中国アニメをつまみ食い！ in 2022~2023

『百妖谱』――『Fairies Albums』

　ジャンル：玄幻（ファンタジー）、治愈（日常）、古风（古風）

　おすすめ度：中国語初心者 ★★★★☆

　　　　　　　中国語上級者 ★★★★★★★

　裟椤双树氏の小説が原作の作品。

　第一期全12話（2020/07/04）完結済み。第二期全12話（2021/09/26）完結済み。第三期全12話（2022/10/03）完結済み。

　古代中国を舞台に、『山海経』の妖怪変化たちの病気を治療し旅をする少女の物語。

　最初にあらすじをご紹介。

　桃都の霊医である桃夭（トウヨウ）は、人は診ず人ならざる妖怪だけを診る。

　彼女は若い僧侶の磨牙（マガ）を連れ、各地を巡る旅に出て、その道中で様々な妖怪変化の病気を治療していた。

　ある日、死にかけた灰色の妖狐に出会い、妖狐自身の体の一部を薬の材料として差し出すことを条件に妖狐を助けた。

　命を助けられた妖狐は桃夭（トウヨウ）と磨牙（マガ）の相棒となり、一緒に旅についてくることになる。

　ふたりと一匹は、近所に住む蛇妖の柳（リュウ）公子（コウシ）とともに、妖怪変化が跋扈する人間の世界で妖怪の病気を癒やしたり、その妖怪の周囲の人間を助けたりしながら能力を存分に発揮する。

　しかし彼らは今までに経験したことがないような大きな試練が待ち受けていることを、まだ知らない。

　妖怪と人間のお話！！

　近年の中国アニメではよくある系統の作品だけど、この作品は両者の関係性に重きをおいた秀作。

　血なまぐさい戦闘はなく、ただ泣ける。心を動かされる。

　ここで個人的な推しポイントをご紹介。

　推しポイント①：山海経の妖怪たちがたくさん！　彼らは人間と共存できるのか？

　このアニメは人間と人ならざる者たちの在り方に焦点を当てた作品。

　彼らは友情、恋愛、家族愛など……その他にも名前のつけられないような強い絆で結ばれている。

　そしてアニメに出てくる人ならざる者はすべて『山海経』に出てくる妖怪変化。

　知らない方のために言っておくと、『山海経』とは古代中国の地理書。

　しかし一般的な地理書とは違って、妖怪変化や神仙の国が記されているなどファンタジックな要素にあふれている。

　『山海経』は『聊斎志異』などとは違って妖怪の名前と姿形が記されているだけで、詳しいストーリーは載っていない。

　そのせいで一から物語を組み立てなければいけないのにもかかわらず、個々の妖怪たちのストーリーの完成度がものすごく高い。

　妖怪好きにはぜひ見てほしい作品。

　『山海経』のことはあまり知らなかったので勉強にもなりました。

　推しポイント②：どこまでも美しい、古代中国の幻想世界

　本作で売りにしているのは、不気味さと美しさに満ちあふれた古代中国の世界を幻想的に描き出していること。

　先人たちが作り上げた神話という幻想世界を、流行りのアニメという形でうまく再現している。

　まあ何が言いたいかというと、作画が神です。

　種々様々な妖怪たちに囲まれて生活する人間たちにもリアリティがあり、本当にその時代にそんな人々が生きていたと思わされるくらい。

　推しポイント③：忘れてない？　主要人物の関係性！

　このアニメ、基本的に二話完結の短編集なので、メインのキャラクターたちに焦点が当てられないまま一話が終わってしまうこともしばしば。

　けれども忘れてはいけない。

　メインキャラクターたちによるギャグシーンも、始終シリアスな本編にうまく挟みこまれている。

　個人的には桃夭（トウヨウ）と蛇妖の柳（リュウ）公子（コウシ）のコンビがおもしろい。

　僧侶の磨牙（マガ）を食べたい柳（リュウ）公子（コウシ）が桃夭（トウヨウ）と「桃夭（トウヨウ）のために百のことをすれば、磨牙（マガ）を食べてもいい」という約束をしてしまうって……

　提案する方も提案する方だけど、受け入れる方もどうなんだ……

　ここでちょっとだけ小ネタをご紹介。

　日本語字幕版がホームドラマチャンネルで独占配信されている。

　……はずだけど、見たところAmazon Primeでも字幕版が配信されている……？

　ちなみにどちらも第一期のみ。

　※追記：アマプラは一話のみ無料で見れるようです。

　どこまでも美しい作風に心動かされる神怪ファンタジー、ぜひおすすめしたい一作です！

　（記：2023/03/05）