第43話 アクマノス

カゲルは神が消え崩壊へ向かう第四層を視界の隅に見つめながら第三層へと向かった。


神が飛び去り、信仰が暴力によって蹂躙されたと世界に知らされた時、第四層は各地で革命や

テロが起こった。教会、寺院は壊され、新たな信仰の対象を作り出したものもいた。


力の為に人は溺れ、狂い、大切な自分自身を

忘れていく。所詮の世は行動するだけの馬鹿と

何もしないクズの集団でしかない。


まともな奴も「力」を得た時にコントロールを

失い暴走する。

わかりきったことだ。

「力」を得ようとしている時点で弱いことを自ら証明していると言うのに。


「力」があるものはそんなもの欲しがらない。

コンプレックスを抱えた弱者が「力」を欲するからこうなるのだ。


つらつらと湧き出る思考に視線を向けつつ、カゲルは第四層と第五層を繋ぐ竪穴へとたどり着いた。


直径50メートルの円形の竪穴はレンガで作られたレトロな造形で、入り口から螺旋階段が第四層へと続いていた。


「あそこが入り口か、、。」


入り口へ向かうカゲルの前にスキンヘッドの

筋肉質が立ちはだかった。


「オイ!ここを通るなら通行料を払いな!!

30万だ!なけりゃ出直しな!」


筋肉質はご自慢の二頭筋を膨らませカゲルを威嚇した。


「通行証は持ってる、、。行かせてもらうよ、、。」


「おーーーっと!!ダメだね!!30万はみんな平等に払ってる!!例外はないぜ!!」


覆い被さるように筋肉質は言った。


「またアイツやってるよ。竜が消えて以降、居座って金をせしめてる。」


2人のやりとりを傍観している人たちの声が聞こえてきた。


「俺はなぁ!第四層を仕切るギャング、アブクラッシャーの一員だぜ!痛い目にあいたくなかったら、、!!」


ヒョロナガはご自慢の二頭筋を膨らませた。


しかし、筋肉は収縮せず力瘤すら生まれなかった。


「えええええ⁈ガリガリじゃねぇか⁈なぜ急に

筋肉が⁈⁈」


「影を切ったのさ、、。少し斬りすぎたかもな

でもスマートだし似合ってるよ、、。」


「おぎゃああああああああ!!」


ヒョロガリは発狂し膝をついて動かなくなった。


「後5年は鍛えるんだね、、。そしたらまた

スリムにしてあげるよ、、。」


カゲルは螺旋階段を降りていった。

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