湯原良 高校1年

第壱話 標辺守要

 湯方良さんが幽原村未来台へ越して来たのは、高校へ入学する1週間前だったという。未来台は量産型の一戸建てが建ち並ぶ新興住宅街であるが、田畑を整地し建設されたため、古くからある集落がすぐ近くに在る。


 良さんの家の裏に建っている標辺神社しるべじんじゃも1,000年以上この村を見守り続けており、古くからの住民は皆信仰している。標辺神社神主である標辺守幸市しるべもりこういちの一人息子、標辺守要しるべもりようは良さんと同い年で同じ高校へ通っていたそうだ。


「ここに引っ越して来た、湯方良と言います。よろしくお願いします」


初対面、良さんがそのように明朗な挨拶をしたにも関わらず、


「こちらこそ、宜しくお願いします」


と、氷山の如し冷静さで返答されたように、良くも悪くも、基本的に何事にも動じない少年であったらしい。

 良さんの手記にはめっぽう悪い面が強調されて描かれているが、最後の最後まで彼は手記に登場している。

 これからの話の多くが良さんの手記に基づいており、尽力しているが良さんの主観を完全に取り除ことができていないことを前もって記しておく。

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