第5話 ゲーマーとピエロ

画面が光り、入力切り替えと共に文字列が表示。


『大乱戦☆スカッとブラジャーズ』、様々な女性キャラが身に付ける下着を振り回し戦う2D格闘ゲーム。身に付ける下着の種類、カップで技が違っており戦術は多種多様。このゲームの人気はすさまじく、公式大会も開かれているほどだ。


「俺はDカップ黄色下着の黒ギャルちゃんで行くぜ」


 キャラクターを選択すると『あーしを選んでくれてありがとね♥』と画面に向かって黒ギャルちゃんが投げキッス。正直、コレ見たいがためこのキャラ選んでる。使えるのかって? 愛ですよ、愛。


「ボクはAAカップ水色下着のツンデレちゃんな」


  翔が選んだのは小柄で自らの胸を気にしてる感じが印象的な女の子。『べ、別にあんたのためじゃないから!!』と、キャラクター選択時のボイスのツンデレっぷりに心がうるおっていくのを感じる。


「さて、今日こそは……!」


「その駄肉を削ってやんよ!!(怨嗟)」


 なぜか翔が恨みがましい目で黒ギャルちゃんに吠えた。


 『ファイト!!』

  戦いの火蓋が切って落とされる。


『おらー!』


 俺が操作する黒ギャルちゃんは一撃必殺のパワータイプ。スピードに欠けるが、持ち前の高い耐久力のごり押しで一発当ててしまえば充分に勝ちを狙いにいけるキャラクター。


『当んないわよ!!』


 対して翔の操作するツンデレちゃんは、スピード特化。その圧倒的な手数で攻めるキャラだが、攻撃力が極端に低い。扱いの難しいピーキーなキャラクターではあるが、翔のゲームセンスとテクニックによって無類の強さを誇っていた。


「ぎゃはははは!! その胸についてる重りのせいで攻撃が当らないねぇ!?!」


 なんか悪役みたいになってる翔。


「お前は、巨乳に親でも殺されたのか……?」


 くだらない会話を挟みつつ、ゲームはさらに加速してゆく。両者とも縦横無尽に下着を振り回し、一歩も譲らない。


『負けを認めたらどう!?!』


 ツンデレちゃんが叫ぶ。


『あーしだって、負けたくない!!』


 黒ギャルちゃんの根性補正が発動。

 バトルは佳境かきょうに入る中、ふと翔に話そうとしていた事を思い出す。


「そういえば今日さ、いきなり出来た許嫁の子に媚薬を盛られてな」


「FA●ZAのエロ漫画の話か?」


「……」


 まぁ、そう思うのも無理は無い。

 字面だけ見たら、俺だってそう思う。


「まぁ、これがマジでさ」


「……お前、変な薬とか使ってないだろうな。ボクに勝ちたいからって、そこまでするかよ」


 おっと、予想外の勘違いをされてますねぇ。

 何か証拠になりそうなものは……


「あ~、そういや連絡先交換してなかったな」


 証拠にスマホにあるLI●Eの友達欄でも見せようかと思ったが、交換できてなかったことを思い出す。


「はは~ん、さてはモテなさすぎて童貞の妄想こじらせちゃった感じか? 可哀想に、ピエロな与太郎きゅ~んWWW」


「めっちゃあおるやん……」


 そこまで言うなら、明日にでもリリーにお願いして写真を撮らせてもらおうかな。


『とどめよ!!』


 必殺技のサウンドエフェクトが響く。


『まだ、あーしやれるし……』


 ツンデレちゃん怒号のラッシュに、ついに黒ギャルちゃんが押し巻けてしまった。


「うっし、ボクの勝ち~」


「くそ~、負けたぁ」


 こんな感じで、いつも翔には勝てていない。でも、


「今回は中々良かったぜ。上手くなったじゃん」


 そう言ってはにかむコイツの笑顔に、心が軽くなったような気がした。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る