第42話 きゃんぷツーリング

午前8時。

地元を出発した俺たちは、1時間ほど進みコンビニでバイクのチェックをする事になった。

すると、冬華さんから

「出発前にも確認整備してたのにまたやってんの?」

んー、俺は普通だと思ってたんだけどちがうのかな?なんて思っていたらクミが答えてくれた。


「冬華さん、うちの店のツーリングでは儀式みたいなものなんですよ。今日は片道40kmくらいですが、バイクの異変は走り出した一時間後くらいが一番出やすいというのでこうしてるんです。だから冬華さんのバイクも後で私が見ますね。」


「そうなのね、ありがとう。私は、そんな事考えたこともなかったわ。お礼に飲み物でも買ってくるわね。」


「俺は、これが普通だと思ってた。」

「「俺も。」」

仁と怜雄も俺に賛同してくれた。


「いや、わりと普通だと思うわ。あんまりショップと縁のない人なのかもしれないわね。」


「そんなもんか?とにかく俺は後ろに萌香を乗せてるからな安全第一で行くぜ!しかし、冬華さんの運転が意外と安全運転で驚いたよ。」

そこに飲み物を買った冬華さんが戻ってきた


「あら、私も大事な義妹を乗せてるのだから安全運転でいくわよ。はい、クミちゃんどうぞ。」

そう言って久美にミルクティーを渡した。

「ありがとうございます。あったかいミルクティーは嬉しいです。」


「春とはいえ、朝から走ってるからね。体を温めてね。点検もありがとう。」


そう伝えて、義妹の元へ去って行った。

男前だ。


「冬華さん、かっこいいわ。惚れそう…。」

久美の言葉に仁が慌てている。


「にしても、よく整備されてるわ。個人でこんなに出来のがすごいわ。お金がかかりそうな部品もあるのに。素直に尊敬しちゃう。」


健吾さんがやってきて会話に加わった。

「それはな、彼女の父親が乗っていたバイクだよ。ショップにも定期的に整備してたし、本人も整備士の資格持ちだからな。ただ彼女がレディースの時に壊されかけたと嘆いていたよ。」

だからか。


この後、簡単なミーティングを済ませまた出発となった。


@ @ @


走り出して少ししてから、萌香がインカム越しに話しかけてきた。

「こうしていると、私すっごく幸せなんです。

今、この瞬間は二人だけの空間って感じがするから。」


俺もそう思うよ。

「いろんなことがあったけど、萌香が彼女になってくれて本当に良かったと思う。だから俺も萌香と二人きりのこの空間が好きだな。」


「唯一の不満は、萌くんのお顔が見えないことですね。やっぱり、お顔を見ながらお話ししたいです。」


そんなことを言われたら照れてしまう。

この後たわいのない話をしながら次の休憩ポイントまで走った。


* * *


お昼ごろ、あれから小休憩をはさみながら最初の目的地である道の駅に到着する。


道の駅に併設しているレストランで食事をとることになっている。


時間のわりに空いていたのですぐに席に着くことができた。


郷土料理の太巻きすしのついてくるセットを俺と萌香は頼んだ。

うちの婆ちゃんもよく作ってくれた(擦れたガキではあったと思うが、婆ちゃんの料理は今でも大好きだしな)のを覚えている。

意外なことに萌香は、初めて食べるらしい。

スーパーとかでも売ってるよと教えたが、あれとは別物だと言っていた。


見本の写真でもあったが、太巻きの中の柄がアートのようだった。

面白いものでは卵で作られた超有名ポ〇モンもいた。黄色のネズミの奴。ほかにも大人も子供も感心してしまうようなものばかりであった。


ちなみに今日の柄は干瓢ときゅうりの松の絵と黄色のネズミです。


二人で盛りあがりながら食べていると、周りからクレームが入る。


「二人で盛り上がり過ぎなんですけどぉ…。」

と、梨花ちゃんが静かに言い…


「こっちにも混ざれよ。こん畜生が!」

と、何が畜生名の分からないが相変わらずの様子で騒ぐ怜雄…。


向かいの席に座る聡汰と真弓が苦笑いを浮かべていた。


何というか意外だ。健吾さんと冬華さんが許すとは…。


そう言えばと、健吾さんたちを探すと校長先生たちと座敷席に座っていた。


芹沢先輩とか仁たちもそこにいた。


意外な組み合わせではあるが笑い声が聞こえてきて楽しそうだ。


隣の席の4人が会話に加わる。


「聡汰、珍しく健吾さんがセットじゃないのな?やっぱり真弓とのタンデムを見せつけた効果か?ww」

俺が聡汰を揶揄うと

「それもあると思いたいが、俺たちは怜雄の見張りを冬華さんに頼まれたんだよ。冬華さんは他校の生徒だから今のうちに先生と打ち解けておきたいんだって、意外と真面目なんだよな。」

聡汰が笑いながら説明してくれた。


「俺ってそんなに信用ない感じかなぁ?流石に凹んできたよ」

怜雄が下唇を突き出して言っていた。


そんな怜雄に梨花ちゃんが顔を赤くしながら

「れ、怜雄君、大丈夫だよ。私はね、怜雄君のいいところもいっぱい知ってるから。だから頑張りましょう。義姉さんが認めてくれれば、ね?」


「え?マジ?!そんな感じなの?俺、頑張りますっ!!」

梨花ちゃんの言葉にわかりやすく復活する怜雄…わかりやすい奴。


それを見てにこにこしている梨花ちゃん。


意外と二人はお似合いのカップルなのかもしれない。





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