失踪した親父が異世界に召喚されて王様やってた。一人じゃ寂しいからって無理やり連れて来られたのだが、扱いが酷過ぎる!

夢呼

1.プロローグ

「・・・ちゃん、・・・健ちゃん」


誰かが俺を呼んでいる声が聞こえる。

聞いたことがある声。知っている声だ。


俺はゆっくりと目を開けた。


「あ、健ちゃん、健太郎、目、覚めた?」


まだ定まっていない視界に人影が見える。

だが、俺は視界だけでなく、頭もぼやけているようだ。まともに働かない。

ぼーっとその人影を見つめた。


「大丈夫? 気持ち悪い?」


その人影は俺の顔を間近に見下ろしていた。

非常に心配しているようだ。少しオロオロしている。

それを見ているうちに、少しずつ視野と思考がはっきりしてきた。

焦点を合わせようと、その人影を一心に見つめた。


「・・・親父?」


人影は明らかにホッとしたように、胸を撫でおろした。

そして、俺の手を取った。


「うん! そうだよ! パパだよ、お父ちゃんだよ! ああ、良かった! もう心配したよ、なかなか目を覚まさないから。お父ちゃん、薬の量を間違えたかと思っちゃったよ~」


「・・・薬・・・」


ああ、思い出した。

そうだ、んだ。実の父親に! 薬を!


俺は怒りのあまり、親父の手を振り払おうとしたが、力が入らない。

俺が放す前に、親父の手は俺から離れた。


「水飲む?」


親父は俺の傍から離れ、傍にある簡素な棚に向かった。

そこにはピッチャーとグラスが置いてある。


「・・・親父!」


俺は起き上がった。

だが、すぐに眩暈に襲われ、また倒れ込んだ。


「大丈夫かい? 健ちゃん? きっと、まだ薬が切れてないんだね。もう少し横になっていなさい」


俺は頭を抱えたまま、親父を睨みつけた。

親父はさっきまでオロオロとしていたくせに、なぜかとても満足そうな顔をしている。

俺が倒れ込んでいるベッドの脇に来ると、


「いやあ、ごめん、ごめん。そんなに強い薬と思ってなかったよ~。とりあえず、水でも飲んで」


そう言って、サイドテーブルに水を入れたコップを置いた。


「でも、無事に来れて良かった!」


親父は満足気に両手を大きく広げた。


「健太郎! ようこそ、異世界の我が国、ヨナ王国へ!」


ああ、誰か、このおっさんの後頭部を蹴り倒してくれ!

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