第3話

 突然父上に任せられた商会がある帝都へとやってきた僕はその商会の頂点である商会長の部屋で頭を抱えていた。

 僕の目の前に広がっているのはこの商会に関する資料である。


「なんでこんなことになるんだ……ッ!クソゴミじゃん!これぇ!!!!!」

 

 人の姿をしたろくでなしである父上に押し付けられた商会は既にボロボロで、いつ倒産してもおかしくないような状況だった。

 主要な販売品は他の商会にシェアを奪われ、ほとんど売り上げなし。

 商品はどれも安価で、ほとんど利益なし。

 明らかに無駄としか言えない人たちを雇っていることで発生する高額な人件費。

 借金大量。未来への投資すべて失敗。馬は既に馬刺しとなっている。


「終わっている……ッ!終わっているよ……ッ!」

 

 馬がないのはダメだろ!?どうやって商品を買って売るんだよ!?

 商人の行動範囲……王都のみって舐めているでしょ!?


「詐欺だよ、詐欺。そこそこの大きさって何?無駄に人が多く、商品の安さに貧民が群がっているだけじゃないかァ!」

 

 父上は言った

 そこそこの大きさの商会である、と……違う。

 これはそこそこの大きさの不良債権、粗大ゴミだ……これを三年以内に帝国有数の 大商会にするってどんな罰ゲームだろうか?


「ごめんなさいぃ」

 

 僕の前で。

 商会長である女性が僕に頭を下げる。

 

「ほんとだよ……この件に関して言えば本当だよ!絶対に許せない……」

 

 輝くような金髪に緑色の瞳を持ち……少しだけ耳の長い女性。

 エルフと人間のハーフである女性、リヴィアを僕はジト目でにらみつける。

 

 この商会の良いところなんて商会長が美人で目の保養になることくらい……でも、正直に言ってここまで無能だと目の保養になる云々よりも先に怒りの方が先に沸いてくる。

 こいつがもっとマシな人間だったら僕がこんなに頭を抱える必要はなかったのではないか……?


「何をどうしたらこんな不良債権が出来上がるのか……言っておくけど、僕はここを大商会にしないといけないの。無理やりにでも変えていくし、否は言わせないよ」


「わかりました」

 

 僕の言葉にリヴィアは頷く。

 落ち目の……限界ギリギリの商会の商会長にラインハルト公爵家の言葉に否を告げる権限などない。


「まずは手始めに大量の職員を解雇していくから」


「なっ!?それは!」

 

 僕の言葉にリヴィアが反発の声を上げる。


「否とは言わせない」

 

 そんなリヴィアに僕ははっきりと宣言し、視線を書類の方へと移す。

 どんどん必要な人材、不必要な人材で人を分けていく。

 まずはこの大量にいる必要ない職員を何とかして、高額な人件費をなんとかしなくてはいけない。

 

 ゴミのような不良債権を押し付けられた……だが、三年以内で大商会にするのも不可能ではないだろう。

 僕は父上の『自由にやる権利』という言葉を頭に浮かべながら戦略を練った。

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