1-4.美学

1-4.美学


マーガレットは車を追い抜いて、ジェニファーの隣へ立つ。

『あ、マーガレット』

ジェニファーは小首を傾げてマーガレットを見た。

『久しぶりね』

マーガレットは言って、懐からナイフを2つ出した。

キッチンナイフ。

マーガレットのトレードマークと言ったところか。

左右の手に1本ずつ持ち、群がって襲いかかってくるゾンビどもを斬り裂く。

1体は首が飛び、1体は肩から胴を斜めに切り落とされた。


『調子はどう?』

『別に。普通だよ』

二人は世間話をしながら、次々にゾンビどもを倒してゆく。

『棺に入って眠ってるのが?』

『起きてる方が苦痛だよ』

ジェニファーはマチェットを振った。

マチェットの先に突き刺さっているゾンビを、群がるゾンビどもに叩きつけてなぎ倒す。

突き刺さったゾンビはすでに頭と手足が折れてなくなっている

『折角蘇ったけど、いいことはないな』

マチェットの先に突き刺さっていたゾンビの胴体がすっぽぬけて飛んでいった。

『あ…』

ジェニファーは頭を掻いた。

『ま、代わりはいっぱいあるからいいか』


ズン。


と目の前のゾンビにマチェットを突き刺す。

『いつもながら雑な戦い方ね』

『えー、倒せたらいいじゃん』

『美学が必要よ』

マーガレットは頭を振った。

『こんな風に』

キッチンナイフをひと振りし、ゾンビの喉元を斬り裂く。

首はすっ飛ばず、皮一枚で残った。

ぶらんと垂れ下がる。

『だから?』

『……』

ジェニファーはまったく興味ない様子である。 

マーガレットは黙り込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る