第20話 体育祭② ~真緒と後輩~
昼休み前の最後の競技は、生徒会種目だ。
「あぁ、緊張する……」
競技直前になり、とてつもない緊張に襲われる。
「大丈夫だよ。私がいるからきっと、大丈夫」
真緒が優しい表情を向けてくる。
「そう、だな」
「うん! さぁ、一緒に頑張ろう!」
そしてついに競技が始まる――
生徒会種目は、テニスのミニラリーをした後に、段ボールを飛び越えたり、ネットをくぐるとかの障害物競走みたいなのがあって……二人三脚をして、最後に隠されているシークレットをクリアしてゴールだ。お遊び種目、という事もあってか、かなり盛り上がっている。
「頑張れー!」
クラスの控え席の方を見ると、カラメルや瑞希、祐樹たちも声を出したり、手を振って応援してくれている。
「位置について、よーい……どん!」
という合図と共に一斉にスタートする。
「「よし!」」
俺と真緒は練習通りに着実に進んでいく。ここ1週間しっかり練習したのが効いている、といった感じだろうか。
そして俺らは1位で突き進み、二人三脚のところまで来た。
「やるじゃん、あー君! めっちゃスムーズに来たよ」
「いけるな、これ」
後続を突き放しているし、これは優勝できるのでは……とほぼ確信する。
その後も二人三脚も完璧にこなしながら、最終コーナーを回る。あとはシークレットを超えてゴールするだけだ。
「はいはいはい、ここでいよいよラストっすよ~」
と、聞きなれた後輩の声が聞こえる。小鳥遊だ。
「うわっ、そうだ。こいつらがいるんだった」
緊張で考えてなかったけど、そうだ後輩達がいたんだった……
おい、小鳥遊。そんな怖い目で睨むな。うわぁ、うれしいな! コウハイガイテ。
「はいっ、最後は生徒会からのインタビューに答えてもらいますよ~!」
と、今度は来間が、シークレットの内容について明かす。
てかインタビューとか、変なこと聞くつもりじゃないだろうな。
「じゃあ、まず名前を教えてください!」
「安佐川斗真です」
「久遠真緒です!」
「次にお二人はどんな関係ですか?」
「……友達かな」
と、真緒が答える。いや気まずい! 気まずいから!
「友達、ということで最後にお互いの良い所をお願いします!」
「優しくて明るい所かな」
「同じく優しすぎる所!」
いやこれはこれで気まずいから! 恥ずかしいから!
「ということで1位は、とても素晴らしい関係の、安佐川君と久遠さんペアでした~!」
俺もしっかりと向き合わなくちゃならないな、と再び強く思った。
俺と久遠さんが1位を取り、興奮冷めやらぬまま、体育祭は昼休みに入った。
「あっ、どこで食べる?」
カラメルが食べる場所を相談してくる。
「体育館裏でいいんじゃないか?」
体育館裏は、日陰になっていて人気スポットだ。
「じゃあ私たちは席確保してくるから、斗真は生徒会のメンバー連れてきて!」
「おう、わかった」
そうして、生徒会のメンバーを呼びに行くと
「あっ、先輩。さっきはお疲れ様っす」
小鳥遊が声をかけてきた。
「本当疲れたわ……最後の最後にインタビューとはな。先輩達と来間は?」
「先輩たちはトイレっす。成海は、少し作業してますけどすぐ終わるんで大丈夫っす」
すると後ろから
「せーんぱいっ! お疲れ様でした!」
と来間が驚かせてくる。
「おい、驚かすなよ……まぁほんと疲れたわ。てか勘弁してくれよ。ちょっと気まずくなっちゃったじゃねぇか」
「あぁ、なってたっすね。どうせ、なんか告白の答え保留中とかで迷ってる、ってとこっすかね」
「なにお前、超能力者?」
小鳥遊は本当に察しが良い。
「あれ、どうした来間?」
と、ここで不自然な表情を見せた来間が気になった。
「いえ、なんでもないです! 午後からは先輩も仕事なんでしっかりしてくださいね」
「分かってるよ」
五個から俺は暇なので、生徒会の運営などの仕事がある。
ここで小鳥遊が、
「ちょっとまだする事があって、先輩達と一緒に行くので先、成海といっててください」
と言ってきた。
「よければ手伝おうか?」
「そんなキャラじゃないこと言わないでください」
おい、そんな言わなくてもいいじゃないか。
「分かった。体育館裏な」
「了解っす」
場所だけ伝えて、成海と2人で先に体育館裏に向かう。
「先輩、って案外モテるんですね。」
「だから案外は余計だ。いやまぁ、わかるけどさ」
確かに俺がモテるのは意外かもしれないが。
「そんなことはないですよ。先輩、面白いし。モテそうだと思ってましたし」
「はは、本当かよ」
すると、来間は急に手を繋いできた。
「先輩は今、ドキドキしてますか?」
「っ! そんな事するんじゃねぇよ」
「そのままでいい、って言ったのは先輩じゃないですか」
「ま、まぁそうだけどさ」
確かにそれはそう、だけど。
「私、先輩のこと気になってるんですよね。それだけは、覚えておいてくださいね?」
そう言って、来間はニヤッと笑う。
本当に、人生って難しいな。
俺は違う意味でまた後輩に悩まされる――
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