第2話 急なペーパーテスト実施報告

 天竺高等学校は学生寮制度が実施されており、学生全員が学校で用意された寮に住んでいる。


「へぇ〜めっちゃ充実している」


 テレビにエアコン、キッチンにトイレとお風呂、ベットまで全てが完備されていた。

 これに加え、電気代、水道代、ガス代全てが学校側が持ってくれるのは実にありがたい。


「うん。生活面に関しては問題なさそうだな」


 さらにこの天竺高等学校ではコンビニやデパートなども用意されており、生活必需品は全て学校内で手に入る。


 つまり、基本、遊びに行く時以外は学校の外に出る必要がないというわけだ。


「コンビニでもいくかな」


 俺はそのままコンビニに向かう。

 改めて、学校内を回るとその広大さを実感する。

 しばらく、彷徨っているとコンビニを見つけ、店内に入る。


「おっ、やす…」


 さすが、学校経営のコンビん。全ての商品が外で買うより2割ほど安い。

 これなら、生活にも困らないだろう。

 俺は「今日は贅沢だ」と奮発して、たくさん食べ物を買った。

 そして、ついでに歯磨きを買おうと取ろうすると、同時に隣の人が同じ商品に手を伸ばす。


「あっ、どうも」

「取らないの?」

「と、とります」


 隣には北条さんがいた。

 俺は言われるがまま、商品をとり、そしての北条さんもそれに続いて、商品をカゴに入れる。


「北条さんってコンビニ来るんだね」


「私が来たら、ダメなのかしら?」


「あ、いや、ほら女の子ってあんまり来るイメージがないからさぁ」


「それは、偏見ね。その考え、直したほうがいいわよ?」


「はははっ、そうだね」


「ねぇ、あなたは今日聞いた学校のシステムについてどう思ったの?」


 突然、北条さんが俺に対して言葉を投げかけた。

 これは…まさか!?距離が縮んだのか!!っと思ったが、顔つきからして真剣そうだ。


 何か疑問を感じたのだろう。


「う〜ん。まぁ、何とも思わなかったかな」


「そう、ならいいわ」


「そういう、北条さんはどう思ったの?」


「気安く、苗字を呼ばないでくれる?」


「あ、すいません」


「それに、あなたと話し合うメリットを全く感じられないのに、何でわざわざあなたに私の考えを話す必要があるの?」


「いや、それは…」


「明確の理由もなく、私に質問しないことね。じゃあ…」


 そう言って、そのままレジに向かう北条さん。

 友達になるには、まだ時間がかかりそうだ。


「それにしても、監視カメラが多い気がするな…」


 俺が通った道だけでも10箇所も確認できた。

 それにコンビニ内だけでも最低4箇所もある。

 学園内とはいえ、さすがに多すぎる気がするが、まぁたくさんの才能のある学生が集まるんだ。



 多くなっても仕方がないか。


 俺もそのままレジに向かい会計を済ませ、自分の部屋に戻った。

 そしてそのまま1日が終わり、本格的な授業が始まった。


 基本的には他の高校と変わらず、1時間ごとに各科目を受ける体制で、特に変わったことがなかった。


 才能のある者の集まる名門校だから、何か特別な授業があるのかと思いきや、至って普通の授業。


 クラスの7割の生徒が真面目に授業を受けず、ぼけ〜としたり、あくびをしたり、寝てたりとしていた。


 才能があるからといって、勉強ができるわけではない。

 スポーツが得意だとか、演技が得意だとか、そんな才能があり、天才的能力を持つ者にとってはこの普通の高校生の授業はとてもつまらないものに写っているのだろう。


 そんな日々が淡々と続き、気づけば1ヶ月が過ぎていた。

 みんなが楽しく過ごし、部活などで才能を磨く日々。


「友達ができなかった」


 そんな中、俺は友達作りに失敗し、孤立していた。

 今の俺は完全な独りぼっち。

 明るい高校生活はすでに真っ暗と化していた。


「そんなに悔やむことかしら?」

「おいおい、それはどういうことだ?」


 話しかけてきたのは北条さんだった。

 俺の唯一の独りぼっち仲間。

 この1ヶ月、北条さんは授業以外、ずっと本を読んで過ごしている。

 これは完全に仲間だと認識していいだろう。


「友達なんて、所詮は高校生までの関係。切れてしまれば、それまで。だったら、わざわざ友達を作る必要があるの?」


「高校生活は人生でたった一回きり、たとえ、それが3年間までの関係でも貴重な経験だろ?」


「……その意見…確かに一理あるわね。でも友達と遊ぶことに呆けて、自身の才能を努力を無駄にするのはどうかと思うのだけど…あなたは今のクラスの状況を見てそう思わない?」


「そ、それは……」


 確かに北条さんの言う通りだ。

 今のCクラスはたるんでいる。

 部活動で才能を磨いている者もいるだろうが、それでも遊び呆けいている印象が大きい。


 けど、実際に俺はみんながどんな才能で選ばれたのか知らない。

 もしかしたら、裏で頑張っている可能性も考えられる。


「……いや、待てよ。北条さん」


「だから、私を苗字で…」


「じゃあ、璃…」


「ちょっと!?」


「俺たちって、この1ヶ月、Bクラスと、Aクラスの生徒に会った事あるか?」


「え?そんなの会ったことがあるに決まっているでしょ。実際に入学式に会っているし、その後も…何回か……ちょっと待って…」


 すると突然、璃は考え込む。

 まるで何かに気付いたかのように。

 すると、教室のドアが開く。


「お前達、席につけ…ホームルーム時間だ!!」


 Cクラスのみんなが席につく。

 何やら、真剣そうな顔つきを見せる菊池先生。


「お前達に緊急連絡だ。今から1週間後、1学年全員が小規模のペーパーテストを行なってもらう」


 その報告に生徒達はざわめいた。


「静かに。騒ぐのは私が報告し終えた後にしろ。いいか、このペーパーテストにクラス成績は反映されない。問題内容も、この1ヶ月受けた範囲内で出される」


「すいません。質問なんですが」


「なんだ、五十嵐学」


「個人成績も今回のペーパーテストには反映されない考えいいんですか?」


「ああ、今回のペーパーテストに個人成績も反映されない」


 その言葉に安心したのか、Cクラスの皆、ほっとした表情を見せる。

 急なペーパーテストに個人成績もクラス成績も反映されない。

 なら、一体どういう意図でこのテストを実施しているんだ?まだ、何か明確な理由があるはずだ。


「菊池先生、一つ説明してほしいことがあります」


 璃、いや北条さんが手を挙げた。


「何だ、北条。言ってみろ」


「このペーパーテストの意図を教えてください。今の説明では、実施する意味がないと考えます」



「そうだな。だが安心しろ。これを実施する意図は至って単純だ。これはお前達が才能に溺れ、学力面に対して怠っていないかを確認するためのペーパーテスト。世の中、才能だけでは生きていけない。最低限の学力はどの世界でも必ず必要になる。これはそれを確かめるためのテストだ。答えになったか?北条」


「はい。ありがとうございます」


「他に質問はあるか!ないなら、この話は以上だ。ペーパーテストは来週、1限目から始める予定だ。しっかりと勉強するように」


 こうしてそのままいつも通り授業が始まった。

 だが、一つだけ変化が起きた。

 それはCクラスの中心人物である五十嵐学が動き出したということだ。

 彼は父と母が共に俳優と女優という、親に恵まれた学生、世界でもかなり流しられた学生俳優だ。


 そん彼が動いたのだ。



ー授業終わりの放課ー


「みんな、僕の話を聞いてほしい。この1週間はみんなで勉強会を開こうかと思っているんだけど、どうかな?」


 その言葉に女子ほぼ全員が賛同した。

 さすがイケメンだ。女子を仲間につけるのがうまい。


「いいんじゃない?ねぇ?」

「うん、学くんが言うなら…」

「私も賛成〜〜」


「俺は反対だ。勉強するぐらいなら、サッカーの練習をしてたほうがマシだぜ。勉強なんて時間の無駄だ」


「お、オイラも、反対かな。別に成績に反映されるわけでもないし、わざわざ勉強する必要がないと思うんだよねぇ」

「俺はゲームしたいから却下だ」


 完全に意見が割れた。

 このままだと、討論戦になりかねない。

 ここは止めるべきだろうか?

 いや、ここで俺が割って入っても「お前誰?」って言われるのがオチだ。


「ねぇ、わざわざ争わなくても、勉強したい人は勉強すればいいんじゃないかな?」


 女神を思わせる微笑みで会話に介入する女の子。


杏奈あんなちゃん…」


「確かに杏奈さんの言う通りだ……よしじゃあ、勉強したい人はこの後、一緒に図書館に行こう、これでいいね。みんな…」


 みんなはその意見に賛成した。


 木兎杏奈つくじあんな、おそらくこのクラスの中でかなりの発言力があり、男子にも人気な女子高生。


 恐ろしいのが、男子を魅了する笑顔に、誰にもでも気遣い、優しく接するその姿。

 男子からしたら、かなり嬉しいだろう。もしかしたら、「俺に気があるかも」っと思わせるほどに。


「行かないのか?」


「……私に聞いているの?」


「あ…北条さん以外に誰がいるんだ?」


「それもそうね。あなたぼっちだし…」


「ぼっちであることは認めるが、北条さんだってぼっちだろう?」


「私は好きで一人でいるの、あなたとは違うわ」


「あっ、そうですか…で、俺の質問の返答は?」


「……そうね。効率を考えるなら、私は一人で勉強したほうが効率がいい。ならわざわざ効率を悪くするために勉強会に参加する意味があるのかしら?」


「へぇ、頭の良さには自信があるんだ」


「えぇ、このクラスの中では一番だと思っているわ」


「マジか…」


 俺と喋っていて顔色ひとつ変えない北条さん。

 かなりの自信があるのだろう。

 けど、その自信はあまりにも危うい自信だ。

 すると教室の扉が開く。


「赤木宗馬…職員室まで来い」


 菊池先生が俺の名前を呼んだ。

 どうやら、呼ばれたらしい。


「えぇ…」


「あなた、何かしたの?」


「悪さをした覚えはないけど、仕方がない。じゃあ、また明日」


「ええ…」


 俺は菊池先生の後ろについて行った。




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『公開情報』

・来週、ペーパーテストを急遽実施

個人成績、クラス成績には反映されない







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