38. 砦へ
トランスタットを出た僕たち3人はある程度街道を進んだところで脇道に入り、魔法のマントで姿を隠して森の中に身を潜める。
すると、僕たちのあとを追って6人組の男たちがやってきた。
ドナルの奴、僕たちに追っ手を出していたか。
「やれやれ、用心しておいて正解だった」
ダレンさんも疲れた様子だ。
普段は頭の悪いことばかりしているくせに、こういうときばかり悪知恵が効く。
「どうしますか、ダレンさん?」
「ついてこさせるわけにはいかん。ここで始末する」
「手伝いますか?」
「俺ひとりで十分だ。アークとルナは手出しをするな」
「わかりました。気を付けて」
「気を付けて、ダレンおじちゃん」
「ああ。気を付けるほどの相手でもなさそうだがな」
ダレンさんがそう言って森の中から飛び出すと、相手に気付かれる前にふたり倒してしまった。
そして、混乱している相手の隙を突いてさらに3人。
残りのひとりはかろうじて応戦しようとしているけど、抵抗する間もなく斧で切り倒された。
さすがはダレンさん。
ギルドマスターの座についているのも伊達じゃない。
「さて、こいつらの死体を始末したら先に進むぞ」
「わかりました。ほかに追っ手は来ていますか?」
「わからん。いまのを見て逃げ帰り、状況を報告をされてしまっただろう。これ以上は追っ手も来ないだろうが、念のため森の中を進む。問題はあるか?」
「いえ、ありません。ルナは?」
「森の中の方が歩き慣れてる!」
「そうか。じゃあ、すぐに始末するから、少し待ってろ」
ダレンさんはすぐさま森の中に死体を運び込み、魔法で土の中へと埋めてしまった。
本当に慣れた手際だ。
5分かからずすべての作業が終わり、道にあった血痕もわからなくしてしまう。
これで出発準備は完了かな。
「待たせたな。では、行こうか」
「はい。でも、こちらに向かうということは、目的地はやっぱり」
「そうなる。黙って付いてこい」
ダレンさんに導かれて森の中を進む。
一切手入れされていない自然の中だけあって進むのがきつい。
ルナは自信満々で歩き慣れているといったとおりひょいひょい進んでいくし、僕は遅れないようについていくのがやっとだ。
僕たちは日が落ちるまで歩き続け、日が落ちたら野営をして休み、翌朝また進み始めるといった日々を繰り返すこと一週間、遂に目的地が見えてきた。
隣の国家、獣人族の国家の砦だ。
やっぱりそういうことだよな。
「よし、このまま砦に入るぞ」
「わかりました。攻撃されませんよね?」
「大丈夫だ。事前に連絡は取ってある。行くぞ」
僕たちは森の中から出て砦の方へと歩いて行く。
もちろん獣人族の警備兵に見つかるわけだが、ダレンさんが合図を送ると警戒こそされるものの素通ししてくれた。
なるほど、獣人族国家も乗り気というわけか。
「着いたな。ここがお前の資料となる砦だ」
「はは。本格的な砦ですね」
「当然だろう? 作るものも本格的な物で頼む」
やっぱり交渉相手は獣人族か。
僕とルナにとっては敵じゃないけれど、トランスタットの街の住人たちにとってはどうなんだろうな。
そこはダレンさんに丸投げになる。
しっかり説得しておいてほしいね。
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