第35話 キャンプの準備 怜雄の恋
ゴールデンウイークの真ん中、今日も登校日。
昨日、俺がモカに告白し、交際を始めたことを知った怜雄がなぜか憤慨し、結構な勢いで吹聴して回ったらしい。
さらに、仁と久美のこともついでと言わんばかりに触れ回ったらしい。
さすが、スピーカーの悪魔に乗っ取られているだけのことはある。
(個人情報って何だろう)
そんなこんなで、あっという間に学年中に広まってしまった。
当然、登校すればこっちを見てくるやつもいる。
萌香はものすごい美人だし、俺とではつり合いが取れないとでも思われているのだろう。悲しいが事実は受け止めないとな。
しかし、今日は萌香と登校しなくてよかった…してたらヤバかったかも。
教室に入り、席に着くと直ぐに仁がやってくる。
そこには久美と萌香の姿もあった。
萌香の姿を見て、思わずにやけてしまう。
父さん、俺の彼女は今日も今日とてかわいいです。
「おっす、おはよう。」
「おはよう、萌。やっぱり、あいつ喋りまくってやがったな。俺が登校した時にはもう噂されてたよ。」
「おはっ!萌。だから怜雄に教えればあっという間に広がるっていたでしょ?
でも、予想以上に広まっていて怖いくらいなんですけど。」
「おはようございます。萌君。すごいですね。怜雄君って…。」
「だな。少し怖かったよ。仁と久美は、問題ないとして。俺と萌香は萌香が美人過ぎてバランスが取れてないから、怖いくらいだよ。ま、ケンカ売られれば買うけどな。」
仁がジト目で、
「お前それ本気で言ってんのか?」
「ん?ケンカならいつでも買うぜ?」
「バカが、仮にも生徒会副会長がそんなこと言うんじゃない。ていうか、そっちではなく、お前と加賀さんがつり合い取れてないとか本気じゃないよな?」
「え?当たり前だろ。根暗な俺が萌香と付き合ってるなんて…。」
こんどは、久美が口をはさんでくる。
「萌、本気で言ってる?あんた今、女子人気結構なものになってんのよ。髪型変えて眼鏡つけてクールな真面目系イケメン君に見えて、バイクに乗っているとか。しかも、瞳の件が今はプラス株になってるし。」
「そうですよ。萌君。これからのことを考えると不安です。だからできるだけ一緒にいないと危険で危ないんです。ほかの女性に目移りしたらだめですよ。」
「えぇ?俺が?ありえないだろ?周りの男子を見てみなさい。ほら、今も舌打ちしてらっしゃる。」
「あれは、単なる嫉妬だろ…。お前がイメチェンしてすぐに彼女ができたとか思われているんだろ?」
「そんなもんか。」
「だからこれからはお前も告白されたり大変かもな?」
仁が笑っているが、久美がそんな仁の足を踏みつけている。
「仁君もね?気を付けてね?それと、萌香の前でそんなこと言わないの!不安になっちゃうでしょ!」
萌香…。確かに不安そう俺を見ている。
仁は久美に怒られている。
どうせ誰にも見られていないだろと考えながら。
「萌香…、俺には萌香だけだから心配するな。」
言ってそっと抱き寄せる。
「「「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」
「「「「尊い・・・。」」」」
クラスの女子が悲鳴を上げていた。
しまった!もうみんな集まってきてもいい時間じゃん…。
教室で何してんだ俺…。
照れくさくて死にかけていたとき。
怜雄が廊下から教室の中を静かに見ていた。涙を流しながら…。
「もう、俺の知っている生徒会はない…。俺達の友情はどこいったぁぁぁぁ!」
そして、なんかキレながら走り去っていった。
バイクを置きに行くところまではいつも通りだったのにな。
あ、そういえば…あいつだけだ。生徒会で彼女いないの。
キャンプ地獄なんじゃないの?
俺、仁、聡汰、それに、先生も…。
福原先輩も確か彼女いたはずだもんな。
※ ※ ※
昼休みにも女子から俺と萌香への質問攻撃があったがそれも何とかしのぎ、ようやく放課後となった。
今日はバイトが休みの為、空手の稽古に出かける予定であったが、明後日のキャンプのこともあり、帰宅(稽古)前に生徒会室に集合することになっていた。
萌香たちと合流して、生徒会室へ入ると、怜雄(アホ)が会長の席に座り待っていた。その姿は、ゲンドウを彷彿させていた。後ろには誰もたっていないが。
「貴様ら、自分たちが幸せだからって調子に乗るなよ…。俺にだって春が来てもいいじゃないかぁぁぁ!!」
怜雄が吼えながら泣いた。
アホだ、こいつ。救えねぇ。
「怜雄はねぇ。普通にしてたらモテそうなのにそういう残念な行動が結果として表れてるんだと思うよ。顔は悪くないし、背も高い、成績もそこそこいいし、運動神経も悪くない。本来なら女の子が振り向かない理由がないっしょ。」
久美が慰め?の言葉を怜雄にかけていた。
「うん。怜雄君は普通にしていればモテそうですよね。普通にしていれば。」
萌香も同調している。普通を強調しているが何かあるのか?
「怜雄、好きな子はいないのか?」
俺は単刀直入に聞いてみた。
「…いるよ。…いましたよ。何回もコクってフラれてますけどね。」
え?そうなの?普通に知らんかった。
あれ?俺、地雷踏んだか?
「あぁ萌、怜雄が好きな女子というのはな、…」
「マテ。仁!何故に公開処刑しようとしている?こいつは中学が違うから知らんだろ。個人情報の保護はどこ行ったぁ!」
「怜雄。お前は、俺たちのことを喋りまくっただろう?お前に個人情報保護を語る資格はない!」
仁、やっぱり必要以上に噂が広まるのは嫌だったのか、静かに怒ってんな。
「そういうことだ、諦めろ。怜雄…。」
俺も、仁に
「んでな、こいつの好きな子ってのは、1年の子なんだよ。
中学の後輩でさ、まさかこの高校に来るとも思わなかったよ…。
こいつ、中学の頃何回も同じ女子にコクってはフラれてるから。地元の中学では結構有名になっててさ。
こいつも当時は結構モテてたのに、一途なのはいいけどさ。」
ここで聡汰と真弓が、生徒会室に入ってきた。
「おす、何?あぁ、怜雄の話か?あいつもなんでまたギャルに進化したのかね?高校デビューのつもりかな?中学の時、生徒会長だっただろ?」
「お疲れー。あっ!あの子の話?怜雄が諦めきれないのもわかる美少女だけどねぇ。あぁいうのは白ギャルっていうのかしら?
君たち、今でも仲いいわよね?普通は、コクってフラれてってなったら気まずくて一緒にいられなくなりそうだけど。不思議よねぇ?」
「いいじゃねーか。俺が好きなのは今も昔もあいつだけなんだよ。萌と違って幼馴染でも何でもないけどさ。昔っから、あいつといると楽しいんだよ。それにギャルが好きなわけじゃねーよ?中学の時は、もっとおとなしい感じだったし。入学して再会してびっくりしたもの。急にテンション高めで話されたりするし。」
「「ふーん」」
俺と萌香は、適当に返事をした。
「お前たちはもう少し興味を持ってくれよ。」
「いや、それは、たぶんお前の性格に合わせ…」
と言いかけたところで、萌香から食い気味にストップがかかる。
「萌君。それは怜雄君が自分で気が付くべきだと思いますよ。」
「そうか、そうだな。」
他の連中もなんとなく察しているようだし。どんな子なのか気になるな。
この中で気が付いていないのは聡汰くらいか?
「怜雄、今度どんな子なのか教えてくれよな?というか名前は?」
「あっ、名前か。
橘さんか、怜雄が照れもせずに好きという女子どんな人なんだろうか?会うのが少し楽しみである。
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