異世界転生したら白いきつねっ子で白属性使いになったので白を他の属性に染めながら成長していきます。~白色はどんな色にも染まる色~

きつねのなにか

異世界だ! 異世界だ!

 草むらを歩いていると、目の前に傷ついたきつねがいた。

 真っ白なきつねだった。

 思わず抱いた。

 介抱しようと思った。

 そして、草むらをかき分けて道路に出た瞬間、明るい光と大きなホーンクラクションの音に私は包まれて――


「――そうしたら真っ白きつね獣人の姿になって道ばたに寝転んでいたってわっけーあははは」


 私は寝転んでいた所を介抱してもらった村の、たき火の集まりでそう話す。

 みんな何らかのケモノの特徴を備えており、明らかにここは異世界だと感じる。

 ちなみに適当に言語は翻訳される。便利だな。


 よくわからないが私はあの瞬間にきつね娘になり、地球がある世界とは別の世界に飛ばされたのだ。

 介抱しようと思った白いきつねの、主神様。そのお心使いによって。


「んで、お前さんの名と種族はなんだってんだい?」


 村の男が話しかける。そーだなー。

 よし、決めた。


「名は最中もなか、種族は白狐族!! 特技はまだ知らない!!!!」

「モナカちゃんにビャッコ族の無職ね。身長小さめで腕も足も体も細い。まあ胸はあるけど。小さいグラドルに着られる服があるか心配ねえ」


 ほう、お姉さんの口からグラドルとか出てきた。翻訳緩いな。私が現在無職とは翻訳キツいな。


「まあでもなんとかなるなる。心機一転! 新生活を始めるぞい!」


 それじゃあ、異世界、いっちゃいますか!

 きつねが融合したんだし楽天的にいこう!


 さて。


 この世界、例のごとく魔法が存在するようで、高度な科学技術は発展していなさそうだ。首都に行くと凄いとはみんな言ってるけど。

 村の人数は五〇名ほど。本当に小さな村で、お互いが協力しながら生活をしている。

 綿パンとか、布製品とかは普通にあるのでおんぼろので粗末な服を着ているとかはない。そこまで文明レベルが酷いというわけでもなさそう。


 都会人の私でも生活できそう。


 さてさて、無職は嫌なのでこの村で労働をすることになった。

 まずは扱える魔法を見る所から。魔法文明なので、魔法が使えないと話にならない。


 占い師兼薬草師のおばあさんのところへ行って魔力属性の測定をする。

 魔力属性の測定は水晶に左手を当てて出てきた色で傾向を判別するとのこと。

 火を使うには赤い色、水を出すには青い色、みたいな感じで得意な属性が表示されるのだ。

 私の場合、真っ白な色だった。


「あらぁ、こんな色出たことないねえ」


 占い師のおばあさんが甲高い声でそう喋る。


「あらぁ、そうですか。無能の証だったり?」

「いやいや、白色は何にでも染まる色でしょ、どんな魔法でも扱えるということかもしれないねえ。特別強くはなれないとは思うけどさ。特化した色じゃあないからねえ」


 なるほどー、ウェディングドレスはあなた色に染まるという証だったりするし、白ってそういうものかもしれないね。まー、みんなに教えてもらいながら覚えていこっと。

 ちなみにおばあさんから紫色の〈念力〉を教えてもらって、それを使って魔力測定もしたけど、ケッコウアルの下~中くらいだった。ま、魔力に不安はなさそうって感じ。きつねのおかげかな。


 森に入り、教えてもらった念力で枝拾いをし、みんなの薪を集める。風や金属属性が使えると大木も元の世界みたくチェーンソーよろしくカットできるそうだ。

 しかし森の中でも全然不安がない。半分きつねのせいかな?

 するすると木の間を抜けられる。ダッシュだってできる。きつね獣人、いや、きつね亜人のせいかな?

 私は体の線が細い。胸とか以外はするっとしている。でもそこそこ筋力があるのも判明した。きつねぱわぁだなこれは。


「おおーい、モナカちゃん。この細い木を引っ張ってくれないか?」


 木こりのおじさんが私に助けを呼ぶ。まかせろ!


「はーい! 念力! ぐいぐいっとひっぱ、ひっぱ、重い」

「うーん、さすがのモナカちゃんでもこれを引っ張って村まで持って行くのは無理か。間伐材だしある程度裁断して持って行くことにしよう」

「いえ、できます、できます、できますううううううう!!」


 体に、魔力に、力を思い切り込める。

 すると私の白い毛が金色に光り始める。なんぞ? まぁ今はいい、木を引っ張ることに集中するんだ!!


「ぬおおおおお!! フルパワー!!」


 白い毛が全て金色に変わると、凄い力がわいてきて、一気に木を森の外まで引っ張ることに成功した。

 ただ、ものすごく精神力を消耗してしまい、動けない。木こりのおじさんに抱っこしてもらって村まで帰った。


「いやあお騒がせしました。なんなんですかねえ、あの金色の力は」

「さあねえ。街で見てもらった方が良いんじゃないかい? 白いきつねのビャッコ族なんて見たことないからね」


 村長の奥さんがそう言う。そう言うならそうしようかな。とりま流されていこう。まだ異世界になれてないし。


 異世界らしくヒトに管理されていない地域ではモンスターもでるということなのでショートソードに革鎧を作ってもらって(オーダーメイドなので時間かかるんだこれ)、この村に来ていた行商人さんと一緒に街へと旅立つ。


 行商人さんは一人で荷物を背負って歩いて活動しているので一通りのことはできる。歩き方のコツ(魔法でやるらしい、ワカラン)や護身用の棒術(私、剣を持っているんですけどね)などを教えてもらいながら一緒に歩いて行った。

 ただ、魔法を武器に流す魔法剣技を教えてもらったのは役立つかも。

 魔法で火を熾すことはもうできるし、火炎斬りとかできそう。

 送風もできるから、強烈なぎ払いもできそうだ。

 うん、生活で使っていた大体の魔法を応用できるかな。


 行商人さんに一日は二四時間で一週間は一〇日。一ヶ月は三〇日、一年は三六〇日ということを教えてもらいなどしつつ街へと歩みを進める。

 行商人さんはリス族で寿命が少ないらしいけど、それでも九〇年は普通に生きるそう。クマ族なんかは三〇〇年四〇〇年普通に生きるんだって。このせかいじゅみょーなっげー!


 私、何歳にしておこう。

 えっと、お酒飲めるのは決まって二四からだそうなんで二四歳でいっか。

 死ぬ前の私高校生だった気がするけどね。もう昔の話。


「我が名は最中! 白狐族! 魔法属性は白! 齢二四なり! 小さき体に秘めたる力! さあ、世界よかかってくるが良い!」


 と、叫んだら。


 巨大ゴキブリが草むらから出てきました。


 逃げました。


 行商人さんが叩き潰してました。


 こんな世界嫌だー元の世界に戻るー。えーんえーん。



 とまあそんな泣き言を言っても戻れるわけでもなく。

 行商人さんにあの程度で逃げるなと怒られながら街へと歩いて行きました。いやだってGだぜG。無理っしょ。


 そして到着しました街! 名前は『グランデール・ヒゲソリ男爵領アイザック町』だそうで。そうか、名称だから街は町になるのか。


 特に通行料とかは取っていないので普通に街へ入る。

 街の目の前には綺麗に並んだ商店街! レンガ造りの道路! そして色とりどりの街路樹! ぶんめいさいこーぶんめいさいこーばんざーい!

 道の中央に街路樹がたっていて道を分断整備しており、、右側通行で馬車が通っている。馬車は線路が引かれた馬車鉄道で、重たいものや人員をどんどん運んでおるよ。

 横を見渡すともくもくと煙を上げながらキンコンカンコンと金属を叩く音が聞こえる。鍛冶だね。


 一通り眺めた後は商人ギルドへ。

 一応、行商人さんの護衛としてここまで来たというかたちなのだ。だから依頼料が貰える。五〇ユロル。多分相場に全く見合ってない。餞別だね。


「ギルドのわんこおねーさん、ここからどうしていけば良いですかねえ?」


 受付のわんわんおねーさんに問いかけてみる。綺麗な犬耳を持った麗しい女性である。


「とりあえずアルバイトしながら体鍛えてみたらどうかしら。何か特色を持って生まれてきたわけじゃあないのよね」

「んまぁ、そうですね」

「でしょう、色無しじゃあ現状じゃやれることが殆どないわ。それにその白いしっぽとおみみ。どちらもふっわふわでとっても大きい。色がないといっても白色でどんな色にでも慣れる。そんなの珍しいから、捕まえられて見世物小屋行きになるかもしれないわよ。自衛くらいはする必要、あるわ」


 ヒィ。体鍛えます。


 ということで商人ギルドに紹介してもらったのが道場『無限流』というところ。

 いわゆる古武術の道場で、何に特化して教えるということはないみたい。その代わり総合的に何でも教えてくれる。私にぴったりじゃん。ひゃっほい。


「ごめんくださーい、入門希望なんですがー」


 そう言って道場内部へ声をかけると、中から一人の老人が出てきた。ワオ、普通のきつね亜人だ。


「ほほう、この時代に無限流を知りたい者が出てくるとは」


 おじいさんはじろーっと私を上から下まで見てる。いやんえっち。


「あれ、あまり流行ってない? そういえば建物もぼろっちぃですね」

「古武術なんてそんなものじゃ。さてと、本当に入門してくれるのかの?」

「ええ、ここなら住み込みすれば無料で指南してくれると聞いたので。他はお金払うっぽいんですよね。無理無理」


 ご老人は目を光らせると。


「そうか、では今から師範と弟子じゃ。我が名はカイズカ! 弟子よ、早速この道場を磨き直すのじゃ!」

「ええ、今からですか!? もう夜ですよ!」

「夜目を鍛える絶好の機会! さあ、やれ! ちなみに名はなんじゃ!」

「最中ですぅ! ぞうきんどこー!」


 はたしてここで上手くやれるのだろうか……。しんぱいきーつね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る