第7話 冒険者登録2

「試用期間ですが、普通に依頼をこなしていけばクリアできます。だから、安心してください」

「そ、そうなんですか……?」

「はい。新人の冒険者でも、問題なく達成できる程度の難易度になっています。だから、大丈夫ですよ」


 失敗したら二度と冒険者になれないという話を聞いた僕が、よほど深刻そうな表情をしていたのだろうか。受付の女性が慌てて補足説明してくれる。彼女の話を聞いて、少し落ち着くことができた。


 ちゃんと依頼をこなせば、大丈夫なのか。それなら、僕にも出来そうだ。


「試用期間をクリアするために達成する必要がある依頼の数は、どれぐらいなのですか?」

「申し訳ありません。詳しい内容について、お教えすることはできません」

「そうですか……」


 それは当然か。まぁ、仕方ない。とにかく、まずはやってみよう。冒険者の登録の手続きが無事に済んだことだし、すぐ依頼を受けてみることにする。


 その前に、これから拠点にする宿屋を探さないと。旅の荷物を置いて、一度落ち着いてから冒険者の活動を始めたほうが良さそうだ。


 王都は広いから、宿屋も多いだろう。その中から、なるべく安い宿を見つけたい。これから長く滞在することになるだろうから。この王都で冒険者の活動をするため。拠点選びは慎重に行わなければ。


「あの」

「あ、はい?」


 冒険者の登録手続きも終わって、受付を離れようとした瞬間。僕は、受付嬢に話しかけられた。まだ、何か話があるようだ。


「もしかして、これから宿を探す予定でしょうか?」

「はい、そうです。拠点にする宿を、これから探しに行こうと思っていました」

「それなら、ギルドがオススメしている宿を紹介しましょうか? 冒険者が安く泊まれる良い宿を、いくつかご案内できますが」

「いいんですか? お願いします」


 願ってもない申し出だった。断る理由なんて何もないので、すぐお願いすることにした。ギルドでは、そんなサービスも行っているのか。


「そちらの宿は冒険者の方なら、特別割引価格で泊まることができるんですよ」

「そうなんですか。それは、お得ですね」


 教えてもらった金額は、非常に安かった。そんな値段で泊まることができるのか。


「でも、試用期間の僕でも割引価格で泊まることはできるのですか?」

「大丈夫ですよ。その冒険者の証明書を提示していただければ、割引価格になりますので」

「なるほど、これで」


 先ほど受け取った証明書を改めて、手元で確認してみる。これは失くさないように注意しないと。さっきも思ったけれど、より一層強く注意する。


「はい。それから、冒険者の方々にも満足いただけるサービスを提供しております」

「それじゃあ、その宿屋でお願いします」

「かしこまりました」


 おそらく、冒険者ギルドと紹介してもらった宿屋は提携しているんだろうな。だけど、格安で泊まれるのなら僕にも都合が良い。宿を探す手間も省けるから。


 僕は、ギルドから紹介してもらった宿屋を拠点にすることを決めた。冒険者ギルドの建物を出て、早速その宿屋に向かった。

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