ACT.6 和倉千路

光速の走り屋オオサキショウコ第2部 ACT.6 和倉千路


あらすじ

18位のあきらはピアッツァ乗りの和倉千路と遭遇した。

V12クアッドターボを積んでハイパワーを得たクルマ相手に手も足も出なかった。

挙げ句の果て、エンジンブローをしてしまう。



 前を走る千路はピアッツァのミラーから後ろのワンエイティを目で追う。



「赤城最速がやって来たま!」



 おれの方もピアッツァに注目する。



「実況の口から言っていたけど、相手は古いクルマとは裏腹に515馬力のパワーと88.5kg・mのトルクを持ったクアッドターボのV12を搭載したモンスターだ。どう攻略しようかな?」



 そんなモンスターを追いかけながら、裏榛名の道を走っていく。



 2つの直角ヘアピンに遭遇する。

 これらをドリフトとグリップの中間の走りで攻めていき、ピアッツァとの距離を縮める。



「速えま! さすが赤城最速わいね!」



 それらの後の左コーナー、ピアッツァを追い抜く。

 順位を上げることができたと思いきや。



「抜かれたんはわざとわいね! うちは後ろを走る方が調子でるま!」


 

 この後、ポジションを変えた相手はおれをさんざん苦しめてくることになる。



 高速区間。

 ピアッツァは自慢のパワーで煽ってくる。



「やっぱ加速では相手に負けている」



「煽ってやるわいね! 離せるま!?」

 

 

 おれの焦りは強くなっていく。


 

 中速ヘアピンに入る。

 右だ。

 相手を離そうとしたいあまり、あれを使う。



「<フライミー・ソー・ハイ>」


 

 普通なら高速ドリフトができたはず。 

 しかし速度が速くならず、萌葱色のオーラも出現しなかった。



「なんで!? なんで発動しなかったんだよ!」



「うちの能力は相手の土・風・光・闇属性の技を封じるま! 使いたくても使えんわいね!」



 相手の能力が影響していたのか、強力だな。

 ヘアピンを抜けると、直線に入る。


 

 再びピアッツァに煽られる。

  


 そこを抜けると、左高速ヘアピンに突入する。

 距離はさらにテール・トゥ・ノーズになっていく。



 高速セクションに入った途端、ピアッツァは白いオーラを纏った。



「これでも喰らえま! <スター・ライト>!」


 

 ワンエイティに向けて、ヘッドライトを照らしてきた。


 

「くっ、だんだん焦りが強くなる」



 さらにおれの精神は痛たなくなる。

 その影響もあり、ワンエイティをふらつかせる。


 

 2つの右ヘアピンを抜けて、バス停跡地を通過する。

 直後にある左ヘアピンを抜けると、ワンエイティを煽り続けるピアッツァはいよいよ仕掛けてきた。

 赤い炎のオーラを纏う!



「ここで追い抜くま! 能登のボルックス流<かぶきの加速>!」



 オーラの力で引き上げた加速力でおれを追い抜く!

 おれが光/風属性だったため、火属性のこの技は威力が低下しているものの、それでも中々のパフォーマンスだ。



「おっと、和倉千路選手! 再び17位に躍り出る!」



「すごい追い抜きだ……」



 この後は相手の得意とする高速区間が続く。

 パワーが少ないワンエイティに乗るおれにとっては不利な場所だ。


 前に出たピアッツァはV12クアッドターボのパワーでワンエイティを大きく引き離していく。



「さすが和倉千路選手のV12クアッドターボだ。ワンエイティはこの加速に手が出ない」



 ピアッツァのドライバー、和倉千路はさらに仕掛けていく。

 左高速ヘアピンに入った時だ



「これでも喰らうわいね! 能登のボルックス流<土の中の少女>!」



 オレンジのオーラを纏いながら激しい土煙を巻くドリフトを披露した。



「うわッ!」



 土煙がおれのワンエイティのフロントに襲いかかる。

 前が見えなくなるほどだ。



 それを抜けることが出来たものの、左高速ヘアピン直後のS字に入ると、クルマに変化が起きる。



「前より曲がらなくなっている」


 

 何と、旋回性能が落ちた!

 やはりあの技が影響しているのだろうか?



「さっき使った<土の中の少女>ちゅう技は、相手の旋回性能を引き下げるま」


 

 やっぱそうだったか。

 

 加速では負ける上に、旋回性能を下げられている。


 どうすればいいんだ、おれ!



 一方、先頭を走るうちはオレンジ色のピアッツァに煽られていた。



「速いわ、あのピアッツァ……離せん」



「次で仕掛けるわいね」



 ピアッツァは赤いオーラを纏う。

 技を使うようだ。



「能登のカストル流<能登かがり火>」



 A31のボディにヘッドライトを照らしてきた。

 その光がクルマに触れた途端……。



「熱い、熱い、熱い、あちちちちち!! 何やこの熱さ!」



 うちは大火傷を負い、A31の挙動を乱す。


 

 右U字中速ヘアピンを通って、おれたちは高速区間に入る。

 旋回性能が下がったため、千路のピアッツァとの差はさらに広がった。



「どうしよう………旋回性能が下がっているためさらに離された。ピアッツァの弱点を見つけて逆転の鍵を見つけなければ……」



 どうすれば、ピアッツァを追い越せるのだろうか?



 ここでおれの脳裏に閃きが走った。



「そうだ。V12エンジンにクアッドターボを積んでいるから、何か弱点があるかもっしれない」



 それを狙うことにした。

 左高速から中速S字コーナーが迫ってくる。



 それらではピアッツァに離されるも、もう1つのバス停跡地からの左U字ヘアピンで仕掛けることにする。

 

 

 相手の能力が原因で<フライ・ミー・ソー・ハイ>が使えなかったものの、今度は属性の異なる技を使うことにした。


 

「この技なら使えるでしょ? 小山田疾風流<スティール・ブレイド>!」



 凄まじい速さのゼロカウンタードリフトで攻めていく!



「イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケェー!」



 コーナーでピアッツァとの差を縮め、立ち上がりでサイド・バイ・サイドになる。


 

 相手の弱点を見抜く。



「和倉千路の弱点は……ターボラグを押さえるために立ち上がりでふらつきながら走る癖があることだ!」



 つまり相手はターボラグは克服できていなかった。

 弱点を突いたおれは、ピアッツァの頭を塞ぎながら追い抜いく!



 相手は諦める気配はなかった。



「抜かれても追いかけるわいね! 順位を取り戻したるま!」


 

 順位が変わった2台は、この後のジグザグした高速セクションを駆け抜けていき、前を走るクルマたちを追い抜いていく。



 おれが9位になり、千路が10位になった。



 あるクルマを目撃する。


 

 タカさんのHCR32だ。



「サキちゃんのワンエイティが来たよ」



 中速S字。

 2台はそのクルマを追い抜き、順位を1つ上げる。



「抜かれちゃった……」



 さっきのS字にて、おれと千路との差が離れていく。



 中速右ヘアピン。

 ここでおれはあの技をまた使う。



「小山田疾風流スティール・ブレイド>! イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケェー!」


 

 千路の方も負けずに技を使った。

 風属性を表す萌葱色のオーラを纏う。


 

「能登のボルックス流<ダイヤモンド・ハリケーン>!」



 竜巻を発生するような激しい高速ドリフトで攻めていく!



 しかし、距離を縮めることが出来なかった。



「負けたわいね……。でも、ずっと向こうにおるお姉ちゃんはうちより遥かに速ぇま」


 

 千路のピアッツァを引き離し、裏榛名を出るとあるクルマと遭遇する。



「あのクルマは……」



 おれの邪魔をしてきた集団のリーダー、重信杏里が乗るサバンナだ。

 あいつは許すことが出来ない。



「大崎翔子のワンエイティがやって来た……」



 重信は後ろのおれとワンエイティを眺める。


 

 今度はそのクルマが壁として立ち塞がる。



 一方、先頭集団は。



「おっと、能登最速の和倉奈々央選手が1位に躍り出た!」



 うちはオレンジ色のピアッツァに追い抜かれてしまった。

 料理するわ!(意味:畜生)



TheNextLap

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る