『三体』――『The Three-Body Problem』
ジャンル:
おすすめ度:中国語初心者 ★☆☆☆☆
中国語上級者 ★★★★★★★
刘慈欣氏の小説が原作の3Dアニメ。
全18話、現在第13話(2023/03/11)更新済み。
驚異的な技術力を持つ侵略者「三体人」に対抗するため、選ばれし人々がそれぞれの知能で奮闘する物語。
主に小説版の二巻からの内容が描かれ、本編は三体·持剑編、三体·破壁編、三体·面壁編にわかれている。
最初にあらすじをご紹介。
人類に絶望した天体物理学者・
新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り出す。
太陽系到達は四百数十年後。
人類よりはるかに進んだ技術力を持つ三体艦隊との対決という未曾有の危機に直面した人類は、国連惑星防衛理事会(PDC)を設立し、防衛計画の柱となる宇宙軍を創設する。
だが、人類のあらゆる活動は三体文明から送り込まれた極微スーパーコンピュータ・
このままでは三体艦隊との“終末決戦”に敗北することは必定。
絶望的な状況を打開するため、前代未聞の「
人類の命運は、四人の面壁者に託される。
そして、葉文潔から“宇宙社会学の公理”を託された
(『三体Ⅱ 黒暗森林(上)』Amazon商品ページより)
本エッセイ初の3Dアニメ紹介。
中国では現在、2Dアニメを遥かに凌駕する勢いで3Dアニメが急成長している。
本作は中国のアニメ技術の成長度がよくわかる秀作。
ここで個人的な推しポイントをご紹介。
推しポイント①:中国最大級のアニメ化プロジェクト! 中国アニメ業界の本気を見よ!!
本作はbilibili最大級のアニメ化プロジェクトとして、アニメ化が発表されたときから話題になっている。
アニメ制作に携わったbilibiliアニメの副社長も「bilibiliアニメの現時点で最大のプロジェクトだ」と。
制作開始から五年、やっと放送に至った本作は、最初の二話を公開してからわずか十時間も経たないうちに、視聴回数が一億回を突破するという驚異的な数字を叩き出している。
五年の歳月をかけて作られたという作品のクオリティも納得の高さ。
3D作品を制作する上で最も難所と言われる、なめらかな動き、細部のクオリティなどすべてクリアしている。
ただし、まだ中国語版しか公開されていない。
原作小説が海外でもたくさんファンのいる作品なので、じきに英語版や日本語版も出るだろうと予測できる。
推しポイント②:原作は世界的大ヒット作! 中国SFの魅力をぐっと煮詰めた一作!
本作の原作小説「地球往事」三部作は中国で初めてヒューゴー賞を受賞した作品で、世界でベストセラーとなっている。
原作小説『三体』『三体Ⅱ 黒暗森林』上下巻『三体Ⅲ 死神永生』上下巻『三体0 球状閃電』日本語版ももちろん発売中。
異星人からの侵略というSF作品のなかでもありふれた設定でありながら、予想もつかないような展開が数多く繰り広げられる。
史実を絡めた説得力のあるストーリーに、最新のテクノロジーや量子コンピュータなどを背景にした新たな文明との邂逅。
中国SFは作家の数だけ独自の世界観があると言われるほど多種多様で、一見の価値あり。
本作はアニメ化によって普段小説を読まない方でも気軽に楽しめるように改変されている。
そのなかでミステリーや活劇的要素にも力を入れられているため、SF好き以外にもおすすめしたい作品。
推しポイント③:人類のこれまでの課題、これからの行く末。異星人という共通の敵に直面したとき、我々はどう行動する?
本作はストーリーを通して、三体星人からの侵略に世界各国が力を合わせて立ち向かうようすが描かれている。
実際に原作小説を読んだ世界各国の科学者、著名人も実際にありうる世界終焉シナリオだと。
しかし現実には今、世界各国でたくさんの国を巻き込んだ紛争が後を絶えない。
そんななか、突然迫り来る侵略者という共通の敵を前に、我々はどう行動すべきだろうか?
本作を見れば、そんな世界に対する視点ががらりと変わるだろう。
中国の方の友人の話によると、原作小説も「読めば世界が変わる傑作」らしい。
今を生きる我々だからこそ、一度このスケールの大きな『三体』ワールドに触れておくべき。
ここでほんの少しだけ小ネタをご紹介。
固有名詞がとても多く、理解しづらい内容のため、中国語初心者は事前に小説を読むなどして予習しておくことを強くおすすめする。
特に英語と中国語の混ざった複雑な固有名詞は、ある程度把握しておきたい。
アニメとほとんど同じタイミングでドラマも公開された。
ちなみにそちらの主演は张鲁一、于和伟、陈瑾、王子文、林永健、李小冉。
ドラマ版はアニメとは違って一巻からの内容が丁寧に描かれており、制作スタッフは「宇宙の終焉まで描ききる」と断言している。
さらに2023年にNetflixのドラマ『三体』、2025年に実写映画の『三体』がリリースされる予定。
『三体』シリーズのこれからの成長に大きく期待。
世界を魅了した空前絶後の中国SF、ぜひおすすめしたい作品です!
(記:2023/03/19)
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