第27話 ボクガナナゴウナノダ

「広場へ行こう!死んでなきゃいいんだけど、、。」


広場に転がった7号の首は土埃を被り力無く

横たわっていた。


「遅かったか…。」


ブラディが呟く。


「おーい!生きてる⁈」


カゲルが心配そうに問いかけると、ピクッと

黒い影は体を揺らした。


「痛い〜!!イタイのだぁぁ〜!!助けて欲しいのだぁ〜!!ぴげええええ!!!」


最強竜の子供とは覚えない情けない声で

チビ竜は吠えた。


「カゲル俺らの影を少しわけてやろう…。

影が増えりゃそこからは自分でなんとかするだろ…。」


「うん…。」


二人は手を竜にかざし幾らかの影を渡した。


「もぐ、もぐぅ、うまい!うまいのだぁ!」


一気に影をかきこんだ7号は、九頭竜の一部であったものから、7号独自の体に変化した。


モアモアモア


「なんだこの煙、、必要性あるのか?」


ピンクの煙の中から声がする。


「必要不可欠なのだ!ぼくは女の子!裸は見せちゃいけないってママに言われたのだ!」


「お、女、、の子⁈⁈」


目を点にしたカゲルの前に煙のベールを開けて

姿を見せた。


4頭身の幼児体型に肩につく程度の金の髪、

くっきりとした青い瞳はなろう小説家が一斉に逃避した美しいかりそめのメタバース、或いはつぎはぎの地球のように輝いている。


そして、肌はこの世界と対比構造をとらんと

純白に染まり、被り物なのか本物なのか竜の耳のようなものがうさぎの耳のようについている。


「ぼくが七号なのだぁ!!助けてくれてありがとうなのだぁ!!」


七号はカゲルに飛びついた。


「カゲルゥゥ!好きなのだぁぁ!!つおいオトコがぼくは好きなのだぁぁ!!」


頬をすりすりとすりつける。竜の一種のマーキングのようなものなのか。


「ちょっ!?ナナゴウ⁈ひゃっ⁈くすぐったいよ!!」


嫌がるカゲルだが七号の求愛行動は止まらない。


それを側で見ながらブラディがジンを呼ぶ。


「オイ…!!ジン!!

スラムの奴らを集めろ!!!作戦通りに

スラムの竜からの解放をつたえろ!!そしてお前が領主なるんだ…!」


「はい!!!」


…一時間後、広場にスラム中の人が集まった。


「なんだよジン!少しでも腹の膨らむ話なんだろうな?」


村人Aが訴える。


「ああ、とっておきのな、、。胃もたれおこすんじゃねえぞ!!」


ドンッ


コクリュウの首が広場に転がった。


オオオオオオオオオオ!!!!


爆発するような歓喜の奇声が広場を覆う。

ひとしきり、声が枯れて死んだ後にジンは

続ける。


「黒龍グロスディアスは死んだ!!倒したのは

俺!!ジン、グレイス!!!!

この街はこれから俺が統治する!!!!

お前らが生きやすい、飢えねえし、死なねえ

街にする!!!

俺に!!!ついてこい!!!!!!!」


うオオオオオオオオオオオ!!!!


歓声はその背に鳥、あるいは蝶の羽をつけて

国中を飛んだ。

それは何十年も皆が待ち望んだアンセムだった。

ファーゼノンはここに統治されたのだ。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る