第19話

「おうううっ」


 と、数年前の依頼であった話をコウがすると由貴はオロオロと人目を憚らず泣いていた。

「泣くな、泣くな! 恥ずかしいだろ」

 コウは泣きじゃくる大男、由貴を宥めるのに必死だ。

「でもまぁ俺の話だけでこんなにも泣いてくれるだなんてなぁ……」

と誇らしげでもあるが。


「ちがうわい、サラダの玉ねぎドレッシングが辛くて泣いてるんだっ」

「強がるな……はぁ。てか唐揚げ、俺の分まで食べてない?!」

 すると由貴は目を泳がせた。

「少し頂戴した……」

「少し? これでか……意味がわからない! 返せ!」

「うるさい! 自分で作ったわけじゃないのに!」

 由貴はコウに突っかかるとコウも応戦する。

「この! お前はどこまでも貪欲だな。だから俺らはこんな能力貰っちまったんだー!」

「なんだよ! その能力で飯食ってるのはどこのどいつだ! それにもし僕が命乞いしてなかったらここには生きて……」


 二人は気づいた。

 周りの人の視線だけでなくてファーストフード店の店員の視線も。

 男の店員が

「……お客様、そちらは当店の商品ではありませんよね?」

 とタッパーに入った唐揚げを指差す。微笑みと共に。


「……あ、そのーですねー。なぁ、コウ」

「そ、そうだなー。由貴……」

 二人は目を合わせて笑う。


「大声でお話しされると周りの方にも迷惑がかかりますので、……退

 最大限のスマイルで言われた二人。

 お化けや幽霊よりも生身の人間が怖い、これはまさしくこのことだ。

 この店員の背後は何かドス黒いものが渦巻いている。守護霊でも背後霊でもない。ただ怒りに満ち溢れていただけである。


「すいませんでしたぁあああああ!」

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