『龙族』――『龍族 -The Blazing Dawn-』


 ジャンル:魔幻ファンタジー科幻SF搞笑コメディ热血アクション

 おすすめ度:中国語初心者 ★★☆☆☆

       中国語上級者 ★★★★★★★★


 日本語に直すと『龍族りゅうぞく』。江南氏の小説が原作の作品。

 第一期全16話(2022/11/25)完結済。第二期制作決定。

 龍と人が天下の覇権を争う世界線で、近未来を舞台に主人公が成長していく物語。



 第一期のざっくりとしたあらすじをご紹介。


 主人公の明非メイヒは受験を控える普通の高校生だったが、ある日とあるエリート大学に生き別れの両親からの手紙が届き、彼の人生はすべて変わってしまった。

 手紙に同封されていたのは、なんと彼をその大学――卡塞尔カッセル学院に入学させてほしいという推薦状。

 明非メイヒの両親はかつて卡塞尔カッセル学院の優秀な生徒であり、とある研究機関に携わっていると彼は初めて知る。

 今まで消息を絶っていた両親からの突然の連絡に驚き、はじめは入学を躊躇していた明非メイヒだが、紆余曲折あってようやく卡塞尔カッセル学院への入学を決意する。


 CC1000番列車に乗って卡塞尔カッセル学院があるアメリカのシカゴへ向かう途中で、彼を学院から迎えに来た教授はこの世界にまつわるとある「真実」を明非メイヒに教える。

 なんとそれは、この世界はかつて「龍族」が支配していて、人間と龍族は覇権をかけて長い間ずっと血で血を洗う戦争を続けていたということ。

 そしてその戦争は今もなお終結していないということだった。


 そこでさらに明非メイヒは自分自身が龍族と人間の「混血種」であり、そのなかでも最高位の「S級」である(なお現時点で、卡塞尔カッセル学院に所属する人物中でS級は学長のみ)と知らされる。

 古の時代に龍族と人間が交わって生まれた混血種は、その身に宿す龍族の血の濃度によりS級からD級までランク分けされ、それぞれに龍族の殲滅という使命を与えられる。

 この卡塞尔カッセル学院は表向きは古代爬虫類学に特化した大学だが、本当はそんな龍族に対抗する「兵器」を育成する大学であったのだ。


 卡塞尔カッセル学院に入学できる学生は基本的には混血種のみであり、学生は授業を受けながら龍族絡みの任務に従事することになる。

 しかし混血種とは言えど、人の身で強大な龍族に立ち向かうには時に苦渋の選択を強いられるときもある。

 学院の人物は増えるばかりの犠牲者の数に、龍族との力の差を見せつけられる。


 一方で明非メイヒは学院生活を楽しみながら、等級試験、言灵げんれい試練、龍族の遺跡探索など、様々な困難に立ち向かうことになる――。



 第零日でも触れたように、作者はあまり魔幻作品を見ない。

 けれども『龙族』を見ようと思ったのは、ふと目についた「現在アメリカでブームを巻き起こしている中国アニメ特集」に載っていたから。

 案の定一度見始めてしまえば止まらず、気づけば最新話(※当時13話)まで夢中で見ていた。

 そして気づけば二周目に。なんとも中毒性のあるアニメだ。



 ここで個人的な推しポイントを三つご紹介。


 推しポイント①:壮大な世界観で展開される緻密なストーリー!


 このアニメを語る上で外せないのが世界観。

 龍族は尼德霍格ニーズヘッグ伊邪那美イザナミ耶梦加得ヨルムンガンド芬里厄フェンリルというような既視感のある名前がつけられている。

 どうやら世界中の様々な神話がこの作品の基礎となっているらしい。


 龍など他の異種族が人間と戦争をしている、というものは他にも何作品か見てきたが、『龙族』はそのファンタジー要素に近未来のSF要素も交えているところに魅力を感じた。

 特に見ものの戦闘シーンで、混血種たちは言灵げんれいという龍族固有の異能力と重火器やドローンやAIなどの最先端技術を駆使して強大な龍族に挑む。


 そしてその技術力をもってしても龍族の打破には到底及ばない。

 龍族、どんだけ強いんだよ。

 

 主に人間側の視点で話が進んでいくが、ときには龍族の悲惨な過去も見せつけられる。

 よって敵も憎めないので、原作者と制作会社を憎むことにしよう(?)


 中国アニメあるあるで伏線がとにかく多く、ちょっとした会話やモブだと思っていた人物にも油断ならない。

 後にストーリーを進める上で重要な鍵として降臨することもあるから……(意味深)


 推しポイント②:登場人物の多様性! ダイバーシティ!!


 本作は世界をまたがる壮大なファンタジーシリーズだからか、キャラそれぞれの個性が強い。

 もちろんいい意味で。必ずひとりは推しキャラができるはず。


 まず主人公の明非メイヒは主人公なのに、一番謎が多いキャラクター。

 ゲーム好きで性格にユーモアがあり、他の登場人物との掛け合いもおもしろい。

 怖がりだけど仲間に危機が訪れれば、自分の命すら捨てる覚悟がある正義感のある人物でもある。

 そしてたびたび彼の夢の中や幻覚の中に出てきて知恵や言灵を授けてくれる人物、鸣泽メイタクとはいったい何者なのか……。


 本作のヒロインは赤髪の中華系アメリカ人、诺诺ノノ

 本名は陈墨瞳チンボクドウ诺诺ノノは小名(幼い頃に本名とは別でつけられる名前。大人になっても親しい人からは小名で呼ばれることがある)。

 明るくて常に堂々としている学院のA級学生だが、心の底では常に不安を抱えているらしい。

 明非メイヒからは「师姐」と呼ばれている。


 主人公のルームメイトは卡塞尔カッセル学院一の落ちこぼれ、芬格尔フィンゲル

 留年した回数は数知れない。入学当初はA級だったが、今や最低位のD級を超えてF級に。

 けれども頭の回転自体はかなり良く、計算とプログラミングが得意だったりする。

 その能力を生かして何度か学院のシステムをハッキングし、データを盗み出して明非メイヒを助けたこともある。


 明非メイヒとよくチームを組むのは、学生会会長かつ体育会系貴族の恺撒シーザー加图索ガットゥーゾ

 A級学生の金髪翠眼イケメンで、诺诺ノノの婚約者。诺诺ノノのことが大好きだが、本人からは本気にされていないみたい。

 その大雑把な性格のせいか課題や論文を適当に済ませる癖があり、成績は悪め(頭自体は悪くない模様)。

 しかしイタリアの由緒ある龍殺し貴族家、加图索ガットゥーゾの血筋と実技の成績だけで学院二位までのし上がった。


 最後に紹介するのは獅子会会長かつ卡塞尔カッセル学院のスパダリ枠、子航シハン

 学院のA級学生で師匠が日本人だったらしく中国人だが刀使い。恺撒シーザーのライバル。

 文武両道な学院一位で、顔もいいので学院内の女子から絶大な人気を得ている。

 けれども表情に乏しいので路明非からはロボットのような人だと形容されている。

 この人物はまだアニメでの登場回数が少ないので未知数。ただ、非常に強力な言灵げんれい「No.89 君焰クンエン」を使うことができる。


 この他にも紹介しきれないほどたくさん魅力的な人物がいる。

 またいろいろな国籍の人がいるので、外国人にも馴染みやすい。


 推しポイント③:なにこれ豪華すぎる!! 制作に携わった日本の作曲家!


 主題曲は日本人の作曲家、澤野弘之さんが作っているらしい。

 他にもBGMに山本康太さん、主題歌の歌唱担当はSennaRinさん。

 作者は知らなかった(おいっ)けど、どうやらめちゃくちゃ有名な日本のアニメの作曲家みたい。

 もしかして『龙族』は日本進出を見据えているのかもしれない。しらんけど。


 ↓制作に携わってくださった日本の作曲家さんのインタビュー動画もあります。

https://www.bilibili.com/video/BV1sT411c7y1/?spm_id_from=333.999.0.0&vd_source=794ab113ca630cfad9669806ff351c5a



 最後にちょっぴり小ネタをご紹介。


 固有名詞や難しい単語が頻繁に飛び交うので中国語初心者におすすめはできない。

 ゲーム化もされてるようで、そちらは『コード:ドラゴンブラッド』という名前で日本上陸してるらしい。



 現代中国を代表する魔幻アニメ、ぜひおすすめしたい一作です。



 (記:2022/11/27)


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