わってしまうことが怖い。授業には出られるのか。

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