第4話 『悪役』とスライム

 石ころ:ただの石。使い道はないが、当たると痛い。


 これが石ころの説明。もうすっごいおざなり、これがタイタン君のメイン武器なんですよ!もうちょっとちゃんと書いてくれませんかね運営さん!?


 情けない話だがこれが俺のメイン武器、石ころぽいぽい。石ころ一発のダメージは10、なんと俺より2もダメージがでかいのだ!

 石ころの投擲より威力の弱い俺の片手剣って何……?


 ちなみに固定ダメージというのは、STRの値に依存しないダメージの事をさす。具体的に言うと鉄のロングソードが攻撃力を+4する武器だから、自身のSTRの値+4が攻撃力になるのでこれはSTRに依存するダメージが出る。


 一方、石ころの投擲はどれだけ自身のSTRの値が高くても与えられるダメージは10。ダメージが固定されている、というわけだ。


「まさか序盤から石ころのお世話になるなんてなぁ……まあ俺の代名詞と言えばこれだし遅かれ早かれこうなってたか」


 俺はぶつくさ言いながら石ころを拾い集める。いやさ?いくら嫌われ者に転生したとは言え、剣と魔法の世界なんだから剣でかっこよくズバーッ!魔法で周囲の敵をドーンッ!ってやりたくなるのが男のさがってやつじゃん?


 でもさ?剣の威力は石ころ以下、覚えられる魔法はデバフ効果の付与魔法のみ。


 スライム一匹すら倒せず、結局石ころぽいぽい戦法になってる……剣と魔法の煌びやかな世界なんて何処にもないぜ!


「っと、よし。18個集まった、一応外れる事も見越してあと10個は持っとくか」


 とりあえず最低限度の石ころは集まった。固定ダメージが10、スライムの防御力は8。超過2ダメージがスライムに入る計算になる、そしてスライムの体力は35……全部当てたら倒せるはずだ!


 そして揺れる草むら……っ、来る!


 スライム が 現れた!▼


 タイタン の 石ころ ぽいぽい!▼


 スライム に 2 のダメージ!▼


 おっ、ちょっと痛がってる!スライムはチクッとした痛みが煩わしかったのか、俺の方に突撃してきた!


 ふっ、俺が反撃を予期してないとでも?予期してませんでしたけど!?


 スライム の とびつく!▼


 タイタン に 4 のダメージ!▼


 タイタン は フラフラだ!▼


 いった……油断した、石ころがちゃんとダメージ入って喜んでしまった。


 たかが2ダメージだぞ俺、喜ぶのは倒してからにしろ!あと5発くらったら俺の体力は尽きるぞ!?


 この時、タイタンが腐っても貴族の生まれであることを俺は感謝した。


 嫌われてても貴族の端くれ、親からは最低限の防具と武器を貰っていたお陰でなんとか一撃で即死は免れた……


 スライムの攻撃力は12、一方俺の防御力は防具込みで8だ。俺、防具が無ければ防御力3って話する?


 レベル1時点での俺の体力は24、防具が無ければ3発で死んでしまうほどの貧弱っぷりだぜ!


 タイタン の 石ころ ぽいぽい!▼


 スライム に 2 のダメージ!▼


 スライム の とびつく!▼


 ミス! タイタン に ダメージ を与えられない!▼


 気を付けてスライムの動きを見ていたらなんとか回避出来るな……飛びつきモーションが見えたら横に避ける!


 1回避けたらまた石ころを投げる!くっそ外れた!最低限しか石ころ拾えてないから外れた石ころ拾わないといけないのホントだるくない!?


 あぁ!石ころがあさっての方向に!?森の中から石ころ探すの地味に大変だからちゃんと投げてタイタン君


 スライムの攻撃を回避しては石ころを投げつける俺。とてもダサく見えるだろ?これ、一応死闘なんだぜ?


 しっかし、ゲームとは違ってスライムを実際に見て戦っているから攻撃を回避し続けられるのは嬉しい誤算だったな……作中のタイタンならもう今の飛びつきで死んでたぞ?


 いっだ、避けきれなかった!スライムって実際に戦うとどっちが前でどっちが後ろか分かんないから飛びつきのモーション分かりづらいんだよ!?


 ずっとぷるぷる震えてるからちゃんと注視しとかないと『ひときわ大きく揺れる』という飛びつきの前兆が見えないしさぁ!


 ふん!ふん!気分は野球選手!学園カグラザカってそういえば部活のシステムあったっけ……いだぁ!?

 ダメだ、戦闘に集中しないと死ぬ!あと3回飛びつきをくらったら終わりだぞ俺、飛びつきが当たる度に身体の骨がきしむ感覚がある。これがダメージか……!


 嫌でも分かる、くらい続けたら骨が折れる未来。俺は真剣にスライムと対峙した。


 ゲームの世界だと認識していた俺の甘い考えをここで矯正する、ゲームの知識はあくまでだけであってわけじゃない……ッ!


 石投げる、回避!石投げる、回避!石投げる!回避いいいいいいいいい!


「はぁ……はぁ……半分削ったぞ!紳士なめんじゃねえ!」


 おおよそ紳士とは思えない発言をしながら、紳士的に中指を立てる俺。ゲームにはスタミナという概念が無かったから気にしてなかったけど、もうヘトヘトだ……


 スライムもダメージが蓄積されていて動きが鈍くなっているから、なんとか回避し続けられているけど。


 よく考えたら、敵の体力やステータスを全部把握できてるってチートだよな。何発当てれば倒せるのか、何発くらったらダメなのか分かってる時点で心の持ち様が違う。


 ゴールが見えてるからこそ、こういった一見意味のない行動も真剣に出来るというものだ……石ころを投げつけて10の固定ダメージが入るとか知らなかったら最初に片手剣が通じなかった時点で諦めてるぞ?


 タイタン の 石ころぽいぽい!▼


 クリティカル! スライム に 4 のダメージ!▼


 おっ、良いとこ入った!動きが鈍くなっていたお陰でコアっぽいところに石ころを投げたつけたら、ひときわ痛がるような素振りを見せたスライム。俺は確かな手応えを感じて思わず小さくガッツポーズする。


 うおおおおおおおお!削りきってやるぜええええ!

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