第6話

 裏組織。

 どんな世界の、どんな文明であれ、そこに住まうのが人間である以上……闇と言える部分は必ず出てくる。

 僕はその一つである犯罪行為を好んで行う裏組織へとやってきていた。


「一切裏とは関わろうとしないラインハルト公爵家が一体何の用だい」

 

 数ある裏組織の一つ『金の番人』のトップ、鋭い目つきを持つ飄々とした男、ウォルフと小さな机で向き合い、僕は椅子に座っていた。


「確かにラインハルト公爵家は裏とのつながりを持っていませんね」


 この国の王族も、ラインハルト公爵家以外の三つの公爵家も、他の貴族たちも等しくどこかしらの裏組織との接触を持っているものだが、唯一ラインハルト公爵家だけは一切裏とのかかわりを持っていない。

 ラインハルト公爵家は自身の傘下にある大量の商会を使って裏組織のまねごとをするのだ。


「どういう風の吹きまわしだ?」


「大した話じゃありませんよ?僕の父上が神童と言われる子供に自由にやる権利と商会を渡し、お金の稼ぎ方を学ばせているだけの話です。僕は何をしても良いと言われた……それ故に僕は意味の分からないラインハルト公爵家の制約なんて無視して、当たり前のようにあなたたちの力を借りに来ました。こちらの事情はわかりましたか?」


「……これ以上にないほど信用出来ないな。まず神童にしても年取っていなさすぎだろ、おめぇ」


「まぁ、そうでしょうね」

 

 僕を見て、ラインハルト公爵家という公爵家を知って、僕の言葉が本当であると信じられる人なんていないだろう。

 真実はあまりも摩訶不思議すぎた。


「ま、そんなの関係ありませんね。やってほしいことは後で送ります。これからよろしくお願いしますね」


「何決定事項のように話していやがる」


「あぁ……否の答えはありませんよ?その理由はわかっているでしょう?」


「ちっ」

 

 僕の言葉を聞いたウォルフは舌打ちを一つ。

 どんな裏組織であったとしてもラインハルト公爵家がその組織の犯罪行為を咎め、逮捕に走られたら止める力を持たない。


「決まりですね」

 

 僕は立ちあがる。

 

「先ほども言ったようにやってほしいことの詳細は後で送ります。あなたたちは僕に言われたことを義務的にこなすだけでいいです」


「言っておくが……やべぇ案件には関わらねぇからな?あくまで金が稼げそうだから乗っただけだ。あんたらが裏組織にでも頼らなくいけなくなった案件とか絶対にお断りだからな?」


「それにご安心を。僕が強制的にあなたたちを裏組織じゃない……普通の一商会の傘下の組織へと変えるので。金儲けを第一とするあなたたちと接触したのにもちゃんとした理由があるんですよ?」


「は?」

 

 僕の言葉を聞いたウォルフは理解出来ないと言わんばかりに首を傾げた。

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