第4話 サイレン

関ぴょんがバイクで流しに行った後、マサミとちえは外に出て語り合っていた。

「マサミは好きな人いないの?」

「今は特に・・・」

「作ればいいジャン。」

「そう簡単にできるもんじゃないよ。」

「まぁマサミはダンナにいいけど彼氏だとつまんないかもね。」

「それ、結構うれしい。」

「いやいや、怒るとこ。」

「だって恋愛の最終的な着地は結婚だろ?だったらいいダンナでいいじゃん。」

「楽しく過ごしたいだけの時ってない?まだ結婚なんてピンとこないから重いよ。」

「えっ、俺普段つまんない?」

「うん。つまんない。ってゆーか楽しいんだけど異性を意識するとマサミ緊張するでしょ?」

「さっきの下ネタとか。童貞ってすぐわかる。」

「それ言うなよ」

「で?彼氏とはどうなん?」

「・・・いまいち、やっぱ奥さんいるし、子供いるし、会いたい時に会えない。」

「はっきり言うけどそいつ真剣じゃねぇよ。35歳だっけ?。」

「わかってる。」

・・・

重い空気になり無言になった。

遠くでパイパスを走る車の音が響く。

パトカーのサイレンも鳴っている。

「何かあったのかな?」

「警察も忙しいね。」

隙間を埋めるように言った。

また話し出す。

「そんなに好きなんか?」

「うん。忘れようにも忘れられない。」

「でもいつも泣いてるじゃん?見てらんねぇーよ。」

「おっ心配してくれてんの?」

「そりゃそーだろ。仲間だし。」

「だからマサミ好き。」

「からかうな。」

「そーゆー意味じゃない。」

2人は笑った。

「しかし関はどこ行ったんかな?」

「まさか帰ったりしてねーよな。」

「マサミの事忘れて帰ったかも。」

ちえが笑う。

「どうしよ。」

そんな会話をしてしばらく経つと暗闇から人の気配がした。

「なんだ?」

「怖い」

ちえがくっついてきた。

マサミはドキッとした。

目を凝らすとバイクを押してくる関ぴょんだった。

「どしたん?バイク壊れた?」

「はぁ、はぁ、ヤベかった。パトカーに追いかけられた。」

「えっ?マジ?捕まった?」

「いや、振り切った。事故るかと思った。白バイだったら終わってた。」

「なんで?」


関ぴょんの話だとこうだ。

ちえの家での出来事に悶々とし、それを振り払うかの様に走っていた。ノーヘルで走る。気持ちいい。

信号待ちで止まると後ろに車がピタリとついた。

『なんだコイツ。』

バックミラーで目を凝らす。

信号機の光の反射で見えた車は白黒だった。

・・・

ヤベっ!!

反射的にエンジンをふかし急発進する。

警察だ!!

その瞬間だった。パトカーはけたたましいサイレンと共に追跡してきた。

「前のバイク止まりなさい!左によって止まりなさい!」

『誰が止まるか!』

夜の住宅街を右に左に走る。

『小道!小道!小道!』

あった!小道!

すかさず入り込んだ。

パトカーが追跡するには狭い道だった。夜のせいもある。

関ぴょんは住宅の外壁にぶつかりそうになりながら一気に駆け抜けた。

パトカーのライトは光っているが迫っては来ない。

右に行くか?左に行くか?

多分警察の方が道を知っている。

回り込まれたら厄介だ。

住宅街をあみだくじの様に抜けていった。

しばらく走って追ってくる気配はなかった。

運よく逃げ切った。


ちえとマサミが聞いたサイレンは関ぴょんのものだった。


翌日、関ぴょんはカズヨシに嬉しそうに話した。

「昨日、パトカー振り切ったぜ。」

「ちえの透け乳も見たぜ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る