第4話 時は過ぎて、悪夢へと…

そのまま、時は過ぎて行った。


私とひーくん、ついでに暦ちゃんの3人で楽しく過ごしていった。


中学生になると大変だったなぁ………


何か変な人達に告白される様にもなったし、同級生の女子からは変な嫉妬も受ける様になった。


まぁ、友達は暦ちゃんさえ居れば良いのでどうでも良かったし、他の男からの告白なんて論外だ。


「ねぇ、ひーくん?」

「ん、何だ陽葵?」

「私に何か言う事あるよね?」

「────すまん、何かあったか?」

「チッ………解らないなら、また後でね。」

「ふふ。ねぇ、人識くん?私にもあるんじゃないかな?」

「えっ!?」

「暦ちゃん?」

平等、横並びだよ、陽葵ちゃん?」


と、じゃれ合いみたいな小競り合いを続けていた。


まぁ、そんな私達の内心にひーくんはさっぱり気が付かなった様だけど………


鈍感過ぎるよ………


☆☆☆


そんな事を繰り返していたら、私達は高校生になった。


そんな高校生になって初めてのクリスマス、私とひーくんの二人きりでデートを楽しんでいた。


何時もなら家族ぐるみか、暦ちゃんとの3人だった。


でも、今回のクリスマスは私だけをご指名だった。


「私、幸せ過ぎるなぁ………後が本当に怖いよ。」

「ん?何か言ったか、陽葵?」

「ううん、何も。唯、楽しいなって………」

「────そうか、良かった。」


二人きりのデートを楽しんだ私達は、あの自殺未遂をしかけた公園に来ていた。


何やら、ひーくんは其処に寄りたかったらしい。


う〜ん、何でだろう?


「渡したい物があるんだ、陽葵。」


思い出話に花を咲かせていると、ひーくんがそう言ってきた。


何だろう………指輪とか?


ふふっ、流石に望み過ぎかな?


「………うん。」

「これを貰ってくれないか?」


そう言うと、ひーくんは急に膝を付いた。


そして、私を見上げながら小箱を取り出して中身を見せてくる。


其処には………


「ゆ、指輪………」

「俺と結婚を前提に付き合ってくれ!!」


────ああ、幸せだ。


やっと、やっと私の夢が叶った。


答え?


そんなのあの日からとっくに決めてある!


「ぐす、ぐすっ………」


だが、それ以上に涙が溢れ過ぎで何も言えなかった。


そのせいで、少し時間を無駄にしてしまったのが非常に恨めしい。


でも、今はそんな些細な感情よりも………


「ねぇ、ひーくん!」

「何だ、陽葵?」

「指輪、填めてくれる?」

「喜んで。」


彼が私の指に指輪を填めている瞬間瞬間が永遠に感じた。


ああ、まだこの時間を楽しみたい。


もうちょっと長く続いて欲しい。


でも、私は彼に答えなければならない。


────私自身の答えを。


「ありがとう、ひーくん♪これからも、ずっと、ずっ〜と一緒に居ようね♪」

「勿論さ、陽葵!」


私は完全にそう思っていた。


でも、世の中は………


「帰ろうか、陽葵。」

「うん♪明日もずっと一緒に………」


浮かれていた、夢中だった、完全に迂闊でしかなかった。


だから、だからこそ、私は………


キキィィィィ!!!!!


「なっ、陽葵危ない!!!」

「えっ………」


嫌な音が聞こえた。


ひーくんが叫ぶと同時に私を突き飛ばした。


驚いて振り向こうとしたけど………


────私の意識は其処で途切れた。


続く


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