第7話 裏組織潜入

 約束の十一時頃になると裏組織のアジトと思われる一軒の家に着いた。ちょうど二階建ての家でとても裏組織があるような大きさではないのだがロッサ達は慎重に家の中の様子を伺い中に入る。すると、家の中には何もなく雑に家具が置いてあるだけで他には何も無く二階に上がるとさらに何もなくとても人が住んでるような気配はしなかった。もう一度一階に戻ろうとすると急に話し声が聞こえてきてロッサ達は戸惑ったがすぐさま息を殺して慎重に一階へと降りていった。


「へっへっへ。あの獣人のガキを持って行ったらボスがえらく喜んでいたな!高値で売れるんだろうな!」


 男の声が聞こえるともう一人いるらしくまた声が聞こえてきた。


「そうだな。オークションまでまだ時間があるんだから傷つけるなよぉ!」


 そんな声が聞こえて来るとエリカがすかさず男共の前に姿を現し剣を抜いた。

 

「貴様ら悪党のやる事は許せん!覚悟!」


 そう言うとあっという間に男共を無力化したエリカ。エリカは男共がどこから出てきたのか疑問に思っていた。


「一体どこから湧いて出たんだこいつらは。」


 そう言うとくまなく部屋の中を調べ直してみると部屋の角にある本棚の様な棚を壁からずらすと鉄の扉らしきものがでてきた。


「こんなところに扉があったなんて・・・」


 扉は簡単に開くことができ階段が下に向かって続いておりどうやら地下に繋がっているようだった。すると何故かグローリが先頭を切って進み始めてこう言った。


「ここから敵の本陣だな!気ぃ引き締めて行くぞ!」


エリカもそれに続く。


「言われるまでもない!」


 そう言うとロッサ達は階段を降りていき薄暗い牢屋の様な部屋がいくつもある通路を通っていくと小さくか細い声が聞こえてきた。


「お母さんどこぉ?助けてぇ・・・」


 その声を辿っていくと牢屋に獣人の女の子が捕らえられていた。貧相な服を着せられ首には枷が付けられており少し苦しそうにしていた。見た目は人間で言うと十歳ぐらいだろうか、これは助けなくてはいけないと思ったロッサはすかさず動いた。牢屋を捻じ曲げ少女の元へ行き首に付けられていた枷を力づくで引きちぎり少女を助けた。


「もう大丈夫だよ!早くここから出よう!」


 そう言うとロッサはグローリに先にここから出て少女を安全な場所でかくまって欲しいと頼むとグローリはすぐさま牢屋を後にした。走り出すグローリは後ろを振り返りロッサ達にこう告げた。


「無事に帰って来るんだぞぉ!!」


 グローリの言葉に反応するよう一言返したが普段は穏やかな口調のロッサだがこの時ばかりはロッサの口調が鋭くなっていた。


「あぁ。」


 ロッサは少し怒っていた。こんなことをする裏組織を許せないと思ったからだ。


 そして更に奥へ進むと何やら広い場所に出た瞬間周りに松明を持った人間の影が多数ロッサ達を囲んでいたのだ。静まり返ったその場所にいると奥の道から大臣らしい豪華な服装の男が出てきてこう言った。


「侵入者は二人か。いいだろう!私のかわいいペットの餌になってもらおうか!」


 大臣は指を鳴らすと奥の道からまたでてきたのは狼のような見た目をした獣でその狼も首に枷が繋がれており赤い石のようなものがはめ込まれていた。ロッサは動物の言葉が分かるので狼が苦しんでいる様子を確認できた。


「苦しぃ・・・助けてくれぇ・・・うわぁぁぁぁぁ!」


 大臣が狼に命令する。


「やれ!あいつらを食い殺せ!」


 大臣がそう言うと枷にはめ込まれている赤い石が光だし狼が襲ってきた。どうやら赤い石がはめ込まれている枷のせいで言う事を聞かせられているようなのだ。ロッサはすぐさま助けたいと思い狼の腹に軽くパンチを入れ気絶させると赤い石を割り枷を外した。そんな一瞬の出来事を見た大臣が周りの人間達に命令した。


「えーい!何を見とるか!お前らもあいつらを殺してしまえ!私は逃げる!」


 大臣はそう言い残すとそそくさと奥の方へ逃げて行ってしまった。逃がしてはならないとエリカがロッサを先に進ませるようにこの場所は私が受け持つと言うのでロッサは大臣を追った。エリカは大臣を追うロッサの背中に向かって言った。


「頼んだぞ!」


 ロッサは大臣を追う。しばらく進むと部屋の扉が見えてきてロッサはその部屋に入った。すると部屋隅でうずくまっている大臣がそこにはいた。ロッサは大臣に向かって言った。


「大人しく捕まるんだ!」


 すると大臣が大きな声でロッサに対して言った。


「そんな簡単に捕まってたまるか!」


 不意を突くようにナイフを取り出しロッサに切りかかったがロッサの身体能力は桁外れなので簡単にナイフを蹴り飛ばし呆気なく大臣を捕らえた。


 大臣を捕らえて広場へ向かうと王都の兵士達が裏組織の兵隊た達を拘束していた。きっと先に離脱していたグローリが呼んだのであろう。


「これで一件落着かな。」


ロッサがそう言うと後ろの方から声が聞こえた。


 「先程は助けていただき感謝する!」


 先の戦闘で戦った狼が感謝を言ってきたのである。ロッサは気にしないでと言うと大臣を兵士に預けその場を後にしようとすると狼が前に出てきてこう言った。


「この御恩を返したいのであります!どうか!どうか私を連れて行ってください!ご主人様!」


 ロッサは急にご主人様と言われ戸惑いながらこう言い返した。


「ご主人様って・・・仮に君を連れて行こうにも体が大きすぎて目立っちゃうよぉ。」


「それならご安心を!体なら自由に大きさを変えられます!」


 狼はそう言うと体を小さくさせ全長四十センチぐらいな可愛らしい姿になってしまったのだ。


「これでいいでしょう?お願いします1連れてってください!」


 そこまでしてお願いされたら断れないロッサは狼に言った。


「まぁそこまで言うなら連れて行っても構わないかな。よし!おいで!僕達の新しい旅仲間だ!」


 狼は嬉しそうにしながらお礼を言った。


「ありがとうございます!ご主人様!」


 そう言うと狼は体を擦り付けて甘えてきた。ロッサは名前がないと困るだろうということで狼にロウガという名前を付けた。ロウガはものすごく喜んでいた。


 そんなことをしていたら外は朝になっていた。騒がしい朝を迎えたロッサ達は国王の元へ向かい無事に大臣を捕らえたことを報告すると国王に感謝され追加報酬を貰うことができ依頼は完了したのだった。


 宿に帰ると疲れたのかすぐに眠ってしまったロッサ。すると妙な現実感を帯びた夢をハッキリと見る。夢の中でロッサに語り掛ける声がした。


「ロッサよ。元気にしているか?」


 ロッサはその声に応えるように口を開く。


「わしじゃよ。わし。神じゃ。」


 ロッサは驚きながら叫んだ。


「か、神様!!」


 そう驚いたロッサに神様は笑い伝えたいことがあるとロッサにこう言った。


「順調に旅は進んでいるようじゃな。しかし気をつけよ!魔王に狙われればただ事じゃ済まん。すでにあの山から移動しておるお前さんに魔王は気づいておる。これからは慎重に旅を続けるのだぞ!」


 そう言い残すと神様は消えていった。急に消えた神様に向かってロッサは疑問を投げかける。


「ちょっと!魔王ってどういうことですかぁ!!」


 ロッサは叫んだ拍子でベットから飛び起きてしまった。まぁいいかと神様の忠告にあまり関心が無かったロッサはグローリと共に王都で旅の準備をしてとりあえず東の国ブラウンに向けて出発しようとしていた時エリカが見送りに来てくれた。


「わずかな時間だったがとても助かったぞ!またこの国へ来たときは訪ねてくれ歓迎するぞ!」


 そう言うエリカにグローリは言った。


「そんなこと言わねぇでお前も旅に付いて来たいんじゃないか?来いよ!」


 その言葉を聞くと少し困ったような顔をしながら言った。


「ふっ。それも良いと思ったのだがな。私は此度の活躍により国王直属の部下になったので国王の側から離れる訳にはいかなくなったのだ!大出世だ!」


 そう言うとロッサ達を見送った。


「達者でな!!」


 エリカに応えるとロッサ達はロウガという新しい仲間と共に東の国ブラウンに向かうのであった。


 歩き始めた時肩に乗っているマロンが話しかけてきた。


「まったく忙しかったね!王都では。」


「そうだね。でも助かった人がいたから良かったよ。」


 ロッサはそう言うと軽快な足取りで進む。ロッサ達にまた新たな敵が現れるのを彼らはまだ知らない。


「ロウガって僕とキャラ被らない??」


次回へ続く・・・






























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