プロローグ 入学式の日

 過去の回想

君たちは今までに失恋したことはあるだろうか。


僕、金木孝憲かねきたかのりは今までに2回の失恋を経験した。


1回目は、小学4年生でのことだ。


生まれた病院が同じで、小さい頃は家族ぐるみで付き合っていた子がいた。

いつも一緒に遊んでいて、どんな時でも一緒だった。


あるときは公園で一緒におままごとをして遊んだり、またあるときは2人でイタズラをして母さん達に怒られたりした。


そんな日々を過ごしている内に、僕は彼女のことを好きだと自覚するようになった。大体、小学2、3年生の頃だったと思う。


でも、彼女のことを好きだと自覚してからは、彼女とうまく話すことができなくなってしまった。


いつのまにか疎遠になり、一緒に話すことも減った。そんな時に彼女の父の転勤が決まった。


そして彼女は、勇気が出ず別れも言えないまま、僕の前からいなくなってしまった……


僕は初めての失恋を経験した後、深い後悔と自分の半身を失ったかのような喪失感に襲われた。


そして、それを埋めるために、僕は色々なことをやってみた。


勉強もしたし、運動もした。

他にも、料理や音楽にも手を出してみた。


それでも、後悔と喪失感は埋まることもなく、ただ空虚な日々を過ごしていた。



2回目は、中学2年生でのことだ。


中学受験の日。


僕は筆記用具を忘れるという痛恨のミスを犯した。当然、めちゃくちゃ焦った。

周りには知らない子しかいなくて、どうしたらいいか途方に暮れていたとき……


そんな僕を助けてくれたのが彼女だった。


彼女は僕にシャーペンと消しゴムを貸してくれたのだ。


そんなに大したことではないと思うかもしれない。


でも、当時の僕はいなくなってしまった彼女の幻影に囚われていて、後悔や喪失感を埋めようと、人と関わり合うことなく、がむしゃらに色んなことに取り組んでいた。


だから、そんな彼女の優しさがとても心に沁みた。


今度はすぐに僕は彼女のことが好きであると自覚した。

そして、前回の反省をいかして、入学してすぐに僕は彼女を呼び出し、自分の気持ちを伝えた。


「一目惚れしました。好きです。付き合ってください」


「ごめんなさい」


多分、彼女の僕に対しての初印象は最悪だったと思う。だって、受験の時に筆記用具を貸しただけなのに、一目惚れしたと言い、入学早々告白してきたのだから……


それでも、僕は毎日彼女に告白し続けた。


もう二度と後悔しないように。

いつかは彼女に受け入れてもらえることを信じて。


告白するたびに彼女から返ってくるのは、断りの返事ばかりだったが、僕は諦めなかった。


しかし、中学2年生が始まってすぐのことだった。今度は僕の父親の転勤が決定したのだ。

そのため、県内だが距離があるということで、僕は別の中学校へ転校することになった。


それでも諦めずに僕は引っ越す最後の日まで彼女に告白し続けたが、結局、彼女からの返事は変わることはなかった……


そして見事失恋したというわけだ。


以上が、僕が今までに経験した失恋だ。


そんな僕、金木孝憲は目が覚めると異世界に転生していた。


で、姫様に言われた通り魔王を退治したら、姫様から結婚を申し込まれて、パーティメンバーの3人からも告白されて毎日ハーレム状態で困っちゃ……


「起きて。朝だよー」


……う。


僕の妄想を妨げる声が聞こえたが、ここは無視をして、さっきの続きを考えることにしよう。


「……」


ドス!


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こんにちは、くりからです。

新しく異世界系の小説を書いてみたので、そちらもぜひご覧ください!


『ざまぁ』された元勇者、仲間の大切さを知る

https://kakuyomu.jp/works/16818093076722318002

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