-Novalscia Saga- (ノーヴァルシア・サーガ)

朱星リズ

前書き

 私がこの前書きを記述しようと思い立ったのは、この書籍の執筆を終えた翌週、恩師であるサルバトーレ・メフシィ氏が病で急逝したことからだった。

 氏は東方大陸『ドラグナシア』の民俗学者であり、ザリヴ四大商家であるメフシィ家の次男であったが、同時に夢追い人ロマンチストでもあった。彼の家に代々残されていたマーシャ・モネッタという人物が書き残したメモ帳に記された、『賢人の扉の先 親愛なる友を忘れない』という文言を信じ、彼はアラミアーナ砂丘へ赴き、自身の財力と人脈を駆使して、発掘作業を行ったのだ。

 過程では彼は誰もから嘘つきだ、オカルティストだと言われ続け、考古学を語り合う友と言われた私のもう一人の恩師にもくだらない夢想だと鼻で笑われていたが、結果として遺跡を掘り当て、文明がそこにあったことを世に知らしめた。

 この書籍は、そんな彼が掘り当てた古代文明――協力者曰く、ノーヴァルシア文明――を、現地の詩人の協力からまとめたもので、いわばメフシィ氏の名誉だ……と勝手ながら私は思っている。が、残念ながら、氏はこの書籍が日の目を見る前に亡くなってしまった。どころか、彼は送った文も読まなかったというのだから、この書籍が完成したことすら知らないまま、逝ってしまった。

 従って、せめてこの書籍の頭に氏への謝辞と、感謝を綴ろうと思う。


 敬愛するサルバトーレ・メフシィ氏へ、愛を込めて。

 ――エドワード・ハイベリー

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