アイドル視聴者投票で1位に選ばれた俺!目立たず息を潜める

@oraganbaru

第一話 なんで俺?

 現在の時刻は23時。

 ここは、日本で有名なライブ会場の中。

 本来は多くの人が、賑わっているのだが……

会場の空気は引き締まっている。

刻々と時間が迫っていく中、会場全体が一体化となり胸の前に両手を握りしめて、これから発表される内容に喉をゴクッと鳴らして待っていた。


 今年12月末から行われることとなった

特大イベント、男性アイドル視聴者投票。

年齢は、15歳以上であれば誰でも参加出来る。

参加方法は、利用者が累計1000万人以上突破しているアイドルの中では最大級のアプリ掲示板「"神のアイドル"」通称("神ドル")に一番自信のある自撮り写真をアイコンに貼り付けるだけと非常に簡単である。

一人一票のみ投票ができ、票数が多い順に上位になっていくシステムだ。

この投票で1位となった者は、どのアイドルグループにも加入できる権限を持つ事が出来ると言われている。

しかも、投票数は結果発表当日まで公開されない為、参加者は誰一人として呼ばれていない。


今最も人気が出ている、"ムーンスター"の4人グループのリーダーである大野翔おおのかけるが現在残っているランキングの1位を発表しようとしていた。



「大変……長らくお待たせしました。さぁ、最後の1位の発表です。」


ステージの真ん中に位置し、煌びやかなオレンジ色の衣装を見に纏っていて、まつげが長く肌が白く透き通っており、極め付けに初々しく見える笑顔に会場の女性達は目がハートになっていた。


「第一回男性アイドル視聴者投票で1位となったのは…………」


 発表の瞬間、会場がドット湧き拍手の音や歓声などに包まれていた。






 丁度その頃、漆 修也うるし しゅうやは一人で廃墟しているホテルの心霊スポットを巡っていた。冬場というのもあり、温度が氷点下に近く、寒さと恐怖と震えと心の奥底に感じるドキドキを楽しんでた。

細身ではあるが、なかは引き締まっており筋肉質な為、上半身はスウェットに下半身ショート

パンツと薄着でラフな格好をしている。


(誰もいない空間は最高だな!)


修也は都会に住んでおり、通勤や帰りプライベートに遊びに行く時など、とにかく人混みの中移動しており、たまにふと一人になりたい事がある。謂わば、田舎に泊まるような感覚と似てて、ストレス解消やリフレッシュをするような感じだ。

 普段でも人影は少ないが、特に夜のこの時間帯に見る事はない。

足場には、小さい石ころの山や瓦礫などが行手を阻むが持ち前の運動神経で軽々と乗り越えていく。


(ふふっ……楽しい)


 暫く、建物の中を巡って満足した後、神ドルのアプリを開き、先程撮った写真を5枚程投稿した。その内の1枚は自撮り写真も含まれている。

趣味を誰かと共有したくて、まだスマートフォンの扱いの慣れていない俺は、姉にこのアプリを教えてもらった。

 投稿ボタンを押した後に、1分も経たないうちに通知ボタンの音が鳴り響いている。

いつもの事だ。

恐らく、投稿にいいねが押されているのだろう。

 家に帰ってから見ようと思い、鞄からジャンバーを取り出しフードを被った。

 建物から出た矢先、200メートル先の電柱辺りに大勢の人だかり、軽く100人は超えており、廃墟の方向へ一目散と走ってくる。


状況が読めず、怖くなった俺は咄嗟に廃墟に近くにあった太い木の木陰に隠れ、人がいなくなるまでその場をやり過ごす。


(最近心霊スポットって流行っているのか?)

前回の時も今回の程ではないが、多くの人数が俺が建物から出るタイミングで集まってきたのだ。その時も同じように木陰に隠れたのだが……。

 心霊スポット巡りという同じ趣味を持ってくれる人が増えてくれるのは嬉しいが、それぞれの廃墟の空間で一人になれないのは、少し嫌だなという気持ちが互いにせめぎ合っている中、スマートフォンから振動を感じた。


画面を見てみてると、幼馴染の黒影 花くろかげ はなと表示されていた。

応答ボタンを押して対応する。

もしもしという言葉に続き、花が焦りを抑え切れない乱れた声色だった。


「しゅう、何処にいるの?」


「心霊スポット巡りを終えて帰ってるとこ」


「はぁ………今SNSとテレビがしゅうの事で埋め尽くされているよ」


え?という言葉と同時にインターネットのアクセスランキング急上昇ランキング1位に

「漆 修也」や「漆 修也 アイドル」など検索上位5位までは全て俺の名前関連で独占されていた。


(一体……何が起こっているんだ?)


「ねぇ、しゅう今大丈夫なの?」


電話越しに心配されている声がするが暫く俺は放心状態のまま固まって動かなかった。

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