名もなき騎士

kou

プロローグ どこかにある剣と魔法の世界

 遠い遠い、昔。

 いや、遠い遠い、未来だろうか。

 それは、どこかにある剣と魔法の世界。

 栄華を極めた世界は滅び、人々は散り散りになった。

 やがて文明も歴史も忘れ去られた世界で、人々と魔物は世界を共有して暮らしていた。

 戦士は己の強さのために戦い、魔術師は叡智を以って戦う。

 妖精の歌は人々の心を癒し、精霊の祈りは空を駆け巡る。

 竜は炎を吐き、悪魔は欲望を忍ばせる。

 戦士は剣を振るい、魔術師は呪文を唱える。

 神は、ただそれを眺めていた。

 その世界に生きる全ての命に、平等に与えられた運命があった。

 それは、定められた時の中で生き続けること。

 例えそれが、どんな形であっても。

 例えそれが、望まぬものだったとしても。

 例えそれが、避けられない宿命であっても。

 勇者は悪の根源を絶つために立ち上がり、賢者は世界を救うべく知恵を絞る。

 かつて栄えた世界の地図を広げて、人々は夢を見た。

 冒険の旅に出かけた。

 いつかまた、あの世界に辿り着けたら、と。

 これは、そんな物語。

 いつかまた、誰かが夢見た物語。

 そして、いつかまた、誰かが語り継ぐ物語。

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