150. 捕まったヴィットーリア

更新再開&Fantia始めました。

お外でないと小説書けない(正確には家だと全然集中できない)ので、場所代をご支援くださるととても有難いです。

https://fantia.jp/leviagran


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 王宮へ向かう一行。

 

 寝ぐせをつけたままのネイは、走りながらもつぶやく。

 

「一体何があったんだ。清廉潔白な母上が捕まるなど」

「わ、分からない。カヴァエレ家もそこまでは分からないって」

 

 その呟きが聞こえていたらしいネロの言葉。シャリーク家と同じ騎士の家系、カヴァエレ家に婿入りした兄よりもたらされた情報のようだ。が、理由までは分からなかったらしい。

 

 ネイは考え続ける。一体何が起こったのだろうと。質実剛健にして清廉潔白な母。自分にとっては厳しくも恐ろしい存在でもあるが、騎士としてはこの上なく尊敬できる人物だ。罪を犯すなど考えられない。

 

 いや、もしや……

 

「赤の爪牙、か?」

「うん。可能性はあるね」


 ネイがつぶやくと、横を走る純花も同意。

 

 これまでに様々な異変を起こしてきた赤の爪牙。彼らが暗躍している可能性は十分にある。

 

「けど、レヴィアとリズ、大丈夫かな。置いてきちゃったけど」


 加えて純花は別の心配もしている模様。

 

 レヴィアとリズ。うなされたまま起きない二人。時間がなかったゆえに放って出てきたのだ。

 

 レヴィアは昨日の出来事を引きずっているとして、リズは何なのだろうか? 愉快すぎて気づかなかったが、そういえば様子がおかしかったような気もする。ネイは少しだけ首をかしげる。

 

 そうして平民街を抜け、貴族街へと入り、王宮の目前まで来た一行。他国の王宮とは意匠が異なるが、これまでで一番豪華さを感じさせる建物であった。


 最もそれが感じられるのは天頂部だ。球体の一部をとがらせたような形の天頂部分は本物の黄金で塗られている。希少度でいえばもっとレアな鉱石はあるが、豪華さを示すとなればやはり金。価格も高く、あの面積を塗るともなれば相当な財力が必要だ。

 

 建物の高さも非常に高い。カルド王国では、貴族位に応じて屋敷の高さを、役職の地位に応じて天頂部の色を変えるという風習がある。当然、最も地位が高い王のいる場所は王都で最も高く作られている。

 

 さらに走ると、王宮の門前へとたどり着く。正面には門番をしている者が二人。走ってきた四人の姿を怪しんだのか、槍を構え、こちらに向かい叫んでくる。

 

「止まれ! 何をしに来た。ここは王のおわす場所である」

「私はネロ。ネロ・シャリーク。妻が、妻が捕まったとお聞きして。一体彼女が何をしたというのでしょうか。リアが捕まるなんて……」

「む、ヴィットーリア様の。……フッ。ヴィットーリア様は王に逆らったのだ。捕まって当然だろう」

「陛下に……!?」


 何やら途中で見下したような目つきになる門番の片方。もう片方は逆に気まずそうだ。

  

 一体何故と思うが、今は気にしている場合ではない。ネイは横から口出し。

 

「待て。どういう事だ。詳しく話してくれ」

「お前たちに話す事など……あれ? どこかで見た顔……あなたは、ネイ様!? 帰ってきていたのですか!」

「む。……おお! よく見ればジーナではないか! 隣にいるのはイルマ! 久しぶりだな!」


 ネイが騎士だった時代、部下であった二人であった。真面目かつ職務に忠実だった者たち。元気そうな二人を見たネイは破顔して喜びを表す。

 

「っと、いかん。再会を喜びたい気持ちはあるが……何が起こったのだ! 母上が王に逆らった!? あの母上が理由もなく王に逆らうなど考えられん!」

「それは……申し訳ない。ネイ様とはいえ、今の状況で話す訳には……」

「な、何故だ! 理由くらい教えてくれてもよかろう!」


 門番たちは気まずそうにしつつも断った。軍規的なものにひっかかるのだろうか。いや、『今の状況』となると、他に知られるとまずいような事をヴィットーリアはしでかしたと予想できる。

 

 一体どんな事を。ネイは思考を巡らせつつも抗議していると……

 

「誰が騒いでいるのかと思えば……ネイか。王都に来ていたのか」

「アリーナ!?」


 国境の町で出会ったアリーナ。馬に乗った彼女が後ろから現れた。どうやら砂漠を渡って帰ってきたばかりらしく、纏っているマントは砂で汚れている。


「アリー。母上が捕まってしまったらしいんだ。それどころか捕まった理由すら教えてくれん。帰ってきたばかりで済まんが、何とかできないだろうか?」

「ヴィットーリア様が? ……成程……」


 顎に手をやり、考え始めるアリーナ。理由に心あたりがあるのか、あまり違和感を感じている様子はない。

 

 そしてそのうち何かを思いついたらしく、馬を降り、門番へと申しつける。

 

「……ふむ、ネイなら大丈夫かもしれないね。通してやってくれ」

「はっ? しかし……」

「ネイは私同等の力を持つ戦士。王の剣として、これほど頼りになる者はいない。力になってくれれば非常に助かる。まあ、ネイの騎士としての側面しか知らない君らからすれば心配だろうが……とにかく、ここは私の顔を立ててくれるかい?」


 彼女はそう言い、門番に退くよう命令。するとジーナとイルマは少し微妙な表情をしつつも、「アリーナ様がそうおっしゃるなら……」と道を開けた。

  

 アリーナの考えはよく分からないが、とにかく今は母だ。ネイはアリーナに従い、王宮へと進む。ネロと仲間二人もそれに続くが……。


「待て。ネロ殿と他一名は遠慮してもらおう」

「えっ!? な、何故だい!?」

「殿方には少々刺激が強い故な。それと、見知らぬ者を通す訳にはいかん」


 ネロは問いただそうとしたが、ここでもめても仕方ないと思ったのだろう。「ネイ、頼んだよ」と不安そうな表情で頼んできた。

 

「任せてくれ。父上と純花はここで待っててほしい」


 父を安心すべくネイは自信を込めた声で言う。そしてアリーナと共に王宮へと入っていくのであった。




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↓こういうストーリーとほぼ関係ない幕間や、「こんなんどやろ?」って思った試作品を書いていきたいと思います。あとは先行公開とか。

https://fantia.jp/posts/2080149

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