キス寸前のキャロリーメイトゲーム

 大切な義妹を守護せねばと、俺は決意を固めた。

 そうしていると夢香が俺の肩を叩いた。


「ねえねえ、お兄ちゃん。ポッケーゲームならぬ、キャロリーメイトゲームしようよ」



 細身タイプのキャロリーメイトを口に咥え、誘ってくる夢香。……こんなところでポッケーゲームとか! てか、長さがそれほどない。


 これ……数噛みすれば直ぐにキスじゃん……。


 このタイプのキャロリーメイトは短いので、噛んで飲み込むのに時間がそう掛からない。となると、五秒もあれば接吻だ。


 って、ゲームどころの話じゃないッ。



「だ、だめだ。普通に食え」

「ええ~。お兄ちゃん、本当は夢香とキスしたいんでしょ?」


 大きな瞳を向け、俺に期待を寄せてくる。

 そりゃ、男の子ですから……興味はある。それに、夢香は妹とはいえ……義理だ。付き合うこと自体は問題ない。


 だから……。


「い、いいのか。俺なんかで」

「も……もちろんだよ。夢香は……お兄ちゃんじゃなきゃ……嫌だもん」


 声がどんどん小さくなっているな。

 聞き取れないほどだ。


 けど、夢香の言いたいことはなんとなく理解できた。


 そうだな、あの男の件もある。

 夢香を誰かに取られるくらいなら……。


「分かった。やってみるか」

「やった! じゃあ、端の方を咥えて」

「お、おう……」



 はじめての行為なので、無駄に緊張するな。

 だけど今だけは羞恥心をゴミ箱へポイッして、無心になった。そうだ、無心になれ俺よ。


 ゆっくりと顔を近づけてキャロリーメイトを口に咥えた。


 夢香と対面して――俺はドキッとした。


 こんな距離感で顔を近づけ合ったのは多分、初めて。



 ……やば、夢香ってこんなに睫毛まつげ長いのか。瞳も宝石のように綺麗だし、肌もツヤツヤでモチモチしている。


 心臓の鼓動が早くなっていく。


 夢香ってこんなに可愛いのか……!


 などと油断していると夢香がキャロリーメイトを食べ始めた。俺も同じように口を動かすが――あッ!?


 キャロリーメイトが中央からポキリと折れて、キス寸前に……!

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