樅の木

街路樹の彩色に気を取られ

足並みが不揃いになった


恋人達の笑顔は溢れて

歩道は温かな息が流れていく


君が奏でるシベリウスの調べは

凍えた心に灯りを宿す


もみの木を彩るオーナメント

今にも御子みこの息吹が包むように


魔と間の矢を射抜いて

君の生誕を記して 日は走る


新雪は積もり重なる


世界が眠りについた頃

大空を仰いであの鈴の音は


大きく温かい手で

幼子の傍にそっと恩恵は寄せられる


世よ君よ 張り詰めた怒りを

優しく溶かしておくれ

世よ朝よ 新しい世界の幕開けに

祝杯の灯火をかざしておくれ

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