第27話 各々の出会い·弐

(あまり日本と変わらない………『カルケル』は世界共通の作りなのかしら)


町中を歩く真緒。見慣れた景色に期待していた分溜息が溢れる。


(どうせなら宿舎に戻ってようかな)


町を歩くのに飽き始めた頃、とある音に身体が反応する。


(この音は………)


音の方に向かうと、そこでは鍔迫り合いが行われていた。


「ありがとう御座いました!」


「いや、こちらこそありがとう。よい気分転換になりました。頑張ってくださいね」


立派な佇まいな男性が汗を拭いてこちらに近づいてくる。


「おや?」


「………。」


「どうしましたか?お嬢さん」


「すみません。素晴らしい剣戯に見惚れてました。」


「これはお恥ずかしい。お嬢さんもやりますか?」


「いいんですか?」


「勿論。君彼女に貸してやってくれるかい」


「はい。伯爵」


(伯爵?)


「これは………フェンシングですか?」


「はい。フェンシングは始めてですか?」


「はい」


「ではこれもなにかの縁。私がご指南いたしましょう」


暫く伯爵と呼ばれる男にフェンシングを教えてもらう真緒。


「飲み込みが早いですね。何か経験が?」


「いえ、特には」


「………そうですか。尚さら素晴らしい。早速一試合してみましょうか」


防具をつけて対峙する2人。


(その佇まいで何もやっていないとは謙遜かあるいは………)


「お願いします。」


「えぇお手柔らかに」


飛び交う刃。周りの人間はあまりの剣戯に圧倒される。


(防戦一方なのは仕方ないけど、この人全然隙が無い)


(数時間指南しただけで私の剣をここまで捌くか。やはり………)



「ありがとう御座いました。」


「いえ、こちらこそ。教え甲斐がありましたよ」


「そんな、貴方の教えが良かったんです」


「相手の好意は素直に受け取った方がいいですよ。山内真緒さん」


「!?どうしてそれを?」


「なーに。東洋・・・それも日本の女性で剣を持った時の佇まい。そして近日開催予定の『クリエイト』に日本が出場する。これらの点から推測したまでですよ。」


「貴方も『クリエイト』に?」


「『ブリタニア王国』所属の『アーサー・スペンサー』です。以後お見知りおきを」


「今日は・・・ありがとうございました。アーサーさん」


「では又明日。真緒さん」


気品溢れる後ろ姿に背を向け、真緒は宿舎へと帰った。




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