○○視点 入学式④

たかくんから帰ってきた返答は……


「よ、よろしく」


(ひ、一言だけ⁉︎それに、その反応からして私があきちゃんだって気づいてないし……どうして私があきちゃんだって気づいてくれないの‼︎私はすぐ、たかくんだって気づいたのに‼︎)


そうは思いつつも、私は同時に安堵あんどした。


私にとって、最も恐ろしいことは、たかくんに私があきちゃんであると知られて避けられることだ。そうならなかっただけ、マシだと考えるのが妥当だと思う……けど……


(そういえば、たかくんはどうして私のことを避け始めたんだろう……あんなに仲がよかったのに……)


昔、考えるのを止めた質問が頭の中に蘇ってくきた。


あの時の私はたかくんも私のことが好きだと思い込むことしか出来なかった。


でも、思い出されるのは別れの時、たかくんのご両親は見送りに来てくださったのに、たかくんだけ来てくれなかった……


答えを知りたい。


そのためにも、私はたかくんを私がいないと生きていけないほど私に依存させ、堕とさなければならない。私があきちゃんだと知っても、避けられないように……


(大丈夫、私ならできる)


決意を固め、改めてたかくんの方を見るとたかくんが私のをガン見していた。


(…………)


ギロッ


(私も分かってますよ‼︎同世代の子と比べても胸の大きさが慎ましいことぐらい。それでも、たかくんに好かれようと毎日風呂上がりに育乳マッサージを頑張ってるんです‼︎今はまだ結果が出ていないだけで、高校を卒業する頃にはB、ないしはCくらいはあるはずです‼︎)



ゲームセンターに向かって3人で歩くたかくんの背中を私は一歩引いたところで見ていた。


3人の会話にはすぐには入り込むことはできないことぐらいわかってる。でも、私はたかくんと一緒にいることができて満足だ。


そんなことを思いながら、昔に比べて大きくなったらたかくんの背中を見る。


(いつのまにか、身長も抜かれちゃったね)


たかくんの今までの人生に思いを馳せてみる。


テストで100点をとってお母様に褒められたりしたのかな?


誰かに告白とかされたりしたのかな?


昔からのピーマン嫌いは克服したのかな?


たまにでもいいから、私のことを思い出してくれたりしたのかな?









それでも、私がたかくんに救われたということは変わらない。


テストの点がどれだけ悪かったとしても、


誰からも告白されなかったとしても、


ピーマンがいまだに嫌いだったとしても、


私のことを……覚えていなかったとしても。


たかくんは私のヒーローだ









「委員長も一緒に話そうぜ」


「ええ、ぜひ」

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