第5話 俺と先生と生徒会と・・・。
二人を追い出した後、思ったより疲れていた俺はソファーにもたれかかっていた。
「だらしないぞハジメ。少しシャキッとしとけ。もうすぐ久美も来るぞ。」
2人を出口に案内した菅谷が俺に伝える。
「マジすか?なんで久美までくるのよ。もう今日は石井先生でお腹いっぱいですぅ」
「おい、どういう意味だそれは?たまには飯を奢ってやろうと思ったのに。」
「え?俺にたかるのではなく?さっきそんな話しませんでした?」
「ああ、あれは流れだ。それに大事な話もある。そうだな、近々アグスタで集まるか?お前の近況報告も聞いていないしな。」
「2年メンバーですか?その中で近況報告とか俺は、さらし者ですか?」
「あと、会長の由紀もだな。」
「芹沢先輩も・・・ですか?」
「ハジメ、お前のこと心配していたぞ」
石井先生は、菅谷にも労いの言葉をかける。
「仁、ご苦労様。お前が根回ししてくれたから助かったよ。」
「いえ、問題ないですよ。もうあいつらがハジメに絡んでこなければそれでいいです。」
「菅谷、いつもありがとうな。お礼に今度、うまいもの作ってやるよ。弁当は作らんけどな。」
「なんか、ハジメにデレられても怖いものがあるな。」
「うるせー!あ”ぁ”やめだ。柄にないこと言っちまった。」
「悪い。でも、お前の料理は期待できるな!今度ツーリング先でなんか作ってくれよ。パスタとかいいな。」
「おう、そのくらいなら問題ないな。もう少ししたらキャンプシーズンだもんな。暑くなる前にキャンプツーリングも行きたいな。」
この手の話を始めると食いついてくるのが、久美なんだけどまだ来ないな。
とか、考えていたら。ノックの後ドアが開く音がする。
「話は終わったの?決着は着いた?また、変な噂を流すなら今度こそ・・・ぐふふふ」
「なんだ久美も知っていたのか?てゆうか、何をするつもりですか??不安になるんですが・・・・。」
「仁君から聞いていたからね。一応心配したんだからね、感謝してよ!ハジメ。」
この、ツンデレ娘は鴨川久美といって俺らの同級生であり、小さいころからの友人だ。幼馴染というよりは兄弟だな。久美の実家は大きなバイクショップを経営している。久美はバイクの運転・整備の邪魔になるという理由で高校に入って直ぐに長くてきれいだった髪をバッサリ切って、現在はボブカットである。活発なイメージにピッタリであっていて、とても可愛いが、久美の母親が涙目になって驚いていた。祖父の代からの、遊び仲間である鴨川家は今や自分の家族よりも濃く付き合っているかもしれない。そんなわけで、兄弟分である久美とは絶対に恋人関係にはならない自信がある。
久美が好きなのは、菅谷だというのを知っているからというのもあるが。
ちなみに、菅谷も久美のことが好きなのだが、どちらも奥手で・・・もどかしいくらい先に進まない。でも、この二人がくっつくなら俺も安心できる。
ぜひラブコメみたいな恋を続けてほしいと思う所存である。
さて、みなみ高校の生徒会役員は、会長1名、副会長男女各1名の計2名、会計(補佐含む)2名、書記(補佐含む)2名、庶務2名程度で構成される。
生徒会は毎年11月に行われる生徒総会で決まり、任期は基本1年となっている。
(補佐についは欠員がいる場合、中途で採用されることもある。採用には会長からの指名及び生徒会顧問と校長の許可が必要となっている。)
会長は立候補・推薦のいずれかで候補者が選出され、候補者が複数ではない場合は、信任投票が総会の前に行われる。信任投票の結果に問題がなければ、生徒総会の際、所信演説を行い物言い《異議》が付かなければ決議される。複数の候補者がいるときはもちろん選挙になる。
俺たち副会長以下の役員は生徒会長からの指名か、立候補、生徒や校長からの推薦で決められる。会長のように信任投票はなく、生徒総会の際、新生生徒会の紹介が行われ、各自所信表明信演説を行い、その際に
現在の役員構成はこんな感じである。
健吾先輩と真弓は兄弟で、真弓と聡汰は交際している。健吾先輩はお目付け役だ。
生徒会会 長
副会長
会 計 菅谷
補 佐
書 記
補 佐 現在欠員
庶 務
なお、俺達生徒会役員の2年生のほとんどが、其々のやむを得ない??理由により学校にも認可された上で昨年末に中型二輪免許を取得している。もちろん条件付きではあるが。
俺の場合は行方不明の父親を捜すため、海外の災害現場を移動する場合はバイクが一番いいので、趣味と実益を兼ね、身近にいる師匠からトライアルバイクの講習も受けている。
なお、俺のバイクは久美の兄である真司さんから譲ってもらったものだ。ま、これには少しばかり訳があるのだけど、そのことはまた今度にしよう。
久美の場合は、実家の家業の為、実際は真司さんが継ぐのだが自分のショップを持ちたいと考えているらしい。
菅谷は、単純に久美を支えたいというのもあるのだろうが、実家の指示らしい、あいつの家は警備会社をやっているからな。今のところ継ぐ気はないみたいだけど。
福原は、両親が白バイ乗りだから、両親にあこがれて今からトレーニングをしている。かなり厳しいらしい。俺もたまにトレーニングに混ぜてもらっている。
閑話休題。
話を戻そう・・・、
「久美は、やっぱり菅谷から聞いていたのか、関係者に連絡済とは言っていたが、いったいどこにまで教えていたんだ?」
「生徒会役員残り3人(磯辺は除く)と芹沢先輩、バスケ部のキャプテンと顧問、我らが顧問の石井先生と神田先生だな。たぶん石井先生から校長にも連絡が行っているはずだよ。」
「結構知ってるな。やりづらくないか?」
「そんなことないぞ、本来お前が頼っていい人ばかりだ。嘘を吐かれたとき真実を知っている人が多い方がいいのはお前も痛いほどわかっているだろ?お前が今、人を信じきれない理由はなんとなくわかる。今回のことで、傷が広がったかもしれない。でもな、今は俺たちもいるし、外面ばかりじゃなく内面でも評価してくれる信頼できる大人達も傍にいる。だから少しは肩の力を抜いたらどうだ?」
「すまん。わかっているつもりだけどな、なんとなく、まだ不安になるんだよな。」
「謝らなくていい。別に今すぐに変われって話じゃないし、焦らなくていいよ。
ハジメは本当に良いやつだ。俺と本当の意味で五分の友人になってくれた。お前と出会って俺の回りもいろいろ変わったんだ。親の金が目当てのやつとか、外見だけで近寄ってくる奴とか、変な色目を使ってくる奴らもほとんどいなくなったしな。だからこそハジメのことを貶すことは俺が許さない。」
「私だって仁君と同じ気持ちよ。伊藤さんみたいな女子に引っかかって、あの時だって私たちと距離をとっていたからこんなことになったんでしょ?もっと頼りなさいよ・・・バカ!否定されたら悲しいけど私たちだって、姉弟みたいなものでしょ?
姉だから弟のことが心配なのよ!由紀姉だってハジメの事心配してるのよ。もっと胸を張りなさい!」
由紀姉とは生徒会長の芹沢先輩のことだ。
真司さんの恋人だから姉呼びしている。
「菅谷。すまん・・・ありがとう。周りに頼るか・・・。努力してみるよ。」
「ああ、ゆっくりでいいからな、それで離れるような安っぽい関係じゃないんだよ俺らは。」
俺はすごく照れ臭くなり菅谷をからかうために耳元で囁く。
「気持ちはありがたいが、そういう優しい言葉はさ、久美にも言ってやったらどうだ?」
「ぐぬっ俺がせっかく真面目に・・・」
ありがたいが、ほんとうに照れ臭い。
「久美もありがとな、本当になんであんなのに引っかかったんだろうな?でもよ、お前が姉はないだろ?どちらかといえば俺がお兄ちゃんでしょ?」
「うっさいわね!どっから見ても私がお姉ちゃんよ!ムキー!」
「先生、すみません収拾がつきそうにないんで今日は解散でいいすか?」
「そうだなもうこんな時間か、では今日は解散っ!ハジメはまだ用があるから少し残るように。」
「えぇ。俺だけかよ」
「なんか文句あるのか?」
「ないっす」
腕時計を確認すると、まだ外は明るいがもう17時だ。
なんだかなぁと思いながらみんなが外に出るのを待っていると、今度は校長と神田先生がはいってきた。
あれ?俺、何をやらかしたの???
※ このお話はフィクションです。消防関連の事故を題材に取り上げておりますが日本からの災害派遣に於いて消防官(消防士)の死亡例はありません。実在のお店、メーカー、バイク・車も登場しますが一切、実在の物とは一切関係ございません。ご了承ください。
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