第19話 剣術闘技会決勝

『それでは、剣術闘技会決勝! 開始!』


カルエトの開始の声を聞いてセレストが1番に距離を詰めてくる


セレストのまだ腰に差したままのダインスレイヴを確認してセラスタの死角を狙うアレストの方に意識を向けた


(アレストを自由にすると面倒だな……)


騎士団で誰よりも遠距離戦に優れたアレストが自由に動けるとセレストとノルンの援護をされて厄介だからアレストを早めに退場させたいがアレストも一定の距離を保っていてセラスタが距離を詰めることができない


セレストが距離を詰めていつでもセラスタを攻撃できる位置にいる

ノルンもセレストとは反対の方向の位置取りをしている

その2人の後ろで常にセラスタの死角を狙っているアレスト


「まだ全員間合いの取り合いしてるったい」

「団長かなり辛い試合になってるじゃん」

「団長さんは1番にアレストを落としたいやろうけどその一瞬をセレストとノルンが見落とす訳が無いんよな」


隊長席で試合を見ていたポルト達が苦笑しながら見ていた


全員が一定の間合いを保っている膠着状態がしばらく続いたが、一発の銃声が膠着状態を壊した


「お前から仕掛けるのかよ!」


セレストから仕掛けると思っていたセラスタがアレストが鳴らした銃声へ意識が割かれて反応が少し遅れる


その一瞬の反応の遅れを見逃さずにセレストがダインスレイヴを抜き紐を狙う、ノルンも足元を狙って2人が間合いを詰めてきた


しかし間合いを詰めてきた2人の方へセラスタが近づいた


(ここで間合いを詰めてくるのかよ……!)

(間合いが完全にズレたのじゃ……!)


セラスタが近づいたことで狙いがズレる

2人が改めて間合いを取ろうとしたが、すかさずセラスタがセレストとの間合いを詰めた


(まずい……!)


反応が遅れて紐を取られそうになったが、紙一重でセラスタとセレストの間を銃弾が通った


セレストと距離を離したがノルンがすぐに追撃をしてくる


ノルンの拳を受け流しながらアレストとセレストとの距離関係を把握してノルンをセレストの方に投げ飛ばした


投げ飛ばされたノルンをセレストが受け取た隙にマントで隠してた暗器をアレストの方へ向かって投げた


投げられた暗器を銃身で弾いてすぐにセレストとは逆の方向に位置を変えようとしたがセラスタがもう一度投げた暗器がアレストの紐を掠めた


「危ないな!」


『アレスト副団長の紐は切れてません!』


セレストとノルンへの注意が少しアレストに向いていたおかげで2人にすぐさまセラスタは間合いを詰める


セレストが横に振ったダインスレイヴの切っ先に足を乗せてセラスタの後ろにいたノルンの両肩を掴んでセラスタが間合いをとった


『ノルン隊長紐を取られたため敗退!』


カルエトの声を聞いてノルンが慌てて自分の左腕を見た


「さっきノルンちゃんの肩を掴んだときに取ったか」

「俺もお前も見えてなかったな」


ノルンが会場を後にするのを見ながら双子が話し合っていた


アレストがセレストの方へ視線を向けて聞いた


「セレスト、いい?」

「いいぞ。アレスト」


短い会話をしてセレストがさっきよりも離れた間合いを保った


アレストが銃の照準をセラスタの足元にした


「あいつ団長の足狙ってんのか?」

「見た感じそうったい」


ゼーストとマカトが話しているのを聞いてポルトが小さくため息をついて呟いていた


「3人とも本気やん……あんま手の内晒してほしくないねんけどなぁ……」

「どうしたんだよポルト 腹でも痛ぇのか」

「まだ団長さんは剣を抜いてへんな〜って言っただけやで」


ポルトのため息を聞いてゼーストが腹を気にした

ポルトは薄っぺらい笑顔で返事をした

返事を聞いてゼーストは詳しく聞くことは無く会場の方に視線を戻した


アレストがセラスタの足元を撃って、セレストが距離を詰める

アレストはセラスタの死角に移動しながら正確にセラスタの足元を撃つ


セレストの攻撃を防ぎながら自分の死角のアレストを視界の端に捉えられるように動きつづけていた


「あれだけ動きつづけている団長の足元を正確に狙えるのはアレストさんだけったい」


マカトがアレストの射撃技術の凄さを改めて確認していた


アレストが会場の中央に向けて一発の弾丸を撃ち込んだ音を聞いてセレストがセラスタから距離をとった


セラスタがアレストに向けて暗器を投げたがセレストが弾く

暗器を投げたと同時にアレストとの距離を詰めようとするセラスタをセレストが足止めしていた


弾かれて宙に舞う暗器が地面に落ちる音が響いた瞬間アレストが会場の中央に撃ち込んだ弾丸に向けてもう一発弾丸を撃ち込んだ


会場の中央の弾丸はセラスタの方へ弾かれた


「屋外で跳弾!?」

「団長相手に跳弾を選択したのもだけど、準備が出来るまでアレストさんに近づかせなかったセレストさんも凄いじゃん」


マカトとピラーサがお互いに顔を見合わせて目を輝かせながら話していた


アレストとセレストが同時に動いた


アレストが今まで打ち込んでいた弾丸をランダムに撃って跳弾させる

セレストが距離を詰めて攻撃する


「普通だったら即死じゃん……」

「団長だからまだ続いてるったい」


双子の阿吽の呼吸での猛攻を見てピラーサが青ざめて呟いた言葉にマカトも頷いて同意した


(そろそろ手だけで捌くのは面倒だな)


跳弾を避けながらセレストの剣を手で受け流すのを面倒だと思ったセラスタが剣を抜いたのを見て会場がどよめいた

隊長達も剣を抜くとは思っていなかったのか驚いた表情を浮かべた


『おっと! セラスタ団長! ついに剣を抜いた!』


剣を抜いたセラスタを見てアレストとセレストは嬉しそうに、それと同時に眠れる鬼神を起こしてしまったのを後悔するように笑っていた


「2人とも楽しませてくれよ?」

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