第4話・初めの実戦

 さらに3年後。


 8歳になった俺はついに父上と母上から森に入っても大丈夫と言われた。


(よし! これで実戦が出来るぞ)


 コソコソ隠れて訓練するのもリムのお陰で難しくなってきたのでちょうどよかった。俺は早速朝から準備を整えてフレミーの森の中に入る。


「えっと、この辺には何があるんだ?」


『調律の勇者と煌めく戦少女』で見た事のある薬草や素材がチラホラ見つかるので俺は適当に集めて素材袋に放り込む。するとガサっと音が聞こえたので振り向く。


《ゴブッ!》


 振り向いた先には小汚い緑色の肌をした不細工な小人みたいな魔物。ファンタジーではお馴染みのゴブリン。その中でもグリーンゴブリンと呼ばれる魔物で相手は棍棒を手にしていた。


(ハグレか?)


 ゴブリン系は群れで生活する魔物だが目の前にいるゴブリンへ1匹。少し不審に思いながらも腰に装着しているナイフを構える。


「悪いが狩らせてもらう!」


 鞄を地面に置いてグリーンゴブリンに接近。相手は木の棍棒を構えたが俺はナイフを持たない左手を前に出す。


「ウォーターショット」

《ゴブッッ!?》


 グリーンゴブリンは俺が使ったウォーターショット。水の弾丸を受けて体から紫色の血を流す。俺は動きが鈍ったゴブリンに向かってナイフを向けて相手の首に刺す。


「ふぅ、これで終わりか」


 バタッと倒れたグリーンゴブリン。俺はナイフを使い胸を裂いてビー玉見たいな紫色の魔石を取り出す。


(コイツ1つで銅貨3枚だよな)


 銅貨1枚が日本での100円くらいの価値なのでグリーンゴブリンの魔石1つで300円。個人的には高めに感じるが村の宿は1泊大銅貨3枚くらいなので10匹は倒さないといけない。


「まあ、今はそんな事よりも素材集めー」


 グリーンゴブリンの魔石を素材袋に入れた後、俺は鞄を背負い直して素材集めを進める。


「星1の回復ポーションに使える癒し草に少し甘い味がするベリルの実。他にも色々あるな」


 この森……名前はプランの森はゲーム序盤で手に入る素材が豊富だ。俺はそのまま素材集めをしているとグリーンゴブリンを見つけたので迎撃。10匹を超える頃には鞄がいっぱいになったので村に戻り始める。


 ーー


 村に戻って冒険者ギルドで素材を換金。大銅貨5枚ほどになったのでウキウキで帰宅。すると外で木剣を振っていたリムがコチラを見て近づいてきた。


「兄上、剣の相手をして!」

「父上はいないのか?」

「父上は狩りに行ったよ」


 ちなみに母上は昼ごはんを作っているみたいなのでリムの相手ができないのか。


(どっちにしようが汗を流さないといけないか)


 俺は荷物を屋敷の玄関に置いた後にリムの方を見る。リムは目を輝かせているので俺は苦笑いを浮かべながら頷く。


「わかった」

「!? じゃあ兄上の木剣を持ってくる!」


 今年で7歳のリムは元気そうに走っていった。俺は改めて外に出て庭に向かいストレッチ。リムが持ってきた木剣を受け取り構える。


「じゃあ行くよー!」


 リムの合図で木剣を構えた俺は開始の合図を聞いて構える。リムは嬉しそうにコチラに間合いを詰めてきた。


(やっぱり腕が良くないか?)


 カンカンとリムの攻撃を木剣で受け流す。リムの剣は攻撃重視でカウンター重視の俺とは相性が悪い。そのため俺は攻撃を見極める練習として相手の攻撃に合わせる。


「うぐぐ!」


 なかなか攻めきれないリムは悔しそうな表情を浮かべる。そこで出来たスキをついて俺はリムの足をかけてから転ばし目の前に木剣を突きつける。


「俺の勝ちだな」


 かなり大人気ないと思うが、わざと負けるのはあまりしたくないのでリムが怪我を負わないくらいのやり方をする。


(周りから見ると雑魚イキリカスになるかもな……)


 転生の知識があるのでズルになるが痛い思いはしたくない。俺はそう思っているとリムが立ち上がる。


「も、もう1本!」

「え?」


 かなり悔しいのかリムは歯を食いしばりながら立ち上がった。


(もう1回やるのか……)


 一定の距離を空けたリムはまた切り掛かってきたので俺は母上から呼ばれるまで相手を続けた。


 ーー


 母上が呼びに来た時には互いにドロドロになっていたので水浴びをして服を着替える。


(疲れた……)


 剣の稽古で満足そうなリムの隣で俺は固焼きパンに齧り付く。


「父上!」

「うん? どうした?」

「兄上に勝つにはどうすればいいの?」

「うーん、そこは戦いまくって相手の動きのクセを見極める事だな」

「癖?」


 癖と聞いてリムは頭を傾ける。父上は少し苦笑いを浮かべながらリムに向かって語りかけた。


「グレイの剣はどちらかといえば防御が強い。なら相手の防御を壊すならどうするか考えるんだな」

「防御を壊す……。じゃあガンガン攻めたらいいのね!」

「ま、まあ、そうだな」


 母上からの冷たい視線を浴びた父上は冷や汗を流しているが、リムは何かを考え始めた。


「まさかリムがここまで剣に夢中になるなんてね」

「まあ、いいんじゃないか」

「この集中力をお勉強にも使ってほしいわ」


 屋敷の書斎で文字や計算の勉強をしているがリムは苦手なのかすぐにやる気をなくす。だが剣の稽古は目を輝かせているのでその差がすごい。


(なんか脳筋になりそうだな)


 かくいう俺も頭は良くないので人の事は言えない。


「そ、そうだな。あ、それよりも2人に伝えておく事があったぞ!」

「うん? 何かあるの」

「ああ!」

「もしかしてあの話?」


 状況を見て不利だと思った父上は話を変えるべく俺の方に向き、母上はため息を吐いた。


「実はな! ロジエから調査の騎士団が来るらしいぞ?」

「ロジエ? 確かこの辺では1番の都市だよね」

「そうだな。まあ、細かい事は騎士達に聞いてみるのか良さそうだ」


 父上はなんか空元気みたいに何かを隠した笑顔を浮かべている。俺はコップに入った水を飲みながらゲーム時の記憶を思い出す。


(過去編で何かあったかな?)


 頭の中でゲーム時代の記憶を思い出すがなかなか思い出せないのでここは流す事に決めた。


〈あとがき〉


 読んでくださった皆様に感謝を!


 面白いな、続きが読みたいな、と思われた方は星とブックマークを是非よろしくお願いします。



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