第27話:シュウの能力

 「あ”~・・・疲れた~」


 買い物から帰宅し、疲れた私はシュウに服を渡した後、魔法テント内にあるベッドで横になった。


 「おいアンナ、服を買ってきたといったよな?何故女物なんだ?」


 で、昼寝しようとしてるのになぜかこいつもいる。シンプルな白のワンピースを着せてるのだけど、それが気に喰わないらしい。似合ってるからいいじゃない。


 「シュウ様、とても似合っておりますよ?」


 ほら、ニーナもそう言ってる。


 「そうだろう?ってそうじゃなくて!男物の服買ってくるっていってなかったか!?」


 「服を買ってくるとは言ったけど、男物とはいってないわよー。似合ってるからいいじゃない。とても可愛いわよ。」


 「ふっ、そうだろう?って俺男!可愛いじゃなくてカッコイイがいいの!」


 「はいはい、明日持ってくるから今日はそれで我慢して頂戴。そんなことよりも、あなたの能力確認しましょう?」


 「おう、そうだな!じゃぁ、試験場に行こうか!」


 よしっ、話を逸らすことに成功したわ。こいつちょろいわね。ちょろすぎて私の分身だとは思えないわね。


 「私は夕食の準備をしてまいりますね。」


 「あ、うん。お願いね」


 ニーナは魔法テントから出て夕食の準備しにいった。空気を読んでくれたのかしら?そこまで気を遣う必用もないと思うのだけど。


 まぁ何でもいいわ。試験場に行きましょう。


 「よしっ、ついたな!じゃぁ何する?」


 「そうね・・・、まずは魔術を使えるかどうかね。どれくらい使える?」


 「数値換算で魔力1000になるまでなら使えるぞ。それ以下になると動けなくなるけどな。」


 「その1000の魔力は維持に使ってるってこと?消費されたりしないの?」


 「おう、1000の魔力はいまの姿を維持するのに使ってるぞ。怪我したらその分の魔力が消費されるぞ。1000を切ってる状態で怪我すると治らないけどな!」


 さすがダンジョン産の魔法具。中々に壊れた性能しているわね。


 「ちなみにその1000を抜くと残りどれくらいなの?」


 「んー、10万くらいじゃねぇか?今身体に入ってる魔石の魔力めっちゃ濃いしな」


 じっ、十万!?たしか10個くらい入れた気がするから、1個1万!?あの狼そんなに魔力あったんだ。よくそんなの相手に生きて帰ってこれたわね私。


 「そ・・・、そう、入る魔石の上限ってあるのかしら?」


 「タンクに入る分だけ入るぞ。ただ一度に消費できる魔力はだいたい1万くらいだけどな。」


 「1万・・・」


 1回で1万も消費することある?私がいままで使ったので一番多くても錬金魔術の結合で使った2000なんだけど。ま、さすがにそれだけの量を一度に使う事なんてないわよね。


 「そうなのね。わかったわ。じゃぁ、適当な魔術使ってみてくれる?」


 「おう、いいぞ。神陽ノ剣アグニ・ソード


 シュウが魔術を発動すると、その手には金色に燃え盛る炎の剣が握られていた。・・・って待ってそれって!


 「えっちょっまっ「はぁっ!!」」


———ピカッ・・・ドオオオオン!!!!


 一瞬、物凄い光が発したかと思えば、遅れて爆音が鳴り響いた。

 

 「はっはっはぁ!!どうだ!凄いだろう!」


 「確かに凄いけどさ!別にそこまでの物使わなくていいわよ!ってかアレって理論上は云々っていうやつじゃない!?何で使えるの!?」


 「おう!なんか使ってみたら使えたんだよ!まぁ、この体が特別なだけだと思うけどな!ハッハッハ!」


 はぁ~~~・・・、なんで本体が使えない魔術を分身が使えるのよ・・・なんかショックだわ。


 「ねぇシュウ。ちょっと付き合いなさい。」


 「ん?何wぶへぇ!!何すんだよ!いきなり殴んなや!」


 「ほらほら!さっさと構えなさいよ!」


 「おっ、ちょっ、まぁ、だぁもう!」


 本体なのに分身に負けたままとか悔しいじゃない。私の方が上だとこいつに思い知らせてやるわ!




 「・・・なんであなた方が強いのよ・・・意味わからないわ・・・」


 「はっはっは!俺の勝ち!!!」


 負けたわ・・・なんでよ。出力はオートマタであるシュウの方が上なのはわかるわよ。でも技量までシュウの方が上とかどうなってるのよ・・・分身のくせにずるいじゃない・・・


 「そりゃぁ、元はお前だからな!どう来るかなんて誰よりもわかるぞ!それにこのオートマタは戦闘用みたいだからな!出力も技量もお前より上なのは当然だな!ハッハッハ!」


 「はぁ・・・まぁ戦闘能力についてはわかったわ。他に何かあるかしら?」


 「他?んー、そうだな。本体・・・、お前と視界の共有とか色々できるぞ?」


 「えっ?それはオートマタの機能?」


 「いや?第二頭脳セカンドコアとしての能力だな?」


 「へ・・・へぇー、そうなの。そういうのもあったのね。どうやって使うのかしら?」


 「アンナが使おうと思えば使えるんじゃないか?元はアンナの魔法だしな。とりあえず試してみればいいんじゃね?」


 「そ、そうね。わかったわ。」


 確かに自分の魔法だもの。使おうと思えば使えるはずよね。じゃぁ、まずは視界の共有からやってみますか。


 「おぉ、こうなるのね。」

 

 視界を共有すると、二つの画面を見ているような感じになった。どっちも自分の視界として認識できるし、特に変な感じもしない。


 「いまシュウの視界を共有してるんだけど、シュウはどんな感じ?」


 「おう、俺も見えてるぞ。」

 

 「じゃぁ、試しに動いたらどうなるか試してみましょう?」


 「そうだな。」


 そして、私とシュウで試験場内を適当に歩き回った後、私だけ部屋を出てどれくらいの距離まで視界共有できるのか試してみた。


 「この距離でも見えるのね・・・」


 部屋を出て、家を出てもまだ視界が共有されるわね。もしかして距離制限とかない感じなのかしら?


 『あー、あー、聞こえるか?』


 「うわっ!?何!?」


 庭を歩いていると、突然頭の中にシュウの声が響いた。


 『聞こえたら、頭の中で俺に声をかけてみてくれ。』


 『えーっと、これでいいのかしら?』


 『おお!ちゃんと繋がったな!念話もいけるんじゃないかって思ったら出来たぞ!』


 『そ・・・、そうなのね・・・』


 『ちょっと試したいことあるから、一旦こっちまで戻ってきてくれるか?』


 『試したいこと?まぁ、戻るわ。視界の共有は特に制限なさそうだしね。』


 試したいことって何かしらね?とりあえず戻りましょう。


 「よう、お帰り!実験は成功だな!」


 「えぇ、そうね。まさか念話も出来るとは思わなかったわ。で、試したいことって

?」


 「おう!アンナの側から俺の身体を遠隔操作できるんじゃねぇかなって思ってよ!やってみてくれ!」


 「そ、そう?確かに出来そうな気がするわね・・・。ちょっと試してみるね。」

 

 えーっと、どうやればいいのかしら?乗り移るみたいな感じかしら?


 『お?おお?上手くいったんじゃねぇか?』


 「何で念話してるのよ。」


 『そりゃぁ、今俺の身体をお前が使ってるからな。よく見てみ?』


 そういわれて改めて自分の姿を確認すると、確かにシュウの身体に乗り移ってた。本体はどうなってるのかと言えば、動かずにじっとしたままになっている。ただ、本体の感覚が消えた感じもなく、動かそうと思えば自由に動かすことも出来た。更に本体とシュウの身体を同時に動かすことも何の苦もなくできた。


 初めて魔法が発現したとき、大したことない魔法だなぁ。とか思ってたけど、全然そんなことないじゃない。かなりのチート性能じゃない?


 「ふぅ、新鮮な体験だったわ。」

 

 「そうだな!ところで、俺の方からもお前の身体を操作できそうなんだけどやっていいか!?」


 「えっ・・・えぇ、まぁいいわよ。変なことしないでね。」


 「もちろん!じゃぁ試させてもらうぜ!」


 どんな感じになるのだろうと思ったら、シュウが私の中に入った途端、感覚はあるのに自分の意思では動かせないという不思議な感覚になった。


 『ふーん、こういう感じなのね。』


 「おおお!!すげぇな!不思議な感じだ!ほうほう、あっちの身体も同時に動かせるのか。すげぇなこれ。ふぅー!!あがっ!」


 私の身体に入ったシュウはテンション上がって走り出した、かと思えば途端に転んだ。何してんのよ・・・


 「いたたた・・・、人の身体を動かすのは難しいな。もう戻るわ。」


 そしてシュウが元の身体に戻ると、自分の意思で身体を動かせる状態になった。


 「結構面白い経験だったわ。でも、互いの身体を操作する時ってくるかしら?」


 「どうだろうな?何か作業するときに身体が二つ欲しい時とかに使うんじゃね?人に指示だすより自分で動かせたほうが何かと便利だろ?戦闘するってなると慣れが必要だろうけどよ。」


 「なるほど・・・、確かにそうね。そういう時が来るかはわからないけどね。」

 

 「そうだな。とりあえず確認することはしたんじゃねぇか?あとなんかあるか?」


 「うーん、特にないわね。あぁ、互いの経験をフィードバックすることとか出来るのかしら?例えば、私が勉強してあなたが訓練してるとするじゃない?で、どこかのタイミングで互いの経験を連動させれば、私の勉強した内容があなたの物になるし、あなたの鍛錬の成果が私のものになるとか。」


 「あー、勉強で得た知識の共有はできるけど、訓練のフィードバックは無理だな。頭脳は同じでも身体が異なってるからな。身体が得た経験を共有することはできない。」


 「そこまで都合よくはいかないのね。でもまぁ、これだけのことが出来るなら十分ね。後は自由にしていいわよ。っと、そういえば結構魔力使ったわよね?魔石の補充したほうがいい?」


 「ん?そうだな。いちいち入れるの面倒だしな。入れるだけ入れてくれ!」


 「わかったわ。」


 彼の背中を開けて、中に魔石を入るだけ入れる。元々入ってた魔石は最初より気持ち小さくなってた。どうやら使われた魔力の分だけサイズが小さくなっていくらしい。完全に魔石の魔力が無くなったら、魔石は消えるのかな?もしそうなら一々取り換える必要もないんだけど。ま、今気にしてもしかたないわね。


 「はい、終わったわよ。思ったよりも入ったわねこのタンク。」


 「おう、ありがとう!これならしばらく魔石の補充は必要ないと思うぞ!じゃぁ、外行ってくるわ!」


 「そう、いってらっしゃい。」


 「行ってきます!」


 魔石の補充が終わると、早速シュウは外に行った。視界はいつでも共有できるし、何かあったら念話で繋がるから特に心配する必要もないでしょ。


 「そういやあいつ女装したまま外出たわね・・・。まぁいいのかしら」


 「クゥー」


 「あ、アドラー。ごめんね放置してて。よしよし、じゃぁ一緒に昼寝し「アンナ様、夕食の準備が出来ました」・・・ご飯にしようか。」


 「クゥー」


 昼寝しようとしたら、既に夜になっていたらしい。ニーナが呼びに来てくれた。ちなみにシュウはどうしたのかと聞いたら、お小遣いをもらって外に出たらしい。彼の食事はどうするかと聞かれたので、用意する必要はないと答えた。魔力があれば動くからね。100個近い魔石を入れたから、何かあっても動かなくなるようなことはないでしょ。


 

 そして、ご飯を食べた後、私とアドラー、そしてニーナと一緒に風呂に入った。至極当然といった顔で服を脱いで、私と一緒に風呂場に入ったときは驚いたわ。『これくらい当たり前です』という顔で入ってくるんだもの。私もアドラーも何も言えず、されるがままに身体を洗われたわ。おかげさまでとても綺麗になったけどね。




 「ふぁー、疲れたぁー。おやすみなさいー」


 「クゥー」


 風呂から出た後はニーナたちの手で身体を拭いて乾かしてもらい、寝室に直行。朝から色々あって疲れた私とアドラーはベッドにダイブして一瞬で眠りについた。

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