義妹の意外な才能

 夢香は歌のセンスがある。

 心地よいシャウト、美声が続き俺の心さえも癒してくれた。実に小気味よい。


「さすが夢香。歌、めちゃくちゃ上手いな」

「そ、そんなことないよ~」

「歌い手とか目指せるんじゃないか?」


「それは言い過ぎだよ、お兄ちゃん。ていうか、夢香じゃ……無理だよぅ。ステージとか立てないし」



 滝のように泣く夢香。

 自身が極度の陰の者だからと諦めていた。だが、今の時代ならやりようはいくらでもある。



「いいか、夢香。今は動画投稿サイトが充実しているんだ。ヨーチューブとかテックタックとか色々あるだろ」


「あ~…」



 あんまり気乗りしない(?)表情の夢香。いや……これは、もしや。


「やってたり?」

「うん、実はテックタックはやってる。ショート動画で投稿できるからね」


 スマホを見せてもらうと“いいね”の数が――ん!?


 よ、四十万……。

 ご……五十万とか……物凄い数だった。


「え、夢香ってテックタッカーだったのか。知らなかったぞ」

「歌とダンスも好きだからね。踊ってみたも多いよ~」

「これは驚いた。才能ありまくりじゃん」


「ごめんね、ナイショにしてて。そんなつもり……無かったんだけど」

「いや、そういう趣味なんだろ。理解してるよ」

「ありがとね、お兄ちゃん」


「でも、こう人気だと変なヤツに絡まられたりしないのか? そこが心配だよ」

「そういうのは返信してないし、交流はほとんどしてないからね」



 なるほどな。ちょっと複雑である反面、誇らしくもある。夢香は、ネットではこんなに認められているのだから、兄として鼻が高い。


 俺も何かやってみようかな。



 ――そうして、二時間のカラオケはあっと言う間に終わった。



 料金を精算してカラオケ店を出ると、周囲はもう真っ暗。

 時間は二十時となっていた。


 やっべ、遊び過ぎた。


「買い物して帰ろう」

「りょうかーい」


 俺は思い切って夢香の手を繋いだ。

 意外すぎたのか、夢香はビックリして固まっていた。

 だよね。俺からこう積極的に触れ合うことはほとんどなかったから。でも、これからもっと距離を詰めていきたい。

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