ボーイズインザシャドウ〜兄の背中に隠れてた俺が異世界転生して最強剣を引っこ抜いて成り上がり!

玻璃井 誠司

第1話 サトウカゲル

「あんたなんか産むんじゃなかった

あたしの人生返してよ!」


今夜も放たれた母の癇癪玉は四角い部屋を

乱反射して俺の心臓に命中した


安い発泡酒の缶が3本、人間をダメにするアルコール度数12%のストロングオメガが口を開けて

俺を嘲っている


母にフローリングに押さえつけられて天を仰いだ俺の名は佐藤翳、サトウカゲル、

今や中身を失い、価値を失った空き缶にすら

見下ろされ嘲笑される男サトウカげぇぇ!


母親の手が俺の首を締め付けた

げぇぇぇぇ、げ、げげげ、げぇーげん


こんなことをしても父さんと兄さんは戻らないよ


そう言ったはずの言葉は絞扼による

空気の圧縮のために、ウシガエルの中でも

更に劣等種のそれに似たガム音となり

部屋にアナウンスをした。


「うるさい!朝樹の代わりにあんたが死ねばよかったんだ!そうしたら!パパも死んだりしなかったのに!」


殺される、、!!


必死に抵抗を試み、手足、腰をばたつかせたが

15歳のカゲルの力は母親の圧力を押し退けるにはあと数ヶ月は必要だった。


佐藤家はごく平凡な家庭だった。

仲の良い父母に1人の兄

父は印刷工場で働いていて、休日には

よく家族で出かけた。


「そうだ!ペイズリーランドの観覧車に乗ろう!父さん、母さん!朝樹兄ちゃん!」

4人は降りてきた車両に乗り込んだ。


母は教育熱心で僕とにいちゃんにつきっきりで

勉強を教えてくれた、成績のいい朝樹兄ちゃん

に比べて僕は勉強が出来なかったけど母さんはそんなことで僕らを比べたりしなかった。


「カゲルにカゲルのいいところがあるじゃない

たまに私はカゲルの笑顔が好きよ。幸せな気持ちになれるもの」


そんな胸がポカポカムズムズするような言葉を

母さんは僕にくれた。


隣で兄さんが言う


「カゲル、なんか困ったことがあったら

にいちゃんに行ってこい。俺が全部解決してやる」


そう言って朝樹にいちゃんは腕が折れても

不良グループと喧嘩をしたし、僕を笑った

先生にまで食ってかかった。普段は柔らかい

にいちゃんがタスマニアデビルのように

あれ狂い噛みつき毒を吐き出す姿は少し怖かった。


僕はそんなにいちゃんの背中に隠れてばかりだった。


キイ、キイ、


観覧車が登っていく、


キイ、キイ、ガチャン!!


観覧車は頂上地点で止まった。


「あれ、止まっちゃった、父さん、にいちゃん?」


2人はいなかった。


そして、母親はゆっくりと白い手を

カゲルの首元に伸ばしてきた。


「母さん?!どおして⁈なんでぼくの首を

し、ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ、!!」


「あんたなんて産まなきゃよかった!」


観覧車からの景色はとても綺麗だった。

僕ら家族の苦しみなんてよそ行きの

青空が地平へ手を伸ばし、名も知らない鳥が自由に空を飛び、それを嘲るように雲が宙を舞い

その景色の一部として僕は首を絞められていた。


ゴッホならこんな僕を描いてくれるかもな。

誰にも見つけられなかったこんな僕を、、


観覧車の扉が開いた

現世とは異なるタイプの陽光が

カゲルを包んだ


「あったかい、、なんで今まで生きていたんだろう。こんなに気持ちいい世界が向こうにはあるのに」


それが死の恐怖を打ち消すべく、脳内から飛び出した快楽物質が生み出した幻想であることは

カゲルが知るべくもなかった。


サトウカゲルは死んだ

享年15

150センチ 28キロ 黒髪短髪 

くっきりとした二重 色白 

好きなアルバム Mr.Children 深海

好きな漫画 ナルト

尊敬する人 母親


あとがき〜


1話を読んでいただき本当にありがとうございます。私のような胸に空白を抱えた男の稚拙な児戯

を楽しんでいただけたなら身に余る思いです。


よければ⭐️等で応援いただければうれしいです。


2話からも精進しますのでよろしくお願いします。






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