第15話 カラメルとデート~完結編~

「うん。私はさ、斗真のことが大好きだよ」


 俺の親友は、まっすぐ俺の目を見て言った。


「俺なんかを好きになってくれてありがとう」

 それが最初に思った気持ちだった。


「私は斗真の隣にずっといたい、寄り添いたい、付き合いたい、助けたい……! だから大丈夫」


「カラメル、あのさ」

 俺が率直な気持ちを言おうとすると、


「分かってる。斗真が自分自身について、そして私たちの関係について悩んでいることは理解してる。だからよく考えて、答えを出してほしい」


 カラメルは、もうわかってるからと言うように俺の話を遮る。


「……わかった」


「別に気にしなくていいから。彼女になれなくてもさ、ずっといるつもりだし」


 そういって、カラメルはこの世界に宣言する――


「斗真は、親友で相棒で私の大好きな人! 一生離れないから……神様もいたずらしないでね!」






「おなかすいたね~! そろそろ何か食べようか?」

 時刻を見ると、もう13時前だった。


「そうだな。とりあえず最初は……」


「「うどんだよね」」

 

 やっぱり香川県といえば、うどんだ。安くて美味しい最強の食べ物である。

 ちなみに香川県は本当にうどん屋が多い。普通に市内の方を歩いていると、簡単に5,6店舗は見つかる。



 そんな中で、近くの有名なうどん屋に入った。香川県のうどん屋は、チェーン店が少なくて色んな美味しい店があるのも魅力である。

 俺とカラメルは、かけうどんを注文してレジに向かう。うどん屋のセルフ方式も香川県が発祥だとか。


「やっぱりうどんは、基本のかけうどんだよねぇ」


「いや共感の嵐すぎる」

 本当にカラメルとは志向や好みが合う。


「そういやさ、私の家庭のことなんだけど」

 食べながら、カラメルが話す。


「ああ、その件か。どうなった?」


「私が本音を伝えたら……考えてくれるって。今度も顔合わせっていうか、話し合い? をしてくれるみたいでさ」


「とりあえずよかったな」


「うん。どうなるかはわからないけど、全員が納得出来るようにしたい」

 

 人間は本当に不器用で傲慢な生き物だ。

 自分のことを棚に上げて、他人には理想を押し付けたり、自分の価値観や出来ることを他人に押し付けたりしてしまう。

 ただこれはしょうがない、と最近思っている。自分は苦しんだ、楽しんだ、これが好きなどの感情をぶつけて、他の人にわかってもらいたいと強く感じるからだ。


 瑞希との出会いもそうだった。お互いに行動を起こせなかったのにぶつかって。瑞希はそれで行動を起こして、成功した。

 今回もそうだ。カラメルも行動を起こして、成功した。


 こうして一人、また一人と羽ばたいていく。そんな中、俺はいつも閉じ込められていて――


「斗真、どうしたの?」

 俺が考え込んでいることに違和感を感じたのか、カラメルが不安そうに聞いてくる。


「いや、皆凄いなって。俺なんか、なかなか行動できなくてさ」


「確かに斗真は、自分の理想や他の人と違う事で苦しんでいるかもしれない。変えられない自分が嫌かもしれない。でもさ、私はそれも個性で良い事だと思うんだ。結局人間って、ないものねだりしちゃうしさ。斗真だって色々助けてきたじゃん」


「そうか?」


「瑞希のことも私のことも助けてくれたじゃん」


「それはしょうがない、っていうかどうにかしなきゃと思ったから」


「だ! か! ら! それも凄いんだよ。斗真だって良い所はいっぱいあるんだよ」


「そう、なのか」

 自分では分からないけど、カラメルは褒めてくれて。

 人それぞれ見え方が違って。

 


「まぁ、それは価値観とか考え方の違いがあるから、分からないかもしれないけどさ。出来る限り、斗真のことは助けるから」





 君は、本当に俺の支えになってくれる。





 うどんを食べ終わった後も、有名あ骨付き肉を食べたり、クレープを食べたり……そうして美味しいもの巡りをして、最後に来たのは――



「「ゲーセン来たー!」」


 最後は、俺らが一番よく遊ぶゲームセンターだ。結局、俺らはここに辿り着く。

 

「でも本当にいいのか?」

 カラメルがここを選んだけど、本当に良かったのか、と思ってしまう。


「いいの! それにさ、瑞希と楽しそうだったし……」


「……そうか」

 そういってヤキモチを焼くそぶりを見せるカラメルを見て、思わず俺も照れてしまう。



「私もさ、プリクラ撮りたいもん」


「今までも撮ったのに?」

 ほとんど強引にカラメルに連れていかれた感じだが。


「なんかさ、新しい関係になった記念? みたいな。新装開店というか」


「パチンコ屋か」




 俺とカラメルの場合だと、全てカラメルが引っ張る、というかリードする形になる、カラメルが操作しているのを見ながら、ぼーっとしていると


「カップルコース!」

 というハイテンションの声が聞こえてきた。


「あっ、てめぇ! 勝手にやりやがったな」


「いいじゃん、今日ぐらいさ! わがままにさせてよ?」


「それ、もう禁句にするぞ」


 瑞希もカラメルもわがままになったな……

 まぁ、その方が魅力的で良いと思うけど


「じゃあ、ポーズをとってね! カップルのポーズはこんな感じだよ!」


 こんなポーズでもやってみろや! と煽られているとしか俺には思えないのが。

 画面には色んなポーズが例として表示されていた。


「ひえっ、恐ろしい……リア充コワイ」

 えっ、最近の子ってこうなの? リア充ってこんなんなの? 


「そんなこと言わずにほらほら! ハート作ろ」


「うぅ、リア充コワイ。陽キャコワイ。人間コワイ」




 何とか撮り終え、自分を確認してみると


「うわっ、顔が不自然すぎる。恥ずかしすぎるな、これ」

 緊張や笑顔など、色んな感情が混ざって何だかよくわからない不自然な顔になっていた。


「それも斗真らしいし、好きだよ。あ、面白く加工しちゃお」


「おい、やめろ! 変に俺だけ加工するな!」

 やめろ! 目を輝かせるな! 禍々しくするんじゃない!


「あっ、なんか文字いれよ。何て書こうかな~? あっ、斗真は見ないでね。あとからのお楽しみ」








「はい、これ斗真の分!」

 プリントが終わり、カラメルが俺の分を渡してきた。

 俺は、カラメルが入れた文字を見る。


「ズッ友! か。シンプルでいいな」


「次撮る時は、彼女になった時がいいな」


「カラメル……」

 その本音に何て答えればいいのか分からず、俺は言い淀んでしまう。


「あっ、ごめん! 気まずくさせちゃったね」


「いやそんなことないよ。本当にありがとう」

 素直に気持ちをぶつけてくれるのは、本当に嬉しくて感謝の気持ちしかない。

 

「斗真も色々考える事があると思うし、私以外にも魅力的な子は、いっぱいいる。だからさ、しっかり考えて悩んで……答えを聞かせてね」


「わかった」

 この真っすぐな気持ちに、俺も答えなければならない。

 強く、正しく、しっかりと。




 カラメルは、俺を見て、



「別に気まずくなるとか、そんな気持ちいらないから。私は誰にも負ける気なんてないし。だから、覚悟はしてね?」

 と小悪魔っぽく笑った。


 その姿は今までに見たことないような表情や仕草で――





 とてもドキッとした。

 


 











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る