遠足準備④
なんとしてでも篠原さんと3人を仲良くさせると決めた僕は、篠原さんと別れてすぐに、行動を始めた。
「優里、今日は迷惑かけてごめんな」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
教室に帰ると、帰りの準備をしていた優里がいたので、丁度いいと思い話しかけた。
「それより、ちょっと話してもいいか?」
「いいですよ」
そして、帰りの準備をするためにカバンをいじっていた手をわざわざ止めてくれた優里に向かって、僕は頭を下げた。
「お願いがある」
※
次の日、篠原さんが登校すると同時に僕と優里は目を見合わせた。
(それじゃ、作戦通りに)
(わかりました)
篠原さんが自分の席に到着したところを見計らって、僕らは動き出した。
「おはよう、篠原さん」
「おはようございます、篠原さん」
僕が優里に頼んだことというのは、朝一緒に篠原さんに話しかけてもらうことだ。
昨日優里には、篠原さんが遠足を休もうとしていることや、伝わりにくいだけで本当は優しい性格であるということを伝えた。すると、多少困惑しながらも、友達からのお願いならということで了承してくれた。
「お、おはよう」
突然話しかけられて困惑している様だが、僕らはさらに話すのを続けた。
「そういえば篠原さんは今日の数学の課題やった?」
「最後の問題が難しいやつですね」
「一応やったけど……」
「よければ、最後のところ教えてよ。自分の答えがあんまり自信なくってさ」
「篠原さんさえよければ、僕にも教えてほしいです」
「……分かった」
篠原さんの解説を聞きながら、周りを見渡した。
(よし、今のところは計画通りだ)
教室中から注目を集めていることを確認し、意識を篠原さんの解説の方に戻した。
僕が篠原さんと話すにあたって、優里に伝えていた作戦というのは、篠原さんに数学の問題を教えてもらうというものだ。
この作戦の1番の目的は、改めて話す機会を作ることで優里が篠原さんに持つ苦手意識を解消することだが、優里には言っていないもう1つの目的として、クラスメイトからの篠原さんに対する印象を変えることがある。
篠原さんは容姿に言動も相まって、冷淡な人だと思われている。
しかし、そんな冷淡だと思ってた人が、優しく人に勉強を教えていたらどうだろうか。少なくとも印象を変えるきっかけになると思うし、それは
これでは時間がかかるかもしれないが、班員である3人ほど急ぐ必要もないし、1学期が終わる頃までには、冷淡な人からクールな人ぐらいには変わっているだろう。
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