シマ流しになったわたしたち

つきみなも

第1話 シマ流し

何故こうなったか。

私には到底わからない

だって、起きて周りを見たら海と砂浜。

なぜここに来たかも、私は誰なのかも分からない。

分からないことだらけで、この生活は始まった。

私の隣には私と同じぐらいの歳の女の子が横たわっていた。

数分横顔を眺めていた。けどなかなか起きないので死んでいるのかと思って、寝たまま近寄ってみるとその子はすごく穏やかな顔で寝息を立てていた。

「ねえ、ねえねえ起きてー!」

私は肩を掴んで揺さぶってみたり、軽くほっぺたを叩いてみたりした。

「全然起きない・・・」

仕方がないので流れてきたであろうナタを持ってきて、振りかぶるマネをしてみた。

「ああああ!!起きる!起きるから!!りーを食べないで!!」

やっぱり起きていた。その女の子はすぐに立ち上がって頭を下げてきた。

「食べないで・・・!」

「たべないよ。ただ早く起きてほしかっただけ。」

「もう少し優しい方法なかったの・・・」

「最初は優しくしてあげたけど起きないのがいけない」

「ヤメテ・・・ぐうの音しかでない・・・」

優しくほっぺたを叩いた時、一瞬だけとんでもなく嫌な顔をしたのでそこで起きていたのは知っていた。とんでもなくめんどくさがり屋なのだろうと私は思った。

「それで・・・どこなのここ」

「りーも分かんないよ。・・・そういえば君の名前は?」

名前を聞かれて困った。私は誰なんだろう?

「名前、ないのかも?」

「じゃあ付けてあげる。そうだね・・・」

りー、という名前であろう女の子は私の体をジロジロ見て、空を見て、いかにも「思いついた」顔をした。

「君、目が青いから『あおい』だ!よろしくね!あおいちゃん」

ずいぶんとシンプルで単純なネーミングだった。

でもなにか可愛らしい名前で、私は気に入った。

「ありがと。私はあおい。うん、覚えた」

「ちなみにわたしは『りー』」

「うん知ってる」

「そんな・・・」

「あのさ、私ちょっと考え事したいから、食料探してきてくれない?」

「いいよー。私頭悪いし、そういうのは任せ・・・労力に差があると思う。」

「起きなかったバツ。おねがい」

「分かったよぉ・・・」

りーはほっぺたを叩いたときと同じものすごく嫌な顔をして森に踏み入っていった。

私はまずここが地球のどこなのかを考えた。

しかし私はあくまで子供で、太平洋か大西洋か、そんなことすらよくわからなかった。

次に船が見えたりしないか、少し周りを歩き回ってみた。

しかしいくら眺めても水平線以外に何も見えない。

漂着物でどうにか外の世界を知ろうと思って、色々拾ってみた。

折りたたみができるシャベル、ビニール袋、謎の壊れた機械、空のペットボトル、どこかの国旗が書かれたスキットル。

どれも統一性が全然なくて何一つわからなかった。

そこで唯一わかる自分の「知識」について考えてみた。

がっこう、ことば(何語かはわからないけど・・・)、かいしゃ、しゃかい、いえ、ともだち。

多分自分の情報以外はほとんど覚えている。

そういえばあのりーって子は自分を最初から「りー」という名前なのを覚えていたから、もしかしたら何かわかるかもしれない。

私はひとまず拾った「ライターらしきモノ」で火起こしを試みた。

そういえば私が着ている服、黒いタンクトップとカーキ色の捲し上げたズボン、ナイロンのベルト・・・私は何をしていたのだろう?

「ヤシの実あった!!あとりんご!」

りーの服装は白いボロボロのシャツに黒い半ズボンだった。私が思いついて、得られた情報はそれまでだった。

「シマ、広そう?」

「多分けっこう広いよ。岩場もあった!」

「とりあえず食料ありがと。ところでりーは何か自分のこととか、外の世界のこと覚えてない?」

「ん〜〜」

日が傾きかけて、砂浜はとてもきれいな景色に変わっていた。

次第に空がオレンジから紫色に変わっていって、夢みたいにきれいだった。

「りーが『りー』っていう名前ってことと、おなかすいたってことしか分かんないや」

その夜は二人でりんごをかじった。

けっこう酸っぱい味だった。

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